社不JDも化け物倒せば友達出来ますか!?

くずは

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ショッピングモール 下

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 ピンポンパンポン

「皆さーん。お客様が1名ご来店されましたよ。早い者勝ちでーす」

 それだけ言うと放送は終了した。カメラに向かって話しかける。驚きの連続でずいぶん無言だったからな。

「なんでしょうね今の放送は。1名は多分私のことですよね。皆さんが誰の事か気になるな。周りに誰もいないんですよ、ほら」

 そう言ってカメラで周囲を映す。にしても早い者勝ちか。まるで俺を取り合っているような言い方だ。
 ちょっと周りを撮ったら帰るか。

 そう考えながら近くの鞄が売っている店に入った。

「こっちは見た事ある商品ばかりですね。少し持ってみましょう」

 ひょいっと持ち上げてみると、小さい手提げ鞄にしては妙に重い事に気づいた。中を覗くと物でいっぱいだ。財布も入っている。

「まるで誰かが使っているかのようです。財布の中身も見てみましょう」

 パカっと開けると免許証やクレジットカードまで入っている。間違いない。これは誰かが使っているやつだ。他の商品を見ても使用感がある。
 誰かから奪ったのか? 

 さっきの放送を思い出す。俺を取り合っているよう。もしその予想が合っていれば次の狙いは……。
 俺は急いでエレベーターまで戻ろうと走り出した。

 さっきまで無人だった廊下に、どっかのアパレルショップから出てきたであろうマネキンが溢れている。彼らは俺を見つけると追ってきた。
 幸いにも速度はあまり速くなくて上手いこと逃げられそうだ。

 しかし、ひとりでに開いたドアにぶつかって思わずうずくまる。
 中はペットショップだったのだろう。何も入ってない水槽が勝手に棚から落ち始める。

 水びだしで走る速度が遅くなったのを見たマネキンどもは、反対側の廊下を使って回り込み始めた。
 やっと“現実とは逆のショッピングモール”の意味を理解した。

 ここでは本来商品である彼らが買い物客で、本来客である俺たちが商品という意味なのだ。しかしもう遅い。こいつらに捕まるくらいなら……ワンチャン下の階までジャンプしてやる。

 廊下の端に寄って、ガラスに手をかける。吹き抜けだからもし狙いを外せば10階分落ちる事になる。身を乗り出すとやはり躊躇してしまう。
 だが迷っている間にも奴らは近づいてきた。スーパーで見た変なキャッチコピーの肉。あれらはそういう意味なのだろう。

 こいつらが人道的なやり方を使いそうにも思えない。よ、よ、よし。い、いく、ぞ。

「クソがぁぁぁぁ!!!!!」

 体が宙に舞う。しかしそれも一瞬のことだった。すぐさま何者かに腕を掴まれる。間に合わなかった。そう気づくと同時に、後頭部に衝撃を受けた俺は意識を失った。



 次に目を覚ますと、台車に乗せられてどこかに連れて行かれる所だった。口にはテープを貼られて、うめく事しか出来ない。
 てっきりこのまま殺されるのかと思ったら、関係者以外立ち入り禁止と書かれたドアの向こうに連れて行かれる。

 どうやら今は倉庫のような場所に閉じ込められているようだ。広くはないので、どこかの店舗の一部かもしれない。
 俺はまだ希望を捨てていなかった。さっき割れた水槽のガラスが服に刺さっていた事に気がついたからだ。上手い事これで俺を縛っている縄を切れば逃げられるかもしれない。

 思ったよりもチャンスはすぐに来た。なんと部屋にいたマネキンが部屋から出ていったのだ。
 思ったよりも縄は柔く、簡単に切る事ができた。そーっと部屋から出て周囲をうかがったが、誰もいないようだな。

 それだけ確認した俺はすぐさま走り出した。出口はわからないが、恐怖でいっぱいでそんな事を気にする余裕もない。
 視界の端に先ほど入ったスーパーがあった。つまりここは3階。確かこのフロアのエレベーターの場所は……近い。

 やっと生還の2文字が見えてくる。少し冷静になった俺は右折する前に壁越しに向こう側を観察して……絶望した。
 エレベーターは見えているが、数体のマネキンだけじゃなくて、どこから出て来たのか巨大な銅像まで見張っている。確か古物商もテナントにあったなと思い出すが、そんな事どうだっていい。

 上階までのエスカレーターからもマネキンが降りてくる。後ろからも謎の足音が迫っていた。
 このままじゃ見つかる。とっさに、すぐそばにあったトイレに駆け込み鍵を閉める。

 逃げる手段は思いつかなかった。ならばせめて。誰かが俺の事をいつか回収してくれるように、この証拠の動画だけでもアップしよう。投稿完了まで5分。
 その間はここに隠れていて、完了次第……最後の運試しといくか。

 何事もなく4分半が経った。この分だと投稿は間に合うだろう。もう一周回って落ち着いてきた所で、上から声がした。

「みぃ~つけた」

 上を見ると、肌から髪まで全てが真っ白な美女が俺を見下ろしていた。昔の着物のような物を着ている。
 パニックになって個室を飛び出す。

「妾を見て逃げるとは。最近の男は奥手だと聞いていたが想像以上じゃ」

 ゆっくり歩いて追ってくる。これなら撒けるな。しかし廊下に飛び出した俺は、冷風を感じると同時に転んでしまった。
 見たら足が凍っている。床もだ。立ちあがろうにも立ち上がれない。

「安心しろ。妾もゆっくり時間をかけるタイプなのでの」

 着物の女が投げキッスのような感じでフッと息を吹くと、氷が俺の左手を地面に縫い付ける。もう俺の命はないだろう。動画投稿まで残り5秒。

 せめてこれだけは。

 俺は3階の廊下から、吹き抜けに向かってスマホを投げた。その瞬間に体が首まで氷づけにされる。
 でも、動画投稿はスマホが落ちるまでに間に合うだろう。一矢報いた達成感と共に、頭まで凍らされた俺は意識を失なった。

 気づくと俺は警備室にいた。いくつかある画面には監視カメラの映像が表示されている。最初から俺がどこにいるのかは筒抜けだったって訳か。俺が逃げたのも計算のうちなのかもな。

 今度は逃がすつもりは無いようで、周りをマネキンと銅像に囲まれていた。それにさっきの女もいる。

「やっと起きたか。すぐ氷を溶かしたのに、いつまでも気を失っているせいで待ちくたびれたわ」

 情けない事に、その女の冷え切った声を聞くだけで俺は恐怖した。

「そうじゃそうじゃ、その顔じゃ。貴様の恐怖心がないと、質の良い生命力は抽出できんからの。死んだかと思って焦ったぞ」

 訳のわからない事を言いながら、その女は顔をぐいっと近づけて、俺に息をフッと吐きかける。
 また凍らされる。先ほど凍らされた手足の痛みを思い出しながら、さらに恐怖心が高まったが、今度は一瞬で雪が溶けた。

「ふふ。もう十分じゃろ。さて、注射の時間じゃ。奴らも良い物を作りよる」

 奴らの意味は分からないが、注射は分かる。その女はぶっとい針を俺の腕に刺した。注射といっても注射器ではなく、針の先にはチューブが付いており、さらにその先には謎の機械が備え付けられていた。

 機械が稼働するが、チューブを見るに血は吸われていないようだ。何かを注入されている様子もない。というかチューブの中は空っぽのように見えた。

 しかし時間が経てば経つほどに疲労感が酷くなり、意識が朦朧としてくる。そんな時、監視カメラ映像に何かが映ったのが見えた。人のように見える。
 俺の視線に気づいた女がそれを見ると途端に焦り出した。

「こんなに早く嗅ぎつけられるとは。まだ元を取れていないが……仕方ない」

 女は慌てて空中に両手を向けて、何かを唱える。だいぶ苦しそうな感じだ。しばらくすると空中に謎の円が浮かび始めた。向こう側は暗くて見えない。

 女が無理やり針を俺の体から引く抜くと、それを抱えて円の中に飛び込んだ。するとなんと女は消えてしまった。すぐに円も消える。
 何が起こっているか理解しないうちに、警備室の扉が開かれた。

「おい! まだ生きてるぞ! こっちだこっち!」

 男が何やら叫んでいる。それから、彼は今度は俺に話しかけてきた。

「あの動画のおかげでやっと入り方が分かったよ。礼を言おう。さぁこれを飲んで」

 そう言いながら何やら白い玉を口に入れてこようとしてくる。彼らは俺を助けてくれたように見える。それなら、飲んでもきっと大丈夫だろう。
 どのみち抵抗する力も無い。緊張が抜けると同時に、先ほどの疲労感のせいか眠くなってきた。こんな状況で眠るわけにもいかないが、まぶたの重さに抗え……な……。



 気がつくと俺は精神病院にいた。医者が言うには、俺はショッピングモールのトイレで錯乱していたそうだ。
 そんな。俺はハッキリと何があったか覚えているぞ。まず俺はエレベーターに乗り込んで……そっから何をした?

 妙な和服の美女に会ったのは覚えている。マネキンが動いていたことも。
 他にも俺が空を飛んで銅像にパンチを喰らわしたり、俺が女の吐いた炎で火だるまになった記憶もある。

 しかし俺の体に火傷痕などは無い。スマホを使っても良いとのことだったので、自分のチャンネルをチェックする。しかしその日に動画は投稿されていなかった。

「で、でもお医者さん。信じてください! 俺は今までこんな事は一度も無い! 幻覚なんか見たことも……」

 医者は俺がそう主張するのを知っていたかのように落ち着いて返事をしてきた。

「えぇ分かっています。これは一時的なものでしょう。1週間は念のため入院してもらいますが、その後は退院していただく予定です」
「ありがとうございます……。あの、ちなみに費用はおいくらほどに?」
「これは特別なケースですからね。国が保険で全額負担してくれるので安心してください。説明は以上です。他にご質問が無いようでしたら、もうすぐ食事の時間ですしゆっくりしていてください」

 そう言うと医者は部屋から出ていった。


 あれから俺は医者の言う通りに何事もなく退院した。会社側は発作のようなものと説明を受けていたようで、仕事にも復帰できた。

 きっとあの記憶は夢のようなものなのだろう。しかし俺はチャンネルは削除し、心霊スポット巡りはもうやめようと心に誓った。
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