223 / 614
4章 街での日々とご近所さん
81
しおりを挟む◇
翌日、やってきたエルベルトさんとブルーノさんに、相談を持ちかけるより先に、話があると切り出されてしまった。
話し合うのに、外のテーブルじゃなく家の中を指定され、ちょっと緊張しながらエルベルトさんたちのお茶を準備する。
「――え、商人ギルド?」
エルベルトさんの話とは、商人ギルドに入るための申請をするため、明日か明後日にでも商人ギルドに同行してほしいというものだった。
商人ギルドとはその名前の通り、この国の商人の全てを取りまとめる、どデカいギルドで、このギルドに入ってない人は店をかまえるこの国でどんな店も構えることが出来ない法律がある――
……ありましたねー。 そんな法律。 作った気がするなー。
……私、がっつり店出してますね? いや、店って認識は無かったけど……これが店じゃなかったら、多分結構な抜け道存在してることになりますもんねー……
「ああ。 失念していたが、酒場にまで料理を提供し金銭を受け取っているからな、当然店と言えてしまう。 急で申し訳ないが同行して欲しい」
「えっと、別に全然大丈夫なんですけど、エルベルトさんたちのお仕事は平気ですか? 私は癒の日とかでも平気ですよ?」
「……ありがたい申し出だが、おそらく癒の日にギルドは空いていない。 そして――次の癒の日は仕事でな……?」
「――明日行きましょうか? 早い方がいいですもんね? パパッと終わらせましょう!」
癒の日が休みなのも忘れてたし、兵士の仕事に休みなんか無いってのも知ってたはずなのに!
ごめんね! 良かれと思っただけなの!
「――そうしてくれると助かる」
「オレは休みなんだけどなー? ギルドがなー? いやー俺は休みなんだけどなー?」
からかい混じりにニヤニヤとブルーノさんが煽る。
「……そんなに仕事が好きなら今から命令してやろうか?」
「ははは。 連続勤務の規約に違反しちまうぜー?」
そんなものあるんだ? 意外にホワイトだな兵士。
「ほう? ならば明日は休みにしてやろうな?」
「……いやいや俺お仕事大好きなんでぇー」
「――ふんっ」
ヘラヘラと笑うブルーノさんを睨みつけ鼻を鳴らしたエルベルトさんは、気を取り直すかのように短く息を吐き出して私に向き直った。
「都合がいいならば明日、少々遠回りにはなるが宿舎で待ち合わせということでいいかな?」
「はい――……いくらぐらい持っていけばいいんですかね?」
「……買い物もするのか?」
エルベルトさんの問いかけに少し戸惑う。
「え? あのギルドって入るのお金かかりますよね?」
3
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
好感度0になるまで終われません。
チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳)
子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。
愛され続けて4度目の転生。
そろそろ……愛されるのに疲れたのですが…
登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。
5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。
いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。
そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題…
自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。
【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります
Rohdea
恋愛
───出来損ないでお荷物なだけの王女め!
“聖女”に選ばれなかった私はそう罵られて捨てられた。
グォンドラ王国は神に護られた国。
そんな“神の声”を聞ける人間は聖女と呼ばれ、聖女は代々王家の王女が儀式を経て神に選ばれて来た。
そして今代、王家には可愛げの無い姉王女と誰からも愛される妹王女の二人が誕生していた……
グォンドラ王国の第一王女、リディエンヌは18歳の誕生日を向かえた後、
儀式に挑むが神の声を聞く事が出来なかった事で冷遇されるようになる。
そして2年後、妹の第二王女、マリアーナが“神の声”を聞いた事で聖女となる。
聖女となったマリアーナは、まず、リディエンヌの婚約者を奪い、リディエンヌの居場所をどんどん奪っていく……
そして、とうとうリディエンヌは“出来損ないでお荷物な王女”と蔑まれたあげく、不要な王女として捨てられてしまう。
そんな捨てられた先の国で、リディエンヌを拾ってくれたのは、
通称・氷の貴公子様と呼ばれるくらい、人には冷たい男、ダグラス。
二人の出会いはあまり良いものではなかったけれど───
一方、リディエンヌを捨てたグォンドラ王国は、何故か謎の天変地異が起き、国が崩壊寸前となっていた……
追記:
あと少しで完結予定ですが、
長くなったので、短編⇒長編に変更しました。(2022.11.6)
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
【完結】戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
水都 ミナト
恋愛
最高峰の魔法の研究施設である魔塔。
そこでは、生活に不可欠な魔導具の生産や開発を行われている。
最愛の父と母を失い、継母に生家を乗っ取られ居場所を失ったシルファは、ついには戸籍ごと魔塔に売り飛ばされてしまった。
そんなシルファが配属されたのは、魔導具の『メンテナンス部』であった。
上層階ほど尊ばれ、難解な技術を必要とする部署が配置される魔塔において、メンテナンス部は最底辺の地下に位置している。
貴族の生まれながらも、魔法を発動することができないシルファは、唯一の取り柄である周囲の魔力を吸収して体内で中和する力を活かし、日々魔導具のメンテナンスに従事していた。
実家の後ろ盾を無くし、一人で粛々と生きていくと誓っていたシルファであったが、
上司に愛人になれと言い寄られて困り果てていたところ、突然魔塔の最高責任者ルーカスに呼びつけられる。
そこで知ったルーカスの秘密。
彼はとある事件で自分自身を守るために退行魔法で少年の姿になっていたのだ。
元の姿に戻るためには、シルファの力が必要だという。
戸惑うシルファに提案されたのは、互いの利のために結ぶ契約結婚であった。
シルファはルーカスに協力するため、そして自らの利のためにその提案に頷いた。
所詮はお飾りの妻。役目を果たすまでの仮の妻。
そう覚悟を決めようとしていたシルファに、ルーカスは「俺は、この先誰でもない、君だけを大切にすると誓う」と言う。
心が追いつかないまま始まったルーカスとの生活は温かく幸せに満ちていて、シルファは少しずつ失ったものを取り戻していく。
けれど、継母や上司の男の手が忍び寄り、シルファがようやく見つけた居場所が脅かされることになる。
シルファは自分の居場所を守り抜き、ルーカスの退行魔法を解除することができるのか――
※他サイトでも公開しています
アンジェリーヌは一人じゃない
れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。
メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。
そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。
まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。
実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。
それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。
新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。
アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。
果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。
*タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*)
(なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)
聖女の証を義妹に奪われました。ただ証だけ持っていても意味はないのですけどね? など 恋愛作品集
にがりの少なかった豆腐
恋愛
こちらは過去に投稿し、完結している作品をまとめたものになります
章毎に一作品となります
これから投稿される『恋愛』カテゴリの作品は投稿完結後一定時間経過後、この短編集へ移動することになります
※こちらの作品へ移動する際、多少の修正を行うことがあります。
※タグに関してはおよそすべての作品に該当するものを選択しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる