【完結】回復魔法だけでも幸せになれますか?

笹乃笹世

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    ーーそして、私にとって頭の痛い問題が一つ。
 再び壁際のモンティー商会のご夫婦に視線を送った。
 相変わらず気の毒になる程真っ青な顔でギュッと手を握りしめ、ジッと床を見つめていた。

 私の頭痛の原因はこのご夫妻ーー娘さんだ。
 名前をエミリーと言い、なんとレベッカ嬢の侍女として貴族学院に入学することが内定していたお嬢さんだった……

 貴族学院とは、その名の通り基本的に貴族階級の者しか入学許可が出ない。
 例外は、一般試験をものすごい好成績を収めた者か、もしくは貴族の侍女従者として共に入学する者に限られるーー

  つまりあの女が学校に行かないイコール、エミリーちゃんも学校に行けない。

 ーーさらには事情は複雑で……
 今回の事件、そもそもの原因がエミリーちゃんにもあるようなのだ……
 このエミリーちゃん、あの女の侍女として学院に通うために、今はインザーギ男爵家でマナーなどの猛特訓中だったらしい。

 だからこそ、私の事情をよく知らなかったのだ。
 エミリーちゃんからしたら、王都から近所に引っ越して来た、古くてボロい屋敷に住んで、魔法が使えるから騎士団で働いている女ーーぐらいの認識だったとか。

 この話や、最近家で取り扱うようになった化粧水や乳液の権利を持っている、という話を、お茶会での話題の一つとして披露したーーそれが全ての始まりだった。

 元々エド様の妻の座を望んでいたレベッカは、その話を聞いて私が教会の独占品に手を出した罪人だと思い込んだらしい。
 教会の力が強いこの国では、教会の不利益になるようなことをすると、程度によっては極刑すらもありえる。
 ーーのだが、それはあくまでも正式な手順を踏み、その土地の領主や代行人が裁くべきことなわけで……

 今回のように「エドアルド様の領で犯罪を犯している女がいるの⁉︎ 私がなんとかしてあげなくっちゃ‼︎ ほら見てエドアルド様! 私ってばこんなに有能‼︎」とかいう私欲しよくまみれた動機で私刑など、貴族だったとしても許されない。

 ーーま、私としては、向こうの言い分の「親兄弟にも内緒で兵士を動かしてしまいました……」の段階から疑ってるから、絶対に誰かにそそのかされたんだと思ってるけどねー。
 ……だって、あいつあれでも男爵家のご令嬢よ?
 世間の評判的には、婚約破棄された私なんかよりも、お綺麗な経歴を持つ嫁入り前のお嬢様よ⁇

 そんな自由に動けないでしょー?
 ましてや侍女の一人も付けずに外出なんて許されないよー⁇

 ーー結婚直前に婚約破棄でもくらってるならともかく……ーー別に悲しくなんかねぇし!
 こちとら行き帰りもイケメンと二人きりのドキドキ空間堪能してんだからっ‼︎
 ……ーー多分、向こうは接待だろうけどー。

 ーーまぁ、その辺は置いておいて……

 私は現在、あの女を修道院に送り込む権利を得ている。
 ーーというか、ジーノさんたちやエド様たちは私がそうするだろうと予測していると思う。

 のだが……それをやるとエミリーちゃんが学院に通えなくなってしまうということなわけで……
 ーー私、ここに住み初めてからまだ一年も経って無いのに、しがらみで身動き取れなくなってるでやんのよ……

 私の本心としては、やっぱりあの女は嫌いだ。
 是非とも修道院に入っていただきたいところだが……
 ーーモンティー商会との関係維持のため、エミリーちゃんは学院に行かせてあげたい気持ちもあるにはある……

 ーー私の中のイルメラちんがめっちゃ怒り狂っているのが分かる……
 そうだよねー? こっちはジーノさんたちやお客様傷付けられてるのに……ーー?

 その瞬間思いついた復讐案を、心の中でイルメラちゃんと検討し合う。

(ーー悪くないように思いますわ)
(だよね⁉︎ お母様たちのあの感じ、流行遅れって結構恥ずかしいよね⁉︎)
(しかも自分付きの侍女の実家が発売元ともなれば……流行が理解出来ないと笑い者になりそうねぇ……?)
(うわぁ……ただでさえ国境近くで田舎者扱いされそうなのに……)
(ーーお気の毒だこと……)
(もう一つの案はどう?)
(……わたくしだったら……修道院に入るほうがマシだと感じるわ。 ーーあの愚かな常識知らずがどう思うかは置いといて……)
(ふふっイルメラがそう感じるなら、きっといいダメージ受けて来れそう!)
(……貴女だってイルメラでしょ)
(……そう、だね……? ーー……そうだよね、イルメラは私たちの名前だよね!)
(ーー変な子)

 ふふふっと自分の笑い声が聞こえた気がして、くすぐったいような居心地の悪さを感じたーー
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