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世界で初めて成功した仮想現実型オンラインゲーム【free】。剣と魔法のファンタジーな世界観とその名の通りの高い自由度で一大ブームを巻き起こした。老若男女問わずこのゲームに没頭し、このゲームの話を聞かない日はなかった。しかし、サービス開始から6年を過ぎた頃、度重なる謎のシステムエラーによりサービス終了が発表された。プレイヤーの脳に異常を与えることを懸念しての処置だ。もちろん当初はクレームが殺到し、ニュースになるほどだった。だが、人々の目は新しいものに引かれ興味を無くす。1年もすれば誰もサービス終了に異論を唱えなくなった。
そしてついにサービス終了の日を迎えたが、実際にログインしている者はごくわずかであった。
しかし唯一最後まで全員がログインしているギルドがあった。プレイヤー狩りとして悪評高い【キリングゴッド】のメンバーである。
「いやぁついに終わってしまいますねぇ。」
そう呟いたのはファンタジーの世界に似合わないスーツを着た若い男性、【いちろう】さんだった。
「終わっちまうからみんな集まってんじゃねーか。」
不機嫌そうに返すのはこれまたファンタジーには似合わない学生服…とは言っても昭和のヤンキーが着るようなブカブカのやつを着た青年、【マムシ】さんだ。
「まぁまぁお二人さん、最後くらい仲良くね。」
険悪な雰囲気になる前に仲介する獣人アバターの少女、【フォックス】さん。狐の獣人で帽子と下げているポーチが特徴的だ。
「ふん、くだらんな。最後の最後で仲良しこよしをしろと言いたいのか。」
ぶっきらぼうに言うのは白い軍服に刀を差した女性、【ワルキューレ】さん。
「おいおい、最後まで頑固者かい?ワルキューレさんよ。」
おどけて言うのはシルクハット紳士服の手品師のような男、【マジック】さん。
「相変わらずみんな騒がし…。まぁ最後だしね。」
ローブを着たエルフの少女【ろーど】さんがクスリと笑う。
「おい、最後くらいなんかリーダーっぽい話をしてみろよ【クロム】さん。」
クロムとは俺のプレイヤー名である。マムシさんに話を振られたが、まずいな。なんも考えてなかった。まあ、なるようになるか。
「あー、ごほん。それじゃそれっぽい話を。」
全員がこちらを見る。うわ、懐かしいなこの感じ。ギルド立ち上げを思い出すわ。
「まずは、今日集まってくれた事に感謝する。1人くらい欠けるかとは思ったが全員集合には驚いた。さて、私たちはプレイヤー狩りを行うどうしようもないならず者たちを集め【キリングゴッド】としてギルドを立ち上げてから数々の悪行を行ってきた。殺戮、略奪、場合によっては相手がゲームを起動したく無くなるまでやった。」
懐かしいな、俺たちに喧嘩を売った奴らは徹底的に潰してたな。
「もし、このゲームが現実世界なら私たちは地獄に落ちただろう。しかし、ゲームであろうが現実であろうが私たちの絆は固い。明日からは各々の道を歩いてゆくのだ。」
もう会えないだろうが、俺たちがここで、みんなで楽しんだ時間は消えない。
「キリングゴッドの全員の未来に乾杯。」
…静まり返った。あれ、なんかミスったか?
「…最高だよアンタ。」
マムシさんがガチで泣きながら言った。え、ガチ泣きですやん。
「懐かしいなぁ。」
部屋を見て俺は思わず呟く。
あれから全員各々の部屋で最後を迎えることになった。提案者のフォックスさんいわく「泣いちゃうから。」らしい。
「あの人らしいな。…ん?」
部屋の隅で俺を待つメイド少女のNPCが目に映る。
「ルーデアか。」
相棒NPC「ルーデア」。
このゲームでは、初期設定で自分とこの相棒NPCを作成する。相棒NPCとは1人プレイヤーの人でも楽しめるように作られたその人専用の多機能NPCである。俺はルーデアを短めの青髪にメイド服少女の見た目にしている。これは俺の性癖だ。笑いたければ笑え。ちなみに設定上俺のことが大好きだ。まぁNPCは思考を持たないし関係ないがな。
時計を見ると23:58を示していた。そろそろか。
最後くらいルーデアを抱きしめてたいな。ぐへへ。
「ルーデア。おいで。」
トコトコと駆け寄ってくるルーデアを俺は抱きしめる。
俺のアバターは上の中くらいのイケメン騎士だからまぁ絵面的に大丈夫だろ。
…。なんか長くね?もう2分経ったくね?
うーんまあ、ルーデア暖かいし、いい匂いするし、まだ抱きしめてられるならいいや。
…。いや、まてよ。匂いとか感じられたっけこのゲーム。
「あ、あのうご主人様…?」
ルーデアの声がする。…こんな滑らかに話せたっけ?
「そろそろ離れて頂いても…」
「え、あぁそうだな」
離れて見てみるとルーデアは顔を真っ赤にして俯いている。可愛い…。
…いや、何かがおかしくね?
時計を見る00:04の表記。サービス終了してないのか。いや、それにしても違和感を感じるぞ。
「ルーデア。」
「は、はい…?」
「可愛いな。」
「はうっ!?」
まだ、少し赤かった顔を再び赤らめるルーデア。
…んんん!?ちょっとまておかしくないか?
こんな機能なかった気がするが。
そうだ、他のみんなは?
部屋の外に出てみる。廊下の向こうから走ってくる人影が見えた。
「ぉおおお!おかしくねーかクロムさあぁん!?」
マムシさんが駆け寄ってくる。
良かった、ほかの人もいる。ひとまずほっとした。
「なんでログアウトしねぇんだ!?」
「分かりません。1度全員いるか確認と状況の整理をしたいので広間に呼んで来て貰えますか?」
「わ、わかった。」
マムシさんが走っていく。
状況の整理とは言ったものの俺もよくわかってないが…
「…先程からどうなされたのですか?ご主人様?」
ルーデアが不思議そうな顔でこちらの様子を伺う。
ルーデアを見てるとなんとなく予想はついてくる。
ここが現実であるかもしれないと。
そしてついにサービス終了の日を迎えたが、実際にログインしている者はごくわずかであった。
しかし唯一最後まで全員がログインしているギルドがあった。プレイヤー狩りとして悪評高い【キリングゴッド】のメンバーである。
「いやぁついに終わってしまいますねぇ。」
そう呟いたのはファンタジーの世界に似合わないスーツを着た若い男性、【いちろう】さんだった。
「終わっちまうからみんな集まってんじゃねーか。」
不機嫌そうに返すのはこれまたファンタジーには似合わない学生服…とは言っても昭和のヤンキーが着るようなブカブカのやつを着た青年、【マムシ】さんだ。
「まぁまぁお二人さん、最後くらい仲良くね。」
険悪な雰囲気になる前に仲介する獣人アバターの少女、【フォックス】さん。狐の獣人で帽子と下げているポーチが特徴的だ。
「ふん、くだらんな。最後の最後で仲良しこよしをしろと言いたいのか。」
ぶっきらぼうに言うのは白い軍服に刀を差した女性、【ワルキューレ】さん。
「おいおい、最後まで頑固者かい?ワルキューレさんよ。」
おどけて言うのはシルクハット紳士服の手品師のような男、【マジック】さん。
「相変わらずみんな騒がし…。まぁ最後だしね。」
ローブを着たエルフの少女【ろーど】さんがクスリと笑う。
「おい、最後くらいなんかリーダーっぽい話をしてみろよ【クロム】さん。」
クロムとは俺のプレイヤー名である。マムシさんに話を振られたが、まずいな。なんも考えてなかった。まあ、なるようになるか。
「あー、ごほん。それじゃそれっぽい話を。」
全員がこちらを見る。うわ、懐かしいなこの感じ。ギルド立ち上げを思い出すわ。
「まずは、今日集まってくれた事に感謝する。1人くらい欠けるかとは思ったが全員集合には驚いた。さて、私たちはプレイヤー狩りを行うどうしようもないならず者たちを集め【キリングゴッド】としてギルドを立ち上げてから数々の悪行を行ってきた。殺戮、略奪、場合によっては相手がゲームを起動したく無くなるまでやった。」
懐かしいな、俺たちに喧嘩を売った奴らは徹底的に潰してたな。
「もし、このゲームが現実世界なら私たちは地獄に落ちただろう。しかし、ゲームであろうが現実であろうが私たちの絆は固い。明日からは各々の道を歩いてゆくのだ。」
もう会えないだろうが、俺たちがここで、みんなで楽しんだ時間は消えない。
「キリングゴッドの全員の未来に乾杯。」
…静まり返った。あれ、なんかミスったか?
「…最高だよアンタ。」
マムシさんがガチで泣きながら言った。え、ガチ泣きですやん。
「懐かしいなぁ。」
部屋を見て俺は思わず呟く。
あれから全員各々の部屋で最後を迎えることになった。提案者のフォックスさんいわく「泣いちゃうから。」らしい。
「あの人らしいな。…ん?」
部屋の隅で俺を待つメイド少女のNPCが目に映る。
「ルーデアか。」
相棒NPC「ルーデア」。
このゲームでは、初期設定で自分とこの相棒NPCを作成する。相棒NPCとは1人プレイヤーの人でも楽しめるように作られたその人専用の多機能NPCである。俺はルーデアを短めの青髪にメイド服少女の見た目にしている。これは俺の性癖だ。笑いたければ笑え。ちなみに設定上俺のことが大好きだ。まぁNPCは思考を持たないし関係ないがな。
時計を見ると23:58を示していた。そろそろか。
最後くらいルーデアを抱きしめてたいな。ぐへへ。
「ルーデア。おいで。」
トコトコと駆け寄ってくるルーデアを俺は抱きしめる。
俺のアバターは上の中くらいのイケメン騎士だからまぁ絵面的に大丈夫だろ。
…。なんか長くね?もう2分経ったくね?
うーんまあ、ルーデア暖かいし、いい匂いするし、まだ抱きしめてられるならいいや。
…。いや、まてよ。匂いとか感じられたっけこのゲーム。
「あ、あのうご主人様…?」
ルーデアの声がする。…こんな滑らかに話せたっけ?
「そろそろ離れて頂いても…」
「え、あぁそうだな」
離れて見てみるとルーデアは顔を真っ赤にして俯いている。可愛い…。
…いや、何かがおかしくね?
時計を見る00:04の表記。サービス終了してないのか。いや、それにしても違和感を感じるぞ。
「ルーデア。」
「は、はい…?」
「可愛いな。」
「はうっ!?」
まだ、少し赤かった顔を再び赤らめるルーデア。
…んんん!?ちょっとまておかしくないか?
こんな機能なかった気がするが。
そうだ、他のみんなは?
部屋の外に出てみる。廊下の向こうから走ってくる人影が見えた。
「ぉおおお!おかしくねーかクロムさあぁん!?」
マムシさんが駆け寄ってくる。
良かった、ほかの人もいる。ひとまずほっとした。
「なんでログアウトしねぇんだ!?」
「分かりません。1度全員いるか確認と状況の整理をしたいので広間に呼んで来て貰えますか?」
「わ、わかった。」
マムシさんが走っていく。
状況の整理とは言ったものの俺もよくわかってないが…
「…先程からどうなされたのですか?ご主人様?」
ルーデアが不思議そうな顔でこちらの様子を伺う。
ルーデアを見てるとなんとなく予想はついてくる。
ここが現実であるかもしれないと。
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