【完結】回復魔法だけでも幸せになれますか?

笹乃笹世

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 ここにある本を読んで分かったことがある。

 この世界には、ずっと昔に、たくさんの高校生がごっそりと飛ばされてきたらしいってこと。

 ーークラス全員異世界転移……ってやつかね?

 で、少しでも暮らしをよくするために、仲間と苦労して復元した日本にあったものたちを、出来るだけ後世に残そうとして、わざわざ長期保存に適している和紙や墨まで作り上げ、たくさんの本にまとめたものの一部がここに保存されているらしいのだが……

 ーー元日本人たちがたくましすぎる……
 ここに来た理由が、誰かの魔法とかなのか、たまたま偶然なのか分からないけど「異世界に来ちゃった⁉︎ どうやったら帰れるの⁉︎」って状況から、カレーやらラーメンの再現方法や米の炊き方を研究し始めたってことでしょ……?
 日本食に対する執念がヤバすぎる……
 ーーまあ……そのおかげで、私は今、醤油も味噌も日本酒すらも、作り方は分かって、日本食もどきもたくさん作れるようになったわけだけどー。
 …… でもなぁー……肝心のお米がなぁー……

 この高校生たちがいた頃は普通に食べられていたお米なのだが、今の時代でお米は“聖食”と呼ばれる食べ物で、基本的に教会の偉い人たちか、特別な儀式でしか食べられないとても貴重なものなんだそうだ。

 つまり、今、私が買おうとすると、教会で色々な許可を取らなきゃいけないらしい。
 ーーそれも一回買うごとに毎回。
 ……とっても食べたいけど、そこまでめんどくさいのは困る……

 ーーあと普通にお高い。
 お嬢様的に、買えない額ってほど高くは無いんだけど、お米の値段だと思うと、目が飛び出るほど高い。
 ……そして今の私には、そんな贅沢品を買っている余裕などないっ!

 でも……それでも……
 私はお米が大好きなんだ!
 あるなら是非とも食べたいんだ……っ!
 ーーおにぎりや焼きおにぎり、チャーハンにお寿司、炊き込みご飯……もちろん白米も大好きさ!

 そういえばジーノさんが、ここの日本語の本たちならば、教会が結構な値段で買い取ってくれるよって話を持ってきてくれたけど……ーーでもこれはレシピ本なんだよ……作り方は手元に置いときたいんだ……
 いくら薄いとはいえ、本一冊丸々書き写すとか、そんな作業もやりたくも無いし……



 ーーそもそもとしてよ?
 私がこんなにお金に困ってるのって理不尽以外のなにものでもないよね⁇

 だって私が一体なにをしたっていうの?
 ここに来たのは、婚約者に浮気された挙句、こっちにはなんの落ち度もないのに傷モノ扱いされて、田舎に追い出されて?
 よりにもよって私に着いてくる筈だった侍女達と不適切な関係になったからって、私欲のために簡単に同行を取り消すような親ってだけでもありえないのに⁇
 なんで許されない行為をしといて、それを奥さんや婚約者にバラされたからって、生活費を止めるような嫌がらせしてくるとか絶対ないと思うんだよねっ⁉︎

 ーー我、圧倒的なほどに被害者ぞ?

 ーー器が小さすぎる上に、人でなしが過ぎる……!
 一体どんな教育を受けて育ったらそんなひどい人間になるって言うんだ‼︎
 全く! 親の顔が見てみたいねっ‼︎

 ……ーーなるほど?
 お父様だって人の子なわけだよ……
 つまりーー
 ーー親がダメなら、ジジババってことでは……?

 だって、お爺様たちにも多少の責任はあるでしょ!
 息子に孫よ? わけ分かんない振る舞いをしてたなら、叱咤しったしてしかるべき!

 ーー私は今こんな不幸なのに、お父様やお兄様たちに、こんなヒドイことをされました! って言って、おこづかい巻き上げたろ!

「ーー……そうと決まれば、サクッと明日のメニュー決めて、お爺様たちに手紙書かないと!」

 私は、机に向かって腰掛けると、メモがわりの羊皮紙の切れ端を取り出して、羽ペンをインクに浸した。

 なんにしよっかなー?
 だし巻き卵と甘い卵焼きは決定でー……みんな大好き唐揚げは絶対。
 メインはサンドイッチかなぁ?
 ーー本当はハンバーガーの方が好きだけど……ーーどうやらうちの料理長、バンズから作ってるらしいんだよね……
 職場に良い顔したいから、明日ハンバーガー大量に作ってね! とか、舌打ちされても仕方がないレベル……

 やっぱり野菜もないとバランス悪いから、味噌ベースの肉野菜炒めとかも欲しいなー。
 あとは当日、みんなでスープ作ればいいかな?
 あー……久々にコーンスープ飲みたいな……
 流石に森の中でとうもろこし潰すわけにはいかないから明日のメニューには入れられないけどー……

 ーーでも本当に食べたくなっちゃったから、料理長にお願いして、今夜はコーンスープにして貰おーっと‼︎
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