【完結】回復魔法だけでも幸せになれますか?

笹乃笹世

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 あれから私は無事にバジーレ家の騎士団見習いとなり、多少のご迷惑をかけ、周りの方々に大いに気を使わせながらも、日々、治療師としてたくさん魔法を使い、とても充実した日々を過ごしている。

「へぇー 腰が痛いのに、背中も治すんだー」

 今日は、怪我は怪我でも、体の中の怪我、落馬などで背骨を強打してしまったり、打撃などで内臓を痛めているような、処置する幹部が直接見えない患者の治療法を教えてもらっている。

 ここの責任者であり、私の師匠となったパウロじぃが治療をほどこす様子を後ろから眺めつつ、メモを取りながら、爺のやりかたをジッと見つめる。
 ーー羊皮紙に羽ペンがさぁ……
 最初はカッコイイ! とか思ったけど……正直、すでにボールペンが恋しいです。

「ああ。 そうじゃねぇと、痛みは治ってるはずなのに、足が動かなかったりマヒが残る奴が出てくる」
「あー、脊髄やっちゃってる系?」
「…………せきずい?」

 私の返事に、パウロ爺がゆっくりと振り返りながら聞いてきた。
 やだぁ……爺の真顔怖い……
 えー? 脊髄って名前だと思ってたんだけど……違ったっけ⁇
「えっと……背骨の中を通ってる、大きな神経がある……じゃん?  損傷してると手足にマヒが残るやつ」
「マヒ……」
「だから動かなくなったりするって話なのかなって……ーーごめん、名称とかはうろ覚え……」

 元の私にもイルメラにも医学の知識なんてものがないばかりに……
 こんな風に困惑させるの何度目なのかと……ーー不出来な弟子ですまねぇ……

「ーーーー背骨の中の神経、な?」
「……あれ?  違った??  周りだっけ??」

 え、まさかそこから違ってる⁉︎

「……ーーまぁとにかく腰や背中打ったやつは全部だ」

 フン……と鼻を鳴らしつつ、出来の悪い弟子でもすぐに理解できるせつめい説明をよくわかる説明をしてくれる爺。

 実に分かりやすいっ! 師匠の鏡やでっ!

「りょうかーい。 全力で全部治せば問題無し……っと。 あ、首も入る?」

 羊皮紙にガリガリと書き込みながら、パウロ爺に確認を取る。

「首?」

  治療を進めながら、少しだけこちらを振り返りながら聞き返してくる爺。

「あれ?  首は大丈夫なの? ……でも背骨って、頭の付け根から腰まで繋がってるでしょ⁇」

 ……あれ? 私また変なこと言ってる⁇

「……まぁ、全部直しときゃ問題ねぇんだよ」
「なる。  了解!」

 私この師匠大好き。
 こう、どこか適当というか、でもこちらのレベルに合わせて分かりやすく説明してくれるから。

 「極論、どこをどんなやり方で治療しようとも、最終的に健康になっていれば問題ない!」という、少々強引な自論を持つ、自慢のお師匠様だ。

 説明を一通り受けた後は、師匠や先輩たちの監視付きで、実際に治療をしてみる。
 今日は騎乗しての戦闘訓練らしく、落馬で運び込まれる患者が後をたたないので、練習台には事欠かない。

ーー大丈夫! 確かに私は新人だけと、そんなに不安そうにしないで⁉︎
 私の後ろには師匠やベテラン勢が控えている!
 だから、結果的にはわたくし失敗しませんの!

「ーーおい、声かけとけ?」

 後ろに控える師匠たちにあんしんしつつ、せっせと治療を進めていると、背後でベテラン勢が何やら話合いを初めていた。

「……?」

 なんの話なのか気になり、治療の合間に後ろを振り返り、首。かしげる仕草で、なんの話なのかをたずねる。

「ーーこっちの残業だ」
「それ私もする?」

 しっかりと治療は続けつつも、後ろの会話に加わる。
 残業するとなると、すぐにでも連絡を入れなければならない相手がいるのだ。

「させられるかよ。  嫁入り前のご令嬢はとっとと帰んな」

 ベテラン勢の一人に冗談めかしてそう言われるが……その話題って、割と笑い事ではないのよ……?
 思い出したくない現実を少しだけ思い出してしまった私は、少しだけ肩を落として師匠を見つめる。

「……爺ーー私ちゃんと嫁に行けるかなぁ……?」

 もしかしたらこのままずっと独身だったり……⁉︎

「ーー今そんな心配してねぇで、とっとと終わらせろ」
「うぃ……」

 呆れたような師匠のため息に背中を押されるように、患者に向き直る。
 すると少しだけ不安そうに視線を揺らしている、患者である騎士の人と目が合い、ヘラリ……と愛想笑いを浮かべ、誤魔化したのだったーー
 
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