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4章 街での日々とご近所さん
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しおりを挟む「姉ちゃんスープー!」
「あ、はーい」
プリムに声をかけられ、すぐに台所に戻る。
――よし! ちゃんと最後の鍋になりましたよ! ……最初ほとんど売れなくて焦ったけど、無事に売り切れそうで良かったー……
みんなほんと、食わず嫌いは良くないですからね⁉︎ ちゃんとそこそこの味にはなってるんだって! プリムも「これ美味しい!」って言ってくれたし。
デカ鍋を手にヨタヨタとゆっくり売り場に進んでいく。 途中で私に気がついてくれたウィリムが手をかしてくれて、無事にスープ鍋を交換する。
すると近くて飲み食いしていた兵士たちが話しかけてきた。
「ダリア! このスープ美味いぞ⁉︎ お前本当に天才だなぁ?」
「ありがとうございます……でもちょっと売れ行きが遅くてビクビクしてました」
「ハハッ 見た目がねー? こんなドロドロで鮮やかなスープ見たことないから……――でも美味しかったよ」
「本当に! にんじんだけなんだろ? すげぇよ」
「……バターも玉ねぎも牛乳も入ってますけど……?」
その言葉は兵士たちには届かず、3人は上機嫌でジョッキを合わせて酒をあおっている。
……そこそこだけど酔ってるので、私の声はあんまり届かないかもしれない。
「肉も入ってねぇのに美味いもんがあるなんてなぁ?」
「あはは、僕はパンもお酒も好きだけど――今日でこのスープも追加だなぁ?」
「これウサギのスープッスよ! だからきっとこんなに上手いんッス!」
「ハハハッ 俺らがウサギだって?」
「なるほど? だからこんなに美味いのか」
「そうっすよ! だってウサギのスープッスもん!」
「そりゃいいや!」
そう言い合って3人はご機嫌にガッハッハと大笑いを始める。
――いや、絶対ダメですよ?
うちのメニュー、わりとウサギ肉使うんですからね?
これがウサギのスープであっちがウサギのシチューで? ややこしいにも程がありますけれど⁉︎
「おーい、こっちにもそのウサギのスープくれー」
「あ、自分も欲しいッス!」
そっちの名称で広めないで⁉︎
――ここにはほとんど兵士しかおらず、仲間意識も強いとあって……少し盛り上がったことは全員で共有する決まりでもあるらしい……
「ダリアー、ウサギのスープまた作れよー」
「今度は鍋持ってこねーとなー」
「ウサギのスープだぞーっ、てか?」
「あははっ うちの息子びっくりするかもなぁ?」
……親がウソつく、いけないと思います。
――これこの場のノリってことで終わるよね……? このまま定着したりしないよね? 混乱してしょうがないんだけど⁉︎
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