【完結】回復魔法だけでも幸せになれますか?

笹乃笹世

文字の大きさ
42 / 48

42

しおりを挟む
 魔力の暴走が治ると共に、旧イルメラの意識もシュルシュルと萎んでいった。
 それを少しだけ寂しく感じていると、屋敷の方が急に騒がしくなった。

「ーーモナ⁉︎ モナしっかりしてっ⁉︎」
「モナ……⁇」

 聞き覚えのある名前に、ふらり……と無意識のうちに屋敷へと足を進めていた。
「屋敷の方へ行っていなさい」そう声をかけた女の子がモナという名前だということを思い出していたーー

 そして見えてきた人垣の隙間から、人可愛らしい小さな手が見えた瞬間、私は弾かれたかのように走り出した。

「ーーっ⁉︎ どいてっ‼︎」

 人々をかき分けて、女性の腕の中にいたモナに駆け寄る。
 一体なにがあったのか、モナの意識は無く、身体はガタガタと痙攣けいれんしていていた。

 アイツらこんな小さな子に何をしたのよ⁉︎
 怒りに震えながらもモナの身体を確認するがーーハッキリした原因が分からない。
 おそらく頭を打ったせいだと思うけど、それ以外の場合も十分に考えられる……ーーハッキリしないんだったらさっさと全身治す‼︎
 自分に喝を入れるように、グッと手を握り締め、気合を入れ直すと素早く魔法をかけていく。

 ーー全部に治せばいいんだよっ! モナがけんこうになればいいんだからっ‼︎

「ーーぁ……」

 回復魔法をかけ始め、しばらく経つと、モナがフッ……と目を開けた。
 すでに痙攣もなく、顔色に赤みも戻って来ている。 ーーあとは魔力の押し返しがくれば……ーーあ、来た!

「ねぇ……ちゃま……」
「ーーもう大丈夫だよ。 もうどこも痛くないでしょう?」

 そう言って、安心させるように優しく髪をすいていく。

「う……うぁ、あああっ!」

 元気になったモナは、その安心感からか怖かった時のことを思い出したのか、火がついたように大きな声を上げて泣き出した。

 ーーでも、これだけ大きな声が出せるならもう安心だね。

「……姉様ここ痛いの……」

 もうモナは平気なのだと理解したのか、モナ一緒に遊んでいた男の子が、甘えるように自分の手のひらを見せながら近寄って来た。
 ズボンの膝あたりに泥がついているので、転んでしまったのかもしれない。

「あらら……」

 そう言って少し血の滲んだ手を握り回復魔法をかけた。 元気よく押し戻しが返ってきたので、この子はいたって健康なようだ。

  それをきっかけに、様子を伺っていた子供たちがわらわらと寄ってきて、次第に大人たちが混じり始めた。

「はいはい、順番に見ますからねー。 ちゃんと全員直しますのでー」

 ーーさっき暴走させたから、過去一かこいち魔力の残量が不安だけどー。
 ……次からは無駄にしないように気をつけよ。

「ーーな、なんですのっ⁉︎ あんなにちからを見せびらかしてっ‼︎ なんてはしたない!」

 遠くの方でレベッカがムカつくことをわめいている気がする……

「ーー黙れ」

 治療を続けながらも、チラリと視線を送ると、怒りのオーラを纏ったエド様がレベッカを睨みつけていた。

「……エド、アルド様……?」
「ーー誰のせいでっ‼︎ ……君が傷つけた者たちのほとんどが、我が領の民であることを忘れるなよ……?」
「あ……あの、それはっ!」

 再びエド様に近づこうとしたレベッカだったが、再び兵士たちに止められ、その兵士たちを睨みつけている。

 ーーいや、他領に兵士を連れ込んだ挙句、それを領主が「許さないって」明言しちゃったんだから、もう貴女の出来ることは、身を小さくして存在感を殺すか、平謝りかのどちらかなのよ……?

 ーーでも、貴女がヘタを打ってくれたおかげで、エド様が怒ってくれて、ちょっとスッとしたわー……

 いくら頭に来たからって、こんなに大勢のケガ人放っておいたーーなんて、師匠の耳に入ったら、冗談抜きで本当にペンペンされてしまうかもしれない……!

「皆さん大丈夫ですかー? 周りに歩けないほどの重傷者や気分が悪そうにしている人はいませんかー⁇ 遠慮しないでどんどん声かけてくださいねー」

 そう言いながら、ジーノさんたちと一緒に庭の中を巡り歩く。

 ーー大切なお客さまたちだ。 ちゃんと守れず怖い思いをさせてしまったが、せめて健康な状態でもお帰りいただきたい……

 ーーだから今日は褒めても追加は無しだってば!
 ……え、さっきは本物のお嬢様みたいだったって?
 えっ、カッコよかった⁇ 憧れちゃう⁉︎

 ……ーーんもぉー、しょうがないなぁー。 ちょっとだけだよぉー?
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

『婚約破棄された令嬢ですが、王国は私抜きでは立てなかったようですね』

鷹 綾
恋愛
「愛しているのは彼女だ」 王太子ロネスにそう告げられ、婚約を破棄された侯爵令嬢エルゼリア・クローヴェル。 感情をぶつけることも、復讐を誓うこともなく、 彼女はただ――王宮を去った。 しかしその直後から、王国は静かに崩れ始める。 外交は滞り、判断は遅れ、市場は揺れ、 かつて「問題なく回っていた」はずの政務が、次々と行き詰まっていった。 一方、エルゼリアは帝国で新たな立場を得ていた。 帝国宰相ハインリヒ・ヴォルフの隣で、 彼女は再び“判断する側”として歩み始める。 やがて明らかになるのは、 王国が失ったのは「婚約者」ではなく、 判断を引き継ぐ仕組みそのものだったという事実。 謝罪も、復縁も、感情的なざまあもない。 それでも―― 選ばれ、認められ、引き継がれていくのは、誰なのか。 これは、 捨てられた令嬢が声を荒げることなく、 世界のほうが彼女を必要としてしまった物語。

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

ある公爵令嬢の死に様

鈴木 桜
恋愛
彼女は生まれた時から死ぬことが決まっていた。 まもなく迎える18歳の誕生日、国を守るために神にささげられる生贄となる。 だが、彼女は言った。 「私は、死にたくないの。 ──悪いけど、付き合ってもらうわよ」 かくして始まった、強引で無茶な逃亡劇。 生真面目な騎士と、死にたくない令嬢が、少しずつ心を通わせながら 自分たちの運命と世界の秘密に向き合っていく──。

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

処理中です...