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そんなことを思いつつ、すぐに襲ってくるはずの衝撃にギュッと身を固くした。
床に倒れこむその瞬間、なにかが肩と頭に触れた気がした。
「え……?」
……抱きしめられている……?
襲ってくるはずの衝撃も無ければ、痛みも無く、ソロリ……と目を開けると、そこには、呆れたような顔でこちらを見ているエド様の顔面があった。
「ーー貴女は……」
「ぅぇ……っ⁉︎」
超至近距離にあるエド様のお顔に、私の喉から奇妙な音が漏れ出た。
ーー眉間のシワも薄くなったし、クマも消えてお肌ツルピカ……ーーグッジョブ私だけど、こんなにイケメンだと正気を保てないのですか⁉︎
「魔力のほとんどを使い切り、あれだけ急に動けば目眩も起こるっ! だからこそ貴族の令嬢は魔力切れを起こすほど魔法を使ってはいけないんだっ‼︎」
「…………はつみみ」
ーーあ、人前で使うなって言われてたのって、そんな理由があったからなんだ……?
「ーー……以後、肝に命じてください」
私の答えに、グググッと奥歯を噛み締めて何かを我慢したエド様は、ゆっくりと口を開くと、小さな子供に言い聞かせるかのように言った。
「了解です……」
その威圧感に思わず頷きながら返事をしたが、呂律はろくに回らず、軽く頷いたはずの頭も自分の頭だということを疑うほどズシリと重たかった。
「アルバ枢機卿! 目が……お目覚めなのですか⁉︎」
エド様の手を借りつつ、ゆっくりと体を起こしていると、アルバ枢機卿の意識が戻ったらしく、司祭がベッドの側で熱心に話しかけていた。
「ーーこんなに清々しい目覚めは久しぶりだ……」
「枢機卿……良かった……」
「……ーーすまないが、水を」
「ーーっはい……はいっ!」
司祭は涙を堪え、グズグズと鼻を鳴らしながら枢機卿の世話を焼き始める。
そんな会話を横目に、私はエド様に抱えられるようにしてなんとか立ち上がる。
ーー抱きしめられたと思えればトキメキもするんだろうけど……確実に介護のそれなんだよなぁ……
魔力が切れるとこんなことになるのか……ーーこれは皆が魔力温存するわけだわー……魔力が切れた治癒師なんて、文字通りお荷物でしか無いぞ……?
立ち上がったあともエド様が支えていてくれるのに甘て、そのまま差し出された手を握りしめ続ける。
ーーゆっくりとなら一人でも歩けそうだったけど、バランス崩したら危ないから。 念のためにね?
それにご令嬢的には、人前で倒れるのとか、お恥ずかしい事だから!
イルメラ貴族だから仕方がないよ‼︎
……相手が介護認識だって構わない。
ファンサは思い込みだって誰かが言ってた!
ーーそれに真剣な話、今回の件は原因を作った教会も、私をエスコート中のエド様にも原因の一端が無いとも言い切れないわけで……
私は文句なんて言わないけど、エド様からしたら“ちゃんとエスコートしてましたから”って空気は絶対に出しておきたいんだと思うんだよねー。
「あっ……イルメラ様……ご気分は、その……」
ようやく私の存在を思い出した司祭は、気まずそうな顔をしながらたずねる。
「大丈夫ですよー」
きっとこの司祭にとってアルバ枢機卿はとても大切な人なんだろう。
大切な人の病気がようやく治って、意識まで取り戻したんだもん、そりゃその他のことなんて忘れちゃうよねー……
ーー大丈夫イルメラちゃんと分かってるよ?
気になんてしてないから。
本当、全然してないから。
「ーーそちらは?」
アルバ枢機卿がゆっくりと顔をこちらに向けて司祭にたずねる。
「こちらはベラルディ侯爵家ご令嬢、イルメラ様です」
「侯爵家の……?」
その紹介にアルバ枢機卿は、だいぶ困惑を含んだ顔つきで司祭様にたずね返した。
「ーー……私、まだかろうじてその括りに入ってますよね……?」
「ーーその確認では無い。 今の君の格好はシスターにしか見えない。 ……それに貴族のご令嬢が本当に、見ず知らずの他人のために力を使ったのか? という確認も含まれているのだろう」
「あ、そういう……?」
「……べラルディ侯爵家、イルメラ様でございます」
私たちの会話を横目に、司祭が念を押すように、もう一度私の紹介をした。
なんでや。 アルバ枢機卿は疑って無いんだよって話を今していたところだっただろうが。
「ーー貴女が治療を……?」
そう言いながら起きあがろうとする枢機卿をジェスチャーで止めつつ、口を開く。
「はい、無事に治せて良かったです」
「ーーなんと慈悲深い……ーー貴女はのようなお優しい方を私は他に知りません」
うっすらと涙を浮かべつつ、大袈裟にお礼を言ってくれる枢機卿に、気恥ずかしくなり、キョドキョドと視線をさまよわせながら慌てたように答える。
「そんな、やめてくださいっ! 私はおにぎりが食べたかっただけなんです‼︎」
「ーーおに……?」
キョトンとしたアルバ枢機卿の呟きと共に、耳元から「はあぁー……」と、いう大きなため息が聞こえてきた。
チラリとそちらに視線を送ると、片手で額を頭を押さえながら首を横に振っていた。
ーーどうして私の口はこうもお嬢様でいてくれないのかと……
お嬢様は咄嗟におにぎりの話とか出さないんだって!
「ーー……私の力が多少なりともお役に立てたのであれば、嬉しく存じます」
今からでもどうにかならないかと、すまし顔で取り繕ってみる。
「……なかなかに個性的なお嬢様のようで……?」
困惑したようなアルバ枢機卿の言葉に、ムダな抵抗だったことを悟ったのだった……
床に倒れこむその瞬間、なにかが肩と頭に触れた気がした。
「え……?」
……抱きしめられている……?
襲ってくるはずの衝撃も無ければ、痛みも無く、ソロリ……と目を開けると、そこには、呆れたような顔でこちらを見ているエド様の顔面があった。
「ーー貴女は……」
「ぅぇ……っ⁉︎」
超至近距離にあるエド様のお顔に、私の喉から奇妙な音が漏れ出た。
ーー眉間のシワも薄くなったし、クマも消えてお肌ツルピカ……ーーグッジョブ私だけど、こんなにイケメンだと正気を保てないのですか⁉︎
「魔力のほとんどを使い切り、あれだけ急に動けば目眩も起こるっ! だからこそ貴族の令嬢は魔力切れを起こすほど魔法を使ってはいけないんだっ‼︎」
「…………はつみみ」
ーーあ、人前で使うなって言われてたのって、そんな理由があったからなんだ……?
「ーー……以後、肝に命じてください」
私の答えに、グググッと奥歯を噛み締めて何かを我慢したエド様は、ゆっくりと口を開くと、小さな子供に言い聞かせるかのように言った。
「了解です……」
その威圧感に思わず頷きながら返事をしたが、呂律はろくに回らず、軽く頷いたはずの頭も自分の頭だということを疑うほどズシリと重たかった。
「アルバ枢機卿! 目が……お目覚めなのですか⁉︎」
エド様の手を借りつつ、ゆっくりと体を起こしていると、アルバ枢機卿の意識が戻ったらしく、司祭がベッドの側で熱心に話しかけていた。
「ーーこんなに清々しい目覚めは久しぶりだ……」
「枢機卿……良かった……」
「……ーーすまないが、水を」
「ーーっはい……はいっ!」
司祭は涙を堪え、グズグズと鼻を鳴らしながら枢機卿の世話を焼き始める。
そんな会話を横目に、私はエド様に抱えられるようにしてなんとか立ち上がる。
ーー抱きしめられたと思えればトキメキもするんだろうけど……確実に介護のそれなんだよなぁ……
魔力が切れるとこんなことになるのか……ーーこれは皆が魔力温存するわけだわー……魔力が切れた治癒師なんて、文字通りお荷物でしか無いぞ……?
立ち上がったあともエド様が支えていてくれるのに甘て、そのまま差し出された手を握りしめ続ける。
ーーゆっくりとなら一人でも歩けそうだったけど、バランス崩したら危ないから。 念のためにね?
それにご令嬢的には、人前で倒れるのとか、お恥ずかしい事だから!
イルメラ貴族だから仕方がないよ‼︎
……相手が介護認識だって構わない。
ファンサは思い込みだって誰かが言ってた!
ーーそれに真剣な話、今回の件は原因を作った教会も、私をエスコート中のエド様にも原因の一端が無いとも言い切れないわけで……
私は文句なんて言わないけど、エド様からしたら“ちゃんとエスコートしてましたから”って空気は絶対に出しておきたいんだと思うんだよねー。
「あっ……イルメラ様……ご気分は、その……」
ようやく私の存在を思い出した司祭は、気まずそうな顔をしながらたずねる。
「大丈夫ですよー」
きっとこの司祭にとってアルバ枢機卿はとても大切な人なんだろう。
大切な人の病気がようやく治って、意識まで取り戻したんだもん、そりゃその他のことなんて忘れちゃうよねー……
ーー大丈夫イルメラちゃんと分かってるよ?
気になんてしてないから。
本当、全然してないから。
「ーーそちらは?」
アルバ枢機卿がゆっくりと顔をこちらに向けて司祭にたずねる。
「こちらはベラルディ侯爵家ご令嬢、イルメラ様です」
「侯爵家の……?」
その紹介にアルバ枢機卿は、だいぶ困惑を含んだ顔つきで司祭様にたずね返した。
「ーー……私、まだかろうじてその括りに入ってますよね……?」
「ーーその確認では無い。 今の君の格好はシスターにしか見えない。 ……それに貴族のご令嬢が本当に、見ず知らずの他人のために力を使ったのか? という確認も含まれているのだろう」
「あ、そういう……?」
「……べラルディ侯爵家、イルメラ様でございます」
私たちの会話を横目に、司祭が念を押すように、もう一度私の紹介をした。
なんでや。 アルバ枢機卿は疑って無いんだよって話を今していたところだっただろうが。
「ーー貴女が治療を……?」
そう言いながら起きあがろうとする枢機卿をジェスチャーで止めつつ、口を開く。
「はい、無事に治せて良かったです」
「ーーなんと慈悲深い……ーー貴女はのようなお優しい方を私は他に知りません」
うっすらと涙を浮かべつつ、大袈裟にお礼を言ってくれる枢機卿に、気恥ずかしくなり、キョドキョドと視線をさまよわせながら慌てたように答える。
「そんな、やめてくださいっ! 私はおにぎりが食べたかっただけなんです‼︎」
「ーーおに……?」
キョトンとしたアルバ枢機卿の呟きと共に、耳元から「はあぁー……」と、いう大きなため息が聞こえてきた。
チラリとそちらに視線を送ると、片手で額を頭を押さえながら首を横に振っていた。
ーーどうして私の口はこうもお嬢様でいてくれないのかと……
お嬢様は咄嗟におにぎりの話とか出さないんだって!
「ーー……私の力が多少なりともお役に立てたのであれば、嬉しく存じます」
今からでもどうにかならないかと、すまし顔で取り繕ってみる。
「……なかなかに個性的なお嬢様のようで……?」
困惑したようなアルバ枢機卿の言葉に、ムダな抵抗だったことを悟ったのだった……
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