魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

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第4話 初戦闘

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 剣を抜き、「うぉぉぉっ!」という雄叫び… とは名前だけの「うわぁぁっ!」との細い声を上げながら俺はゴブリン達に突進した。
 俺の姿を見てゴブリン達は気だるそうに、俺を迎え撃つべく散開する。さっきの槍使いを倒した様に、どんな達人であろうと後ろから刺されたら終わりである事をよく知っている風だ。

 一応槍使いが倒したのだろう、ゴブリンの死体が4、5匹転がっている。それでもざっと見て10匹くらい残っている。
 俺とゴブリンは異種族だが、はっきりと分かる。奴らは『新しい鴨がネギ背負ってやってきやがった』って感じの下卑た顔でニヤニヤしてやがる。

 クラスの奴らにイジメを受けていた頃は抗う術が無かった。下手に反撃しても何倍にしてやり返されるし、『殺される訳でも無いし、じっと耐えていればやり過ごせるだろう』とも思っていた。まぁ殺されたけどね。

 目の前のゴブリンどもは、それぞれナイフや棍棒を握って俺に打ち込む気満々だ。それこそ無抵抗なら即座に殺されてしまうだろう。
 でも今の俺には武器がある。この聖剣とやらならば、ゴブリンなんぞに遅れを取ることは無いはずだ。

 俺への包囲が完成し、必勝の陣を作り上げたゴブリンは嬉しそうに突撃の雄叫びを上げた。
『こんな時にどうすれば良いのか?』実戦の経験の無い俺でも頭の中に最適解が浮かんでくる。これがこの聖剣の力なのだろう。

 俺はその場で手にした剣を野球のバットを振り回す要領で120cmくらいの高さで薙いで360度回転させた。
 手にした聖剣の刃渡りは実質1mも無い。しかしゴブリンを薙ぎ払った時の射程は10m近くあったようだ。

 全周から俺に襲い掛かろうとしていたゴブリンたちは漏れ無く首から上が切断されて、首から赤い血を吹き出しながらほぼ同時に倒れていった。

 これが聖剣の力か……。

 実はゴブリンはまだ残っている。俺の登場にも関心を示さずに女を襲う事を優先していた奴が1匹いたのだ。
 恐らくは群れのボスなのだろう。戦利品である女を最初に『味見』するべく、女の服を剥ぎ取る事に執心していた。

 俺に襲い掛かろうとしていたゴブリン達の声が一斉に途切れた事に気付いて、女を襲う手を止めて振り向いた頃にはもう遅い。
 俺はボスゴブリンの真後ろで剣を構え、奴が叫び声を上げようと口を大きく開けたタイミングで奴の口に聖剣を挿し込んでやった。

 剣はボスゴブリンの喉元から延髄を通り抜けて首を貫通した。大きく見開かれたボスゴブリンの怒りと恐怖に満ちた目が即座に光を失って白目を剥く。

『殺した』

 蚊やゴキブリ、アリみたいな虫よりも大きな生き物、人型の感情や言葉を持つ相手を初めて殺した。
 襲われている人を助けるためとは言え、俺は10匹のゴブリンを殺した……。

 罪悪感は無い。むしろ人助けをしたのだから良い事をしたと思っている。
 しかしこの気持ち悪さは何だろう? 『死』という物を初めて身近に感じて、俺の中の『生』の部分が拒絶反応を起こしている、そんな感じだ。
 ただただ気持ち悪い。死体に囲まれて血にまみれて、俺は必死に己の中の不快感と戦っていた。

『ガサッ』

 近くで起きた物音に意識を向ける。死体に囲まれたこの場所で、『生』有るものが俺の他にもいた事を失念していた。

「…………」

 ゴブリンに襲われていた女だ。無言のまま立ち尽くしていた俺を、何か理解の出来ない化け物か何かを見るような目で見ている。
 
 女と目が合う。彼女は年の頃は20歳前後かな? 縮れた赤毛の裕福そうな垢抜けた感じの娘だった。衣服の大半は剥ぎ取られ、簡素な下着くらいしか身に着けている物はない。逆に言えば下着が残っているという事は、ゴブリンの魔の手からはギリギリ救い出せたという事だ。

「大丈夫か…?」

 俺は剣を鞘に仕舞い彼女に一歩踏み出す。その動きを見た彼女は怯えた顔のまま頭を抱え込み体を丸くしてうずくまってしまった。

「いやぁっ!! 殺さないで、殺さないで、お願い助けて…」

 念仏の様に「殺さないで」と何回も唱えている。
 あー、多分俺のこともゴブリンの仲間に見えてるのかな? 確かに俺はクラスの中でも背は低いけどさ、いくらなんでもゴブリンよりは頭一つ大きいよ?

「あ、あの… お姉さん? 俺は別にアンタを殺したりするつもりは…」

「いやぁっ! いやぁっ! いやぁっ!!」

 駄目だ、錯乱していて全く話が通じない。このまま無視して先に進んじゃおうかな…?
 いやいや、まだ周りにゴブリンの残党がいるかも知れないし、この人が正気に戻ればこの世界の事も色々聞けるかも知れない。馬車の持ち主の縁者ならば、それなりの謝礼を期待出来るかも知れないしね。

「ちょっと、とにかく落ち着いてくれって…」

 髪を振り乱して暴れる彼女を落ち着けたい一心で、俺は彼女の肩を掴んだ。
 その瞬間スイッチが切り替わる様に彼女の動きが急に制止した。

 次に顔を上げた彼女の顔は喜びに満ちていて、何か眩しそうな物を見る感じで俺を見つめていた。

「あぁ、勇者様、ありがとうございます。貴方のおかげでこの命を長らえる事が出来ました。何かわたくしにお返し出来る事があれば良いのですが…」

  彼女はそう言うと半裸のまま俺に抱き着いて来た。そして何かを期待する様に熱い視線を俺に向ける。

 そうか、これも聖剣の力なんだ……。

 聖剣の力で恐怖で錯乱した人ですら、一瞬でエロゲーの好感度マックスのヒロインみたいな反応に変えるとは……。

 下を向くと俺の体に押し付けられた彼女の胸が見える。両手で彼女の肩を抱くと、彼女は嬉しそうに抱き返してきた。

 周りにゴブリン他の死体が散乱し屍臭の漂う中、俺は本日5回目の事に及んでしまっていた……。
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