【完結】回復魔法だけでも幸せになれますか?

笹乃笹世

文字の大きさ
23 / 48

23

しおりを挟む
「美味しいですね!」

 私はおにぎりにかぶり付きながら言った。

「……そうですね?」

 あっやべっ……口に物を入れたまま喋るとか、普通に行儀悪かったわ……

 でもねエド様! これ久々のお米なんです!
 これよ、これこれっ! しょっぱさ加減も海苔のシナっと感も完璧っ‼︎
 うまあぁぁぁっ‼︎ 


 エド様が教会に用事があったこともあり、教会にお米を買いに来ていた。
 教会に着いて、お米を購入したいことを伝えたところ、なぜかいきなり、おにぎりを振る舞われることになっていた。

 よく分からないけど、食べられない人には売れないとかなんとか言われたんだけど……ーーこの世界、お米アレルギーの人とかが多いんだろうか?

 でも久しぶりのお米本当に美味しい! もち米やタイ米みたいなのだったらちょっとガッカリしちゃうかも……と心配していたので、普通のお米だったことにもホッとしていた。

 グッジョブ高校生たちっ!
 ーーそれにしても、この世界って海苔や梅干し、おかかなんもあったんだ……
 ……やっぱりお高いのかなぁ? 出来ることなら、これも今日買って帰りたいなぁー……売ってるお店とか教えてくれるかな⁇

「……ご令嬢がおにぎりを好まれるのは珍しいですな……」

 おにぎりを振舞ってくれた司祭様が、少し驚いているような顔つきで、私がおにぎりをパクつく姿を見ていた。

「……皆おにぎりが好きじゃない……?」

 こんなに美味しいのに⁉︎

「これは……作り方が少々ーーですので特にお若い貴族階級の方々には……」

 言葉を濁しつつそう言ったのは司祭様は、そこで言葉を切り、困ったような笑みを浮かべた。

 ……作り方? おにぎり作るのに拒否するような手順ある……?

「あ、素手すでで握るからですか?」

 旧イルメラちゃんが、他人がベタベタ触った物を口に入れるなんてっ! って全力で拒絶している気がする。

「ーーご存知で?」

 司祭様がさらに驚いたように、目を見開いた。

 これは多分、作り方知らないで食べてるんだと思われてたな。

「……手で握るからおにぎりですよね?」
「そう……なのですが……」
「お気にはなりませんか?」

 隣に座って一緒におにぎりを食べていたエド様にまで確認される。

「なりませんねぇー」

 友達の中には「母親が作ったの以外ムリ」て言ってた子もいたけど、私はそこまでじゃない。
 この世界、ビニールの手袋とかなさそうだしそのあたりは平気で得したなぁー……
 ーーあ、食べられるかどうか云々って、そういう事?

「ーーそのようだな……?」

 パクパクとおにぎりを食べ続ける頬張る私を見て、エド様が苦笑しつつ言った。

 ーーやばい……久々に食べたおにぎりに、がっつきすぎたかもしれない…… 
 今からでもおちょぼ口にしたら印象変わったりするかな……?

「ーーこちらの中身……梅干しなどは、どちらでお買い求めなんですか?」

 出来るう限りお上品におにぎりを食べ終えると、どうか教えてもらえますように! と願いを込めながら司祭様にたずねた。

 多分、うちの本の中に作り方は書いてあると思うんだけど……作る手間どころか、材料を探すところから始めなきゃいけないわけで……
 ネット通販が恋しいよぅ……

「ーー梅干し……ーーご入用ですか?」

 それまでは人当たりの良さそうな、優しそうな司祭様だったが、私の質問を聞いた途端、顔をこわばらせどこか探るように質問を口にした。

 ……私、なにかしてしまいましたか……?
 ーーまさか梅干しをたかろうとしている、とか勘違いされている⁉︎
 いや、実はお米以上の超高級食材だったり⁉︎
 ーーえっイルメラ、傷だらけではあるけど、侯爵家ご令嬢の看板まだ背負しょってるけど、それでも心配になるほどお高いの⁉︎

「ーー欲しい、んですけど……その……ーーお布施的なものがですね……?」

 イルメラとなって数ヶ月……お金の話をボカすのも手馴れてきたわー。
 ーー令嬢としては、慣れるとかありえないスキルだと思うけどー。

「お布施……? ーーああ、なるほど……」

 私の質問の意図を理解した司祭様は、ふむ……と、顎に手を当ててなにかを考え込み始めた。

「ーー時にイルメラお嬢様は、名医として名高いパウロ殿のお弟子様だとか……?」
「え……? はい……そう、なりますね……?」

 かなり気を使われて、お荷物な弟子ではあるけど、私に色々教えてくれてるのは師匠なんだから、ここは胸を張ってもいいトコ……だよね?
 ……でもなんでいきなり師匠の話……?

「……そういえば、最近では新しいお弟子様の意見を取り入れ、画期的な治療法を発見されたとか……?」
「……そう、なんですか……?」

 えっなにその話⁉︎ 私聞かされてないんだけど⁉︎
 ……えっ、本当に教えられて無いの……? それとも「これ画期的なヤツだから!」とか言われず、普通に教わっちゃった感じ……⁇

「はははっ さすがに口は硬いですな」

 いや、普通に質問を返しただけだったのですが……?

 頭に手をやりつつ笑う司祭様の様子に、どう返せばいいのか分からず、エド様に視線を送り、助けを求めた。
 が、なぜかエド様まで額に手を当てていて、困惑している様子だった。

 ……えっまさか、エド様すら知らないとか無いよね……?
 だって師匠伯爵の治癒士だよ? 流石に報告上がってるでしょ⁉︎
 ねぇ、なんで頭抱えてるのっ⁉︎

「ーーでは……こちらはお嬢様のご入用のしなをご用意いたします。 その代わりーー治療をお願いしても……?」

 私たちの困惑に気がついていない司祭だけが、私たちがを知っているのに、名言を避けているのだ、と勘違いしたまま、話は進んでいく。

「ーーえっと、治療をするのはいいんですけど……その画期的な治療法は使えない……かも……?」

 助け舟を出してくれないかなー? と思いながらチラチラとエド様に視線を送るが、エド様は薄い微笑みを張り付けたお貴族様の顔で、司祭に向かい探るような視線を向けるだけだった。

 ーー少しぐらい興味持ってくれてもいいのよ……?
 あ、でもエド様だって教会に用事があったわけで、こっちの話が終わらないと、そっちの話が進まないのかも……?
 ーーそりゃ、早く終われ以外の感想ないかぁ……

「ーー口外しないと神々に誓いましょう。 あなた様にぜひ治ていただきたい方が居るのです!」

 まぁ……私で治せるなら治すけれども……ーーあれ? でも……
  
「ーー教会にも治癒士って居ます……よね……?」

 んん⁇
 そうだよ、そもそも教会って数多くの治癒士を抱えてるんだよ。
 それで、その人たちが無償でケガや病気を治して各地を回っているはずで……

 ーーえ、まさか全員出払っている……?

「ーー教会にも、色々とございますれば……」

 私の呟きに、司祭は自嘲気味な表情を浮かべて、肩をすくめつつ言った。

「あー……?」

 この感じは……権力争い、とかいうやつ……かな?

 聖職者なんじゃ無いの……? とも思うけど、階級が存在する組織の中で、その席に限りがあるなら、競争や争いが起こらないわけがないよねー……

 聖職者だって綺麗事じゃ無いんだろう……
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

『婚約破棄された令嬢ですが、王国は私抜きでは立てなかったようですね』

鷹 綾
恋愛
「愛しているのは彼女だ」 王太子ロネスにそう告げられ、婚約を破棄された侯爵令嬢エルゼリア・クローヴェル。 感情をぶつけることも、復讐を誓うこともなく、 彼女はただ――王宮を去った。 しかしその直後から、王国は静かに崩れ始める。 外交は滞り、判断は遅れ、市場は揺れ、 かつて「問題なく回っていた」はずの政務が、次々と行き詰まっていった。 一方、エルゼリアは帝国で新たな立場を得ていた。 帝国宰相ハインリヒ・ヴォルフの隣で、 彼女は再び“判断する側”として歩み始める。 やがて明らかになるのは、 王国が失ったのは「婚約者」ではなく、 判断を引き継ぐ仕組みそのものだったという事実。 謝罪も、復縁も、感情的なざまあもない。 それでも―― 選ばれ、認められ、引き継がれていくのは、誰なのか。 これは、 捨てられた令嬢が声を荒げることなく、 世界のほうが彼女を必要としてしまった物語。

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

ある公爵令嬢の死に様

鈴木 桜
恋愛
彼女は生まれた時から死ぬことが決まっていた。 まもなく迎える18歳の誕生日、国を守るために神にささげられる生贄となる。 だが、彼女は言った。 「私は、死にたくないの。 ──悪いけど、付き合ってもらうわよ」 かくして始まった、強引で無茶な逃亡劇。 生真面目な騎士と、死にたくない令嬢が、少しずつ心を通わせながら 自分たちの運命と世界の秘密に向き合っていく──。

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

処理中です...