心霊探偵、神原語は仕事しない

巫夏希

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第二章 シュレーディンガーの幽霊

第14話 空港での楽しみ方

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 三日後。
 笠川空港へとやってきたぼくは、少しだけ待ち合わせの時間に余裕があるために、空港を散策することとした。
 因みに笠川空港へのアクセスはバスか鉄道の二択となる。どちらでも良かったりするのだけれど、今回ぼくは鉄道で向かうこととした。鉄道は一時間に三本ぐらい走っていてそのうち二本が特急列車という、そこまでたくさん走っているダイヤでもないのだけれど、特別な感じがするのは鉄道だと言える。バスは高速バスではあるけれど、普通の車両で来るものだからそこまで特別感はない。対して鉄道の特急車両というのはこの笠川空港線に併せて開発された特別製、ということもあり、この空港に向かうには鉄道しかない――というのは言い過ぎかもしれないけれど、そう思わせるぐらいの特別感があった。
 笠川空港駅は二階にある。バスターミナルは一階にあるのだけれど、それぞれライバル同士でもあるからいかに客を奪い合うかの戦争状態になっていた。カウンターが向かい合って設置されているけれど、目線はバチバチ合っている。
 もっとレイアウトを工夫することも出来ただろうにそうしているのには、最早わざとなのかもしれない。
 出発ロビーは二階にあるため、鉄道を降りたらそのまま階段やエスカレーターを使用することなく、飛行機に乗ることが出来る。ともあれ、笠川空港に少し早く来たのは、三階から四階に設置されているショッピングフロアだ。
 ショッピングフロアには食事出来るお店やフードコート、衣類から衣料品からゲームソフトまで幅広く販売している。かつてはアメリカや韓国にここから飛行機で行くことが出来たようだけれど、不況のあおりを受けて全便運休しているとのことだ。
 だからといって閑古鳥が鳴いているかというとそうでもなく、今の状態でさえそれなりにお客さんは居るようだった。国内需要で以前の需要を全て賄いきれるかと言われるとそうではないのだろうが、それでもこれだけのお客さんが入っていれば、少なくとも閉鎖することはなさそうだ。
 四階にはテラスがある。ただのテラスではなく、コーヒーショップが併設されている。そうして、このテラスの真下には空港の出発ロビーがある――ということは?

「……テレビか何かでやっていたけれど、いざ来てみると迫力があるな」

 目の前に、飛行機が着陸してきている。
 そう、ここからは飛行機の離着陸を見ることが出来るスポットとなっていた。コーヒーは若干高いけれど、付加価値だと思って皆コーヒーを買っている。
 正直そう簡単に高いコーヒーを買わない方が良いと思うし、それを商売としている空港は流石といったところではあるけれど、案外どの空港でもやっているスタンダードな商売だったりする。
 とはいえ、ぼくもそんな文句を言ってコーヒーも何も買わずに、ここで時間を潰すのは少々性格が悪いと思われそうだ。或いはケチと思われても致し方ない。
 コーヒーショップのメニューを見ると、どれも五百円以上はかかる。カフェオレに至っては七百円だ。幾ら何でも高過ぎやしないだろうか? 若者にはそう簡単に支払える金額ではない。

「しかし……」

 喉が渇いた、というのもある。
 それに神原の依頼金の按分が近々入るし、懐は後々問題なくなるはずだ――そう自らに言い聞かせて、アイスコーヒーを注文するのだった。
 ものの五分もしないうちにプラスチックの蓋付き容器に満たされたアイスコーヒーが手渡された。悲しいことに、これで五百五十円というのだから驚きだ。スタバでもこんなしないぞ、多分。五百円も支払うんだったら新作のフラペチーノでも頼んでいるね、きっと。
 とはいえ――文句を言っても何も始まらないし、神原が到着するまでの間、ここで時間を潰すしかない。
 別に、時間を潰す場所は何処だってある。けれども、例えば本屋で買いもしないのに立ち読みばかりして時間を潰すのは本屋に悪いし、何も食べるつもりもないのにフードコートに居座るのも迷惑行為だ。だったら、ここでこのように飛行機の離着陸でも眺めながら、高いコーヒーでも啜っていた方がまだ良いのかもしれない。
 そう自分に言い訳を聞かせて、適当なソファに腰掛ける。飛行機が見やすいように少々リクライニングがかけられる、ちょっとお高めの椅子が設置されている。だからかもしれないが、テーブルにコーヒーを置いてちょっと横になっている人も見受けられた。でもここでずっと寝ていたら日焼けしそうな気はするけれど、そこは問題ないのだろうか?

「待たせたね、たーくん」

 神原がやってきたのは、それから三十分後のことだった。ぼくは事前にLINEでここに居ることを知らせていた。どうせこいつもコーヒーを飲むだろうし。
 隣が偶然空いていたので、神原はそこに腰掛ける。
 神原は高いカフェオレを注文していた。

「これからどうするんだ?」

 もう氷しか残っていないアイスコーヒーだった物を見つめながら、ぼくは質問した。

「飛行機をチャーターした、って言っただろう? その飛行機の出発時間は、正直言って何時でも良いんだ。僕ちゃん達が出発出来る時間になれば出発ロビーに行けば良い話だし」

 つまり、一日ずっと操縦士と飛行機をキープしている、と?
 リッチだな、今回は。
 まあ、今回に始まった話でもないことは事実だけれど。たまにこうやって贅沢をするんだよな、こいつは。

「それなら分かったけれど……、一応確認するが、その唐紅島って、飛行機は着陸出来るのか?」
「出来なかったら、飛行機を使うとは言わないだろう? ……正確にはセスナだよ。セスナぐらいは知っているよな、要するに少ない人数しか乗り込めない小型機だよ。そういう飛行機しか乗り込めないんだ。一応滑走路は用意されているけれど、セスナが限界といったところだろうね。それが無理なら船に乗るしかなかったのだけれど、当たり前だけれど早く着くのは飛行機だった――って訳で」

 まあ、それもそうか。
 幾ら財閥の娘とはいえ、元々無人島だった場所を開拓した訳だ。そこに大きい飛行機が着陸出来るような空港を整備するはずもなく――仮にそれが出来ていたとしても、一斤染財閥の財力なら不可能ではなさそうだが――そういった小さい飛行機を着陸させることが出来るような空港を作るのが精一杯といったところなのかもしれない。

「因みに笠川からどれぐらい?」
「一時間までかからないんじゃないかな。一応言っておくけれど、機内食はないからね。お腹が空くんだったら、事前に何か買っておけば?」
「さっきハンバーガー食べたばかりだから良いよ……。それに、到着した頃にはもう夕方とまでは行かなくとも、良い時間だろ。多分財閥が出してくれる食事だ、それなりに美味しい物を期待しているし」
「まあ、たーくんがそう言うなら良いけれど……」

 何か含みを持たせた発言をしたのが少しだけ気になったけれど、まあ良い。
 ともあれ、ぼく達は唐紅島へと足を踏み入れるべく、二人揃って出発ロビーへと向かうこととした。
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