19 / 21
鹿
しおりを挟む
「テスト前! 最後の遊び! みんなぁ、覚悟はええかぁ!?」
「レッツゴー!」
明里ちゃんも乃愛も、朝からテンション高いなぁ。長期休暇前のテスト週間が迫るなか、私達はテスト勉強が本格化する前にみんなで遊びに行く事にした。
高橋さんはなんだか眠そう。
「もみじもっとテンションあげてこー!」
「あんたが昨日レポート間に合わないから手伝ってって言うからでしょうが。それも夜に」
「その節はお世話になりました。感謝してもしきれません」
ネコのような鋭い目つきに、明里ちゃんはあっさり屈した。いや屈したっていうか明里ちゃんが悪いんだけど。
とにもかくにも、全員集まった訳だし電車に乗り込む。
大阪を一周する電車から乗り換えて奈良県まで。地図アプリで見ると近く見えるけど、思ったより時間がかかる。
「さっきから思っててんけど、なんで優香ちゃんはずっとニヤニヤしてるん?」
「えぇー、してたぁ?」
そりゃあ私の内心はウキウキでいっぱいですよ。だって友達と、わざわざ休みに1日使って、少し遠くまで観光に行く。
すっごい青春っぽいじゃん!
後は普通に景色を見たり、美味しいご飯を食べるのが趣味っていう理由もある。でもみんなには違う意味で伝わったみたい。
「もしかして山本さんは北奈公園に行くの初めて?」
「え? ああうん、実はそうなんだ。私の地元からだと少し遠いからね」
北和公園。奈良県にある有名な観光地の一つ。どんな所なんだろうなぁ。
話しているうちに駅に到着。こっからは歩きで体を動かすから、やっと目が覚めてくる。昨日もっと早く寝てれば良かったなぁ。
駅からすぐ目の前に商店街があった。通りには美味しそうなご飯屋さんや和菓子屋さんが軒を連ねていて、ついつい入っちゃいそうになる。
「お腹空いちゃうね」
「そうね。でもまだお昼時じゃないし、もう少し我慢しましょ」
そんな事を言っている高橋さんも、ちょいちょい体がフラッと店側に吸い寄せられているのを私は見逃さなかった。
少し歩くと、とある店の前に人だかりが出来ているのが見えてくる。
「「ハイッ! ハイッ! ハイッ!」」
どうも餅つきをしている店があるみたい。夏が近くなってきたこの季節に毎日この仕事をやっていると思うと頭が下がるね。
外国人観光客にも人気みたいで、周りからは多くの外国語も聞こえてきた。
眺めているうちに出来上がったようで、出来立てのよもぎ餅が店頭に並べられる。さっきまで見物していた人たちが我先にと買っていく。
「わ、私買っていこうかな」
最初に誘惑に負けたのは乃愛だった。続いて高橋さん。気づけば私たち4人全員が買っていた。
よもぎの色なのか、少し緑がかったお餅はとんでも無く柔らかかった。
お餅はお汁粉とかじゃない限り冷えている物ばかりなイメージだったけど、これはあったかい。冬だったら湯気が立ちそうなくらい。でもアツい訳ではなくて、ちょうどトースターであっためたパンくらいの温度。
「すっごいモッチモチだね。私のほっぺたよりも柔らかいかも」
そう言って乃愛は自分のほっぺをつねる。
「やっぱり出来立てやからちゃう? ん? 出来立て? つきたて? どっちやろ」
「お餅の場合はつきたてよ」
会話もそこそこに、高橋さんが最初にお餅を口に運ぶ。すると彼女の顔がパッと輝いた。
私も早速一口……お、美味しい!
しっかりコシがあるからかお餅がよく伸びる。中にぎっしり詰まったあんこも甘い。粒あんが使われているみたいで、柔らかい餅と餡に混じる固形物の食感が私を楽しませる。
歩いていると、まだ後味が口に残っているうちに目的地に着いた。公園とは思えない広さ。そして何よりも目を引くのが鹿の数。なんなら公園に入る前から街を闊歩していた。
公園に入るだけで鹿達が寄ってくる。餌も無いのに来るってことは、多分人間の事を食べ物をくれる動物だと学習してるんだろうな。
私達を無視して、明里ちゃんには3匹くらい集まっていた。
「誰が群れのボスかちゃーんと分かっとるやん。君たち賢いなぁ」
「その理屈でいうとあんたは下っ端の1人になるわよ」
高橋さんが指差す方を見ると、何やら鹿に話しかけてる乃愛が10匹くらいの鹿に囲まれていた。
「はい、あーん。おいちい? たくさん食べていーんだよ」
いつの間に買ったのか、せんべいをあげている。言葉を理解してるのかしてないのか、箱からおせんべいを取り出すたびに、鹿がお辞儀するように首を縦に振る。
明里ちゃんに集まっていた鹿は、餌の匂いを嗅ぎつけて全部向こうに行っちゃった。
「驕れる者は久しからずって訳ね」
「そんな教訓が得られそうな話じゃなかったと思うけど……」
これ以上鹿を騙すのも可哀想だから私達もおせんべいを買いに行く。数十枚くらいが束になって、たったに200円。
優しそうなおばあさんが手渡してくれる。
「あれ? さっき乃愛が持ってたやつは箱入りだったのにこっちは剥き出しなんだ。お店の違いかな?」
疑問を口に出すと、私の後ろにいた乃愛が答えてくれた。
「私のは自動販売機で買ったやつだからねー。500円と、少し高い代わりに箱が付いてくるの。割高には感じるけど利益は鹿のために使われるみたいだし、まぁたまには買ってみようかなって」
「へぇ~。詳しいんだね」
「仕事柄、この近辺には良く来てたからね」
会話をしていると、その隙をついた鹿に一枚奪われた。驚く暇もなく、次々と別の鹿がせんべいを食べようとやってくる。
げ、元気だね~この子達。
気づくとみんな餌をあげ終わり、あんなにあったお煎餅は私の手にあるこの一枚だけ。
ぐぅ~……。
それを見ていた高橋さんのお腹が小さく鳴った。
鹿さん達の為に買った物だけど、友達のためなら仕方ないね。私は最後の貴重な一枚を差し出した。
「いやそれを見てお腹が空いた訳じゃないわよ。もうお昼過ぎだしお腹空いちゃった。どこかでお昼ごはんにしない?」
「レッツゴー!」
明里ちゃんも乃愛も、朝からテンション高いなぁ。長期休暇前のテスト週間が迫るなか、私達はテスト勉強が本格化する前にみんなで遊びに行く事にした。
高橋さんはなんだか眠そう。
「もみじもっとテンションあげてこー!」
「あんたが昨日レポート間に合わないから手伝ってって言うからでしょうが。それも夜に」
「その節はお世話になりました。感謝してもしきれません」
ネコのような鋭い目つきに、明里ちゃんはあっさり屈した。いや屈したっていうか明里ちゃんが悪いんだけど。
とにもかくにも、全員集まった訳だし電車に乗り込む。
大阪を一周する電車から乗り換えて奈良県まで。地図アプリで見ると近く見えるけど、思ったより時間がかかる。
「さっきから思っててんけど、なんで優香ちゃんはずっとニヤニヤしてるん?」
「えぇー、してたぁ?」
そりゃあ私の内心はウキウキでいっぱいですよ。だって友達と、わざわざ休みに1日使って、少し遠くまで観光に行く。
すっごい青春っぽいじゃん!
後は普通に景色を見たり、美味しいご飯を食べるのが趣味っていう理由もある。でもみんなには違う意味で伝わったみたい。
「もしかして山本さんは北奈公園に行くの初めて?」
「え? ああうん、実はそうなんだ。私の地元からだと少し遠いからね」
北和公園。奈良県にある有名な観光地の一つ。どんな所なんだろうなぁ。
話しているうちに駅に到着。こっからは歩きで体を動かすから、やっと目が覚めてくる。昨日もっと早く寝てれば良かったなぁ。
駅からすぐ目の前に商店街があった。通りには美味しそうなご飯屋さんや和菓子屋さんが軒を連ねていて、ついつい入っちゃいそうになる。
「お腹空いちゃうね」
「そうね。でもまだお昼時じゃないし、もう少し我慢しましょ」
そんな事を言っている高橋さんも、ちょいちょい体がフラッと店側に吸い寄せられているのを私は見逃さなかった。
少し歩くと、とある店の前に人だかりが出来ているのが見えてくる。
「「ハイッ! ハイッ! ハイッ!」」
どうも餅つきをしている店があるみたい。夏が近くなってきたこの季節に毎日この仕事をやっていると思うと頭が下がるね。
外国人観光客にも人気みたいで、周りからは多くの外国語も聞こえてきた。
眺めているうちに出来上がったようで、出来立てのよもぎ餅が店頭に並べられる。さっきまで見物していた人たちが我先にと買っていく。
「わ、私買っていこうかな」
最初に誘惑に負けたのは乃愛だった。続いて高橋さん。気づけば私たち4人全員が買っていた。
よもぎの色なのか、少し緑がかったお餅はとんでも無く柔らかかった。
お餅はお汁粉とかじゃない限り冷えている物ばかりなイメージだったけど、これはあったかい。冬だったら湯気が立ちそうなくらい。でもアツい訳ではなくて、ちょうどトースターであっためたパンくらいの温度。
「すっごいモッチモチだね。私のほっぺたよりも柔らかいかも」
そう言って乃愛は自分のほっぺをつねる。
「やっぱり出来立てやからちゃう? ん? 出来立て? つきたて? どっちやろ」
「お餅の場合はつきたてよ」
会話もそこそこに、高橋さんが最初にお餅を口に運ぶ。すると彼女の顔がパッと輝いた。
私も早速一口……お、美味しい!
しっかりコシがあるからかお餅がよく伸びる。中にぎっしり詰まったあんこも甘い。粒あんが使われているみたいで、柔らかい餅と餡に混じる固形物の食感が私を楽しませる。
歩いていると、まだ後味が口に残っているうちに目的地に着いた。公園とは思えない広さ。そして何よりも目を引くのが鹿の数。なんなら公園に入る前から街を闊歩していた。
公園に入るだけで鹿達が寄ってくる。餌も無いのに来るってことは、多分人間の事を食べ物をくれる動物だと学習してるんだろうな。
私達を無視して、明里ちゃんには3匹くらい集まっていた。
「誰が群れのボスかちゃーんと分かっとるやん。君たち賢いなぁ」
「その理屈でいうとあんたは下っ端の1人になるわよ」
高橋さんが指差す方を見ると、何やら鹿に話しかけてる乃愛が10匹くらいの鹿に囲まれていた。
「はい、あーん。おいちい? たくさん食べていーんだよ」
いつの間に買ったのか、せんべいをあげている。言葉を理解してるのかしてないのか、箱からおせんべいを取り出すたびに、鹿がお辞儀するように首を縦に振る。
明里ちゃんに集まっていた鹿は、餌の匂いを嗅ぎつけて全部向こうに行っちゃった。
「驕れる者は久しからずって訳ね」
「そんな教訓が得られそうな話じゃなかったと思うけど……」
これ以上鹿を騙すのも可哀想だから私達もおせんべいを買いに行く。数十枚くらいが束になって、たったに200円。
優しそうなおばあさんが手渡してくれる。
「あれ? さっき乃愛が持ってたやつは箱入りだったのにこっちは剥き出しなんだ。お店の違いかな?」
疑問を口に出すと、私の後ろにいた乃愛が答えてくれた。
「私のは自動販売機で買ったやつだからねー。500円と、少し高い代わりに箱が付いてくるの。割高には感じるけど利益は鹿のために使われるみたいだし、まぁたまには買ってみようかなって」
「へぇ~。詳しいんだね」
「仕事柄、この近辺には良く来てたからね」
会話をしていると、その隙をついた鹿に一枚奪われた。驚く暇もなく、次々と別の鹿がせんべいを食べようとやってくる。
げ、元気だね~この子達。
気づくとみんな餌をあげ終わり、あんなにあったお煎餅は私の手にあるこの一枚だけ。
ぐぅ~……。
それを見ていた高橋さんのお腹が小さく鳴った。
鹿さん達の為に買った物だけど、友達のためなら仕方ないね。私は最後の貴重な一枚を差し出した。
「いやそれを見てお腹が空いた訳じゃないわよ。もうお昼過ぎだしお腹空いちゃった。どこかでお昼ごはんにしない?」
0
あなたにおすすめの小説
異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~
タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。
時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま!
「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」
ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは――
公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!?
おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。
「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」
精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる