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鹿
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「テスト前! 最後の遊び! みんなぁ、覚悟はええかぁ!?」
「レッツゴー!」
明里ちゃんも乃愛も、朝からテンション高いなぁ。長期休暇前のテスト週間が迫るなか、私達はテスト勉強が本格化する前にみんなで遊びに行く事にした。
高橋さんはなんだか眠そう。
「もみじもっとテンションあげてこー!」
「あんたが昨日レポート間に合わないから手伝ってって言うからでしょうが。それも夜に」
「その節はお世話になりました。感謝してもしきれません」
ネコのような鋭い目つきに、明里ちゃんはあっさり屈した。いや屈したっていうか明里ちゃんが悪いんだけど。
とにもかくにも、全員集まった訳だし電車に乗り込む。
大阪を一周する電車から乗り換えて奈良県まで。地図アプリで見ると近く見えるけど、思ったより時間がかかる。
「さっきから思っててんけど、なんで優香ちゃんはずっとニヤニヤしてるん?」
「えぇー、してたぁ?」
そりゃあ私の内心はウキウキでいっぱいですよ。だって友達と、わざわざ休みに1日使って、少し遠くまで観光に行く。
すっごい青春っぽいじゃん!
後は普通に景色を見たり、美味しいご飯を食べるのが趣味っていう理由もある。でもみんなには違う意味で伝わったみたい。
「もしかして山本さんは北奈公園に行くの初めて?」
「え? ああうん、実はそうなんだ。私の地元からだと少し遠いからね」
北和公園。奈良県にある有名な観光地の一つ。どんな所なんだろうなぁ。
話しているうちに駅に到着。こっからは歩きで体を動かすから、やっと目が覚めてくる。昨日もっと早く寝てれば良かったなぁ。
駅からすぐ目の前に商店街があった。通りには美味しそうなご飯屋さんや和菓子屋さんが軒を連ねていて、ついつい入っちゃいそうになる。
「お腹空いちゃうね」
「そうね。でもまだお昼時じゃないし、もう少し我慢しましょ」
そんな事を言っている高橋さんも、ちょいちょい体がフラッと店側に吸い寄せられているのを私は見逃さなかった。
少し歩くと、とある店の前に人だかりが出来ているのが見えてくる。
「「ハイッ! ハイッ! ハイッ!」」
どうも餅つきをしている店があるみたい。夏が近くなってきたこの季節に毎日この仕事をやっていると思うと頭が下がるね。
外国人観光客にも人気みたいで、周りからは多くの外国語も聞こえてきた。
眺めているうちに出来上がったようで、出来立てのよもぎ餅が店頭に並べられる。さっきまで見物していた人たちが我先にと買っていく。
「わ、私買っていこうかな」
最初に誘惑に負けたのは乃愛だった。続いて高橋さん。気づけば私たち4人全員が買っていた。
よもぎの色なのか、少し緑がかったお餅はとんでも無く柔らかかった。
お餅はお汁粉とかじゃない限り冷えている物ばかりなイメージだったけど、これはあったかい。冬だったら湯気が立ちそうなくらい。でもアツい訳ではなくて、ちょうどトースターであっためたパンくらいの温度。
「すっごいモッチモチだね。私のほっぺたよりも柔らかいかも」
そう言って乃愛は自分のほっぺをつねる。
「やっぱり出来立てやからちゃう? ん? 出来立て? つきたて? どっちやろ」
「お餅の場合はつきたてよ」
会話もそこそこに、高橋さんが最初にお餅を口に運ぶ。すると彼女の顔がパッと輝いた。
私も早速一口……お、美味しい!
しっかりコシがあるからかお餅がよく伸びる。中にぎっしり詰まったあんこも甘い。粒あんが使われているみたいで、柔らかい餅と餡に混じる固形物の食感が私を楽しませる。
歩いていると、まだ後味が口に残っているうちに目的地に着いた。公園とは思えない広さ。そして何よりも目を引くのが鹿の数。なんなら公園に入る前から街を闊歩していた。
公園に入るだけで鹿達が寄ってくる。餌も無いのに来るってことは、多分人間の事を食べ物をくれる動物だと学習してるんだろうな。
私達を無視して、明里ちゃんには3匹くらい集まっていた。
「誰が群れのボスかちゃーんと分かっとるやん。君たち賢いなぁ」
「その理屈でいうとあんたは下っ端の1人になるわよ」
高橋さんが指差す方を見ると、何やら鹿に話しかけてる乃愛が10匹くらいの鹿に囲まれていた。
「はい、あーん。おいちい? たくさん食べていーんだよ」
いつの間に買ったのか、せんべいをあげている。言葉を理解してるのかしてないのか、箱からおせんべいを取り出すたびに、鹿がお辞儀するように首を縦に振る。
明里ちゃんに集まっていた鹿は、餌の匂いを嗅ぎつけて全部向こうに行っちゃった。
「驕れる者は久しからずって訳ね」
「そんな教訓が得られそうな話じゃなかったと思うけど……」
これ以上鹿を騙すのも可哀想だから私達もおせんべいを買いに行く。数十枚くらいが束になって、たったに200円。
優しそうなおばあさんが手渡してくれる。
「あれ? さっき乃愛が持ってたやつは箱入りだったのにこっちは剥き出しなんだ。お店の違いかな?」
疑問を口に出すと、私の後ろにいた乃愛が答えてくれた。
「私のは自動販売機で買ったやつだからねー。500円と、少し高い代わりに箱が付いてくるの。割高には感じるけど利益は鹿のために使われるみたいだし、まぁたまには買ってみようかなって」
「へぇ~。詳しいんだね」
「仕事柄、この近辺には良く来てたからね」
会話をしていると、その隙をついた鹿に一枚奪われた。驚く暇もなく、次々と別の鹿がせんべいを食べようとやってくる。
げ、元気だね~この子達。
気づくとみんな餌をあげ終わり、あんなにあったお煎餅は私の手にあるこの一枚だけ。
ぐぅ~……。
それを見ていた高橋さんのお腹が小さく鳴った。
鹿さん達の為に買った物だけど、友達のためなら仕方ないね。私は最後の貴重な一枚を差し出した。
「いやそれを見てお腹が空いた訳じゃないわよ。もうお昼過ぎだしお腹空いちゃった。どこかでお昼ごはんにしない?」
「レッツゴー!」
明里ちゃんも乃愛も、朝からテンション高いなぁ。長期休暇前のテスト週間が迫るなか、私達はテスト勉強が本格化する前にみんなで遊びに行く事にした。
高橋さんはなんだか眠そう。
「もみじもっとテンションあげてこー!」
「あんたが昨日レポート間に合わないから手伝ってって言うからでしょうが。それも夜に」
「その節はお世話になりました。感謝してもしきれません」
ネコのような鋭い目つきに、明里ちゃんはあっさり屈した。いや屈したっていうか明里ちゃんが悪いんだけど。
とにもかくにも、全員集まった訳だし電車に乗り込む。
大阪を一周する電車から乗り換えて奈良県まで。地図アプリで見ると近く見えるけど、思ったより時間がかかる。
「さっきから思っててんけど、なんで優香ちゃんはずっとニヤニヤしてるん?」
「えぇー、してたぁ?」
そりゃあ私の内心はウキウキでいっぱいですよ。だって友達と、わざわざ休みに1日使って、少し遠くまで観光に行く。
すっごい青春っぽいじゃん!
後は普通に景色を見たり、美味しいご飯を食べるのが趣味っていう理由もある。でもみんなには違う意味で伝わったみたい。
「もしかして山本さんは北奈公園に行くの初めて?」
「え? ああうん、実はそうなんだ。私の地元からだと少し遠いからね」
北和公園。奈良県にある有名な観光地の一つ。どんな所なんだろうなぁ。
話しているうちに駅に到着。こっからは歩きで体を動かすから、やっと目が覚めてくる。昨日もっと早く寝てれば良かったなぁ。
駅からすぐ目の前に商店街があった。通りには美味しそうなご飯屋さんや和菓子屋さんが軒を連ねていて、ついつい入っちゃいそうになる。
「お腹空いちゃうね」
「そうね。でもまだお昼時じゃないし、もう少し我慢しましょ」
そんな事を言っている高橋さんも、ちょいちょい体がフラッと店側に吸い寄せられているのを私は見逃さなかった。
少し歩くと、とある店の前に人だかりが出来ているのが見えてくる。
「「ハイッ! ハイッ! ハイッ!」」
どうも餅つきをしている店があるみたい。夏が近くなってきたこの季節に毎日この仕事をやっていると思うと頭が下がるね。
外国人観光客にも人気みたいで、周りからは多くの外国語も聞こえてきた。
眺めているうちに出来上がったようで、出来立てのよもぎ餅が店頭に並べられる。さっきまで見物していた人たちが我先にと買っていく。
「わ、私買っていこうかな」
最初に誘惑に負けたのは乃愛だった。続いて高橋さん。気づけば私たち4人全員が買っていた。
よもぎの色なのか、少し緑がかったお餅はとんでも無く柔らかかった。
お餅はお汁粉とかじゃない限り冷えている物ばかりなイメージだったけど、これはあったかい。冬だったら湯気が立ちそうなくらい。でもアツい訳ではなくて、ちょうどトースターであっためたパンくらいの温度。
「すっごいモッチモチだね。私のほっぺたよりも柔らかいかも」
そう言って乃愛は自分のほっぺをつねる。
「やっぱり出来立てやからちゃう? ん? 出来立て? つきたて? どっちやろ」
「お餅の場合はつきたてよ」
会話もそこそこに、高橋さんが最初にお餅を口に運ぶ。すると彼女の顔がパッと輝いた。
私も早速一口……お、美味しい!
しっかりコシがあるからかお餅がよく伸びる。中にぎっしり詰まったあんこも甘い。粒あんが使われているみたいで、柔らかい餅と餡に混じる固形物の食感が私を楽しませる。
歩いていると、まだ後味が口に残っているうちに目的地に着いた。公園とは思えない広さ。そして何よりも目を引くのが鹿の数。なんなら公園に入る前から街を闊歩していた。
公園に入るだけで鹿達が寄ってくる。餌も無いのに来るってことは、多分人間の事を食べ物をくれる動物だと学習してるんだろうな。
私達を無視して、明里ちゃんには3匹くらい集まっていた。
「誰が群れのボスかちゃーんと分かっとるやん。君たち賢いなぁ」
「その理屈でいうとあんたは下っ端の1人になるわよ」
高橋さんが指差す方を見ると、何やら鹿に話しかけてる乃愛が10匹くらいの鹿に囲まれていた。
「はい、あーん。おいちい? たくさん食べていーんだよ」
いつの間に買ったのか、せんべいをあげている。言葉を理解してるのかしてないのか、箱からおせんべいを取り出すたびに、鹿がお辞儀するように首を縦に振る。
明里ちゃんに集まっていた鹿は、餌の匂いを嗅ぎつけて全部向こうに行っちゃった。
「驕れる者は久しからずって訳ね」
「そんな教訓が得られそうな話じゃなかったと思うけど……」
これ以上鹿を騙すのも可哀想だから私達もおせんべいを買いに行く。数十枚くらいが束になって、たったに200円。
優しそうなおばあさんが手渡してくれる。
「あれ? さっき乃愛が持ってたやつは箱入りだったのにこっちは剥き出しなんだ。お店の違いかな?」
疑問を口に出すと、私の後ろにいた乃愛が答えてくれた。
「私のは自動販売機で買ったやつだからねー。500円と、少し高い代わりに箱が付いてくるの。割高には感じるけど利益は鹿のために使われるみたいだし、まぁたまには買ってみようかなって」
「へぇ~。詳しいんだね」
「仕事柄、この近辺には良く来てたからね」
会話をしていると、その隙をついた鹿に一枚奪われた。驚く暇もなく、次々と別の鹿がせんべいを食べようとやってくる。
げ、元気だね~この子達。
気づくとみんな餌をあげ終わり、あんなにあったお煎餅は私の手にあるこの一枚だけ。
ぐぅ~……。
それを見ていた高橋さんのお腹が小さく鳴った。
鹿さん達の為に買った物だけど、友達のためなら仕方ないね。私は最後の貴重な一枚を差し出した。
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