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「誠に! 申し開きもっ‼︎」
土下座せんばかりの勢いで、ソファーに座っているインザーギ男爵家の使者が深々と頭を下げた。
ーーその隣に座っているはずのレベッカ嬢は、急遽体調を崩したとかでご欠席なさっている。
ーーあれだけやって頭下げて謝るつもりもないとか、ちょっと舐められすぎじゃない……?
「ーー……そうですか」
ため息混じりに投げやりな返事を返す。
そんな私を気づかうように、隣りに座っていたエド様がこちらを見つめているのが分かった。
私は少しだけ笑って肩をすくめて見せる。
本日のエド様は立会人という立場だ。
これは謝罪の場ーーになるはずだったーーからね、謝った謝ってない、言った言ってない、なんて齟齬があっては意味がない。
それを防ぐために立会人として立候補して来れたんだけど……ーーえ、まさかあの女、体調不良でゴリ押しして謝らずに終わらせるつもりか……?
「どうかっ! どうかお許しをっ‼︎ もちろん後日改めて謝罪に伺わせていただきますので! この通りでございますっ‼︎」
やらかしたことの謝罪に来られなかったことに対する謝罪を受けるハメになるとはね……
私は必死に謝り続ける使者から視線を外すと、コッソリため息をつきながら、お茶のカップを手に取った。
私用のハチミツがたっぷり入った甘い紅茶。 ハチミツのいい匂いがささくれ立った心を少しだけ癒してくれる気がした。
唇を湿らせる程度にお茶を楽しんでいるとその視界に、顔色を悪くしながら壁際に立っているモンティー商会のご夫婦が映る。
「えっと……まぁ……きちんと謝ってもらえるならば今日でなくても……その、せっかくご足労いただいた伯爵には申し訳ございませんが……」
「お気になさらず……」
私の言葉にエド様が答え、使者は今度はエド様に向かって謝り始めた。
ーーあの女絶対に許さん、マジぶっ潰す! と心に誓っていたワタクシですが……
ーーフタを開けてみれば、私に出来ることなどたかが知れていた……
そもそも、家と家の話し合いになるなら、私とインザーギ家が交渉することなどあり得ない。
ーーいくら被害者が私であろうとも、私は一令嬢に過ぎず、当主はあくまでも父なのだから。
ーーあの野郎、当然のように私抜きで話まとめやがって……!
ーーがめつくていらっしゃるからっ……‼︎
バジーレ家やインザーギ家は森に面した領土を持っている。
つまり定期的に森の魔獣たちを間引く役目を担っているーー
父の目当ては、その魔獣から取れる素材たちだ。 ものによってば莫大な利益になるらしいからねー。
ーーその素材と引き換えに、娘が暮らす屋敷に兵士を突撃させた娘の実家を不問にふした。
……魔獣はとてもお金になる。
ただ、娘はとても怖い思いをしましたけれどねー⁉︎
本当! お父様ってば金の亡者でいらっしゃるからっ‼︎
ーーお父様の独断により、危うくそのまま終わらせられそうになった今回の一件だったが、お母様やお婆様に「悲しくて化粧品たちが作れない……」と、脅しーー……嘆きの手紙を出したり、ジーノさんがアルバ枢機卿に相談してくれたりとした結果、家と家のやりとりは当主のお役目として、しかしそれとは別に、当人同士の決着も必要であろうーーというアルバ枢機卿のご意見が採用されるに至ったのだったーー
そもそもバジール家とインザーギ家は、元々軍事同盟を結んでいるほど繋がりの強い家同士であり、その家が取り潰されるとバジーレ家としても面白くない事態になる。
貴族はこういった同盟や派閥などを蔑ろにする貴族を嫌う。
今回のケースが同盟を切るに値することかどうかは微妙なところだ……襲撃を受けたベラルディ家がすで男爵家と話を付けてるから余計に。
ーーそれにバジーレ家としては、当然未来のリスクも考えなくてはいけない。
仮にインザーギ家を取り潰したとして、あとに入る家がすんなりと仲良くしてくれる保証など無いし、どこかの有力貴族の紐付きだと、扱いが厄介になりすぎるからだ。
……今回の襲撃は、あくまでもレベッカ嬢の独断と決まった以上、バジーレ家もインザーギ家と争うのは好ましくはないーー
どれだけ疑惑に塗れていようと、ハッキリとした証拠がないなら不満は押し殺すしか無いのだ……
ーーって言っても、世間はエド様に同情的だし、周辺の貴族だってそんな暴走娘を抱える家と仲良くするわけもない……
多分、ある程度お父様が搾り取ったら、バジーレ伯爵家が様々な援助をして、男爵家の領土を吸収することになるんだろうなー……
ーー取り潰されなかっただけマシ、程度の結果になりそうだねー。
おそらく、エド様としては今後のリスクも加味しての判断なんだろう。 あとに入ってくる家がすんなり仲良くしてくれる保証なんて無いし、どこかの有力貴族の紐付きだと、扱いが厄介になりすぎるからね。
土下座せんばかりの勢いで、ソファーに座っているインザーギ男爵家の使者が深々と頭を下げた。
ーーその隣に座っているはずのレベッカ嬢は、急遽体調を崩したとかでご欠席なさっている。
ーーあれだけやって頭下げて謝るつもりもないとか、ちょっと舐められすぎじゃない……?
「ーー……そうですか」
ため息混じりに投げやりな返事を返す。
そんな私を気づかうように、隣りに座っていたエド様がこちらを見つめているのが分かった。
私は少しだけ笑って肩をすくめて見せる。
本日のエド様は立会人という立場だ。
これは謝罪の場ーーになるはずだったーーからね、謝った謝ってない、言った言ってない、なんて齟齬があっては意味がない。
それを防ぐために立会人として立候補して来れたんだけど……ーーえ、まさかあの女、体調不良でゴリ押しして謝らずに終わらせるつもりか……?
「どうかっ! どうかお許しをっ‼︎ もちろん後日改めて謝罪に伺わせていただきますので! この通りでございますっ‼︎」
やらかしたことの謝罪に来られなかったことに対する謝罪を受けるハメになるとはね……
私は必死に謝り続ける使者から視線を外すと、コッソリため息をつきながら、お茶のカップを手に取った。
私用のハチミツがたっぷり入った甘い紅茶。 ハチミツのいい匂いがささくれ立った心を少しだけ癒してくれる気がした。
唇を湿らせる程度にお茶を楽しんでいるとその視界に、顔色を悪くしながら壁際に立っているモンティー商会のご夫婦が映る。
「えっと……まぁ……きちんと謝ってもらえるならば今日でなくても……その、せっかくご足労いただいた伯爵には申し訳ございませんが……」
「お気になさらず……」
私の言葉にエド様が答え、使者は今度はエド様に向かって謝り始めた。
ーーあの女絶対に許さん、マジぶっ潰す! と心に誓っていたワタクシですが……
ーーフタを開けてみれば、私に出来ることなどたかが知れていた……
そもそも、家と家の話し合いになるなら、私とインザーギ家が交渉することなどあり得ない。
ーーいくら被害者が私であろうとも、私は一令嬢に過ぎず、当主はあくまでも父なのだから。
ーーあの野郎、当然のように私抜きで話まとめやがって……!
ーーがめつくていらっしゃるからっ……‼︎
バジーレ家やインザーギ家は森に面した領土を持っている。
つまり定期的に森の魔獣たちを間引く役目を担っているーー
父の目当ては、その魔獣から取れる素材たちだ。 ものによってば莫大な利益になるらしいからねー。
ーーその素材と引き換えに、娘が暮らす屋敷に兵士を突撃させた娘の実家を不問にふした。
……魔獣はとてもお金になる。
ただ、娘はとても怖い思いをしましたけれどねー⁉︎
本当! お父様ってば金の亡者でいらっしゃるからっ‼︎
ーーお父様の独断により、危うくそのまま終わらせられそうになった今回の一件だったが、お母様やお婆様に「悲しくて化粧品たちが作れない……」と、脅しーー……嘆きの手紙を出したり、ジーノさんがアルバ枢機卿に相談してくれたりとした結果、家と家のやりとりは当主のお役目として、しかしそれとは別に、当人同士の決着も必要であろうーーというアルバ枢機卿のご意見が採用されるに至ったのだったーー
そもそもバジール家とインザーギ家は、元々軍事同盟を結んでいるほど繋がりの強い家同士であり、その家が取り潰されるとバジーレ家としても面白くない事態になる。
貴族はこういった同盟や派閥などを蔑ろにする貴族を嫌う。
今回のケースが同盟を切るに値することかどうかは微妙なところだ……襲撃を受けたベラルディ家がすで男爵家と話を付けてるから余計に。
ーーそれにバジーレ家としては、当然未来のリスクも考えなくてはいけない。
仮にインザーギ家を取り潰したとして、あとに入る家がすんなりと仲良くしてくれる保証など無いし、どこかの有力貴族の紐付きだと、扱いが厄介になりすぎるからだ。
……今回の襲撃は、あくまでもレベッカ嬢の独断と決まった以上、バジーレ家もインザーギ家と争うのは好ましくはないーー
どれだけ疑惑に塗れていようと、ハッキリとした証拠がないなら不満は押し殺すしか無いのだ……
ーーって言っても、世間はエド様に同情的だし、周辺の貴族だってそんな暴走娘を抱える家と仲良くするわけもない……
多分、ある程度お父様が搾り取ったら、バジーレ伯爵家が様々な援助をして、男爵家の領土を吸収することになるんだろうなー……
ーー取り潰されなかっただけマシ、程度の結果になりそうだねー。
おそらく、エド様としては今後のリスクも加味しての判断なんだろう。 あとに入ってくる家がすんなり仲良くしてくれる保証なんて無いし、どこかの有力貴族の紐付きだと、扱いが厄介になりすぎるからね。
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