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4章

脱出

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 ロビンは、ベストの内ポケットから、薬を取り出した。ビッガーが子犬をしっかり押さえ、ロビンが前足に薬をなでるように塗っていく。

すると、黒い毛がみるみるうちに抜け、白い肌に変わり始めた。薬を塗った所は、次々とすべすべした肌に変っていく。ロビンは、夢中で薬を塗り続け、四本の足を全部きれいに塗りつぶした。

 すると、子犬は、後ろ足で立ち上がり、ぶるると体を震わせた。
 次の瞬間、子犬はノアに変っていた。

「やったぁ!」ロビンが叫んだ。

ノアは、自分の体と服を確かめる。

「兄ちゃん、僕のしっぽは?」

「ない。すっかり、人間の姿に戻れたんだ」

ビッガーは、ほっと胸をなでおろす。
「もう大丈夫です。魔法は解けました」

 アンジェラが、ウミガメのそばで
「早く帰りましょう。ロビンとノアが一緒に乗れる大きなカメよ」と、ふたりを手招きした。

 けれど、突然「っ!」とお腹を抑えて倒れてしまった。
 白目をむいて痛そうに喉をかきむしる。

「うぅーーー」うめきながら大きく口を開けて、スズメバチを吐き出した。
 
 ハチは高く舞い上がると、すらりとしたルビーの姿に戻った。憎しみを込めた顔で、アンジェラをにらみつける。

「お前みたいな小娘に、負けるものか!」
ルビーの目は、炎のような敵意で真っ赤に燃え盛っていた。

 ビッガーが「くそババア!死ねっ!」と太いこん棒でルビーを殴りつけた。だが、ルビーはびくともしない。笑いながら魔法の杖をクルクル回して、ビッガーに近づいていく。

「アダブラカダブラーーー
    アダブラカダブラーーー」

 呪文を唱えると、杖が空中を飛んでビッガーの頭に当たった。すると、みるみるうちにビッガーは、象に姿を変えた。そして、長い鼻を振り上げながらのんびりと地べたに寝そべってしまった。

 ロビンは、負のエネルギーを集中させ、光りのビームをルビーの目に向けるが、サングラスに反射されてしまう。急所の目をねらえないのだ。ルビーは、魔法の杖をクルクル回しながらロビンに近づいて来た。

「アダブラカダブラーーー
    アダブラカダブラーーー」

 それを見たノアは、そっと後ろからルビーに近づいた。
 憧れのラグビー選手を真似して強烈にタックル!
 低い姿勢でルビーに体ごとぶつかった。

 ルビーは、脚を救われ地面に倒れてしまう。その拍子にサングラスがポロリと落ちた。ロビンはすかさず、それを踏みつけた。

 そして光のビームで攻撃する。
 ルビーは苦しそうに目を閉じてうずくまった。

 ロビン、ノア、アンジェラは急いでウミガメに乗ると、空に舞い上がり、グリーン国へと飛んで行った。
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