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3章

ルビーⅰ

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 ロビンとノアは、美女にともなわれて再びエレベーターに乗り、タワーを降りた。

 屋上で、ロビンとノアがテーブルを前にして、座っていると、配膳はいぜんロボットが、絵具を溶かしたような青色ジュースを運んで来た。そして、ノアの前にぎこちない動きで、ジュースの入ったグラスを置いた。

 ロビンは、ノアに(飲むな!)と目配せしたが遅かった。ノアは、のどをならして美味おいしそうに、いっきに飲み干した。

  ロビンは、配膳ロボットが差し出したジュースに手を触れない事にした。毒々しい青色ジュースは、とても食べ物の色とは思えない。

 「あら、せっかくのジュースなのに。お気に召さないのね」と、美女は立ちあがり「海が見えるの。見てごらん」とロビンを手招きする。

 ロビンは、身を乗り出して下を眺めた。けれど灰色の雲しか見えない。屋上の周りには転落防止てんらくぼうしのフェンスがなく、落ちたらひとたまりもないだろうーー

 はっ!として振り向く。

 美女は、意地悪を楽しむような笑みを浮かべ、ロビンの肩を、ふいにドンと突いた。
 
 ロビンはバランスを失って大きく後ろにのけった。
 屋上のゆかから頭ひとつ、うしろに飛び出した形で、なんとか両足を突っ張った。

 (突き落とされる所だったーー)

 急いでノアの所に戻ってみるが、ノアの姿は見当たらない。変わりに黒い子犬が苦しそうにもがいている。


「兄ちゃん……」
子犬がしゃべった!よく見ると、顔だけがノアだ。顔の周りには、黒い毛が生えて人の皮膚をおおっていく。あれよ、あれよという間に口がつき出し犬の顔になってしまった。ぞくりと震えが体をいた。


「私の飲物を飲んだ者は、おとなしいペットになるのよ。また、一匹増えた。ふふふ」

 美女は、子犬になったノアに首輪をつけてくさりにつないでいる。そこへ、ダルメシアンがしっぽをふりながら、近づいてきた。このダルメシアンも、人間だったに違いない。

「ノアを人間に戻せ!」
 ロビンは、美女につめよった。

「いやだね!やっと復讐ふくしゅう出来たんだ」

「フクシュウ……?一体お前は誰なんだ」

「あたしは、ルビー。ゴールデン国の女王だ」

「お前が、ルビーか!いったいノアが何をしたと言うのだ」

「あんた達の母親、アネモネが、私から王をうばったんだ。そして、子供まで産んだ。そもそもお前達は、生まれて来る資格などない!」

「お前が、母さんを殺したんだな」

「あたしは、殺しちゃいない。
 あいつが、かってに海に沈んだだけさ。
 たく、アネモネは、聖女ぶって。
 あたしは、悪役。損な役回りだよ。
 でもね、負けやしない。
 必ずグリーン国を負かして、ざまぁ見ろと、言ってやる」

 
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