魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

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第40話 大きな報酬

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「イクチナ様! 勝手に動かれては困りますわ。勇者様の戦闘の妨げになっては元も子もないでしょう?」

 いつの間にかティリティア達もやって来ていて全員集合している。ティリティアは妙にイクチナさんに当たりが強い気がするけど気のせいかな?

「うふふ、ごめんなさい…」

 ティリティアに対してイタズラっぽく謝るイクチナさんだが、口調からしてあまり反省はしてなさそうだ。それはティリティアも感じたらしく、彼女は険しい顔を崩さないまま俺とイクチナさんを交互に見つめていた。

「どうやら伏兵はいなさそうだな…」
「ねぇ、探してる『お宝』ってどこ? どんなやつ?」

 クロニアとモンモンの声で、ここは敵地であり痴話喧嘩(?)をしている場合ではない事を思い出す。目的を果たしてさっさと帰ろう。

「ではこの場の品々をあらためさせて頂きます。私の検分が終わった物は、剣士様の方で回収して頂いて構いません」

 そう言ってイクチナさんは集中する様に目を閉じる。そのまま無造作に歩き出し、野営地の天幕テントに入って不躾ぶしつけとも思える早さで、品々の物色を始めた。

 いやまぁ確かに山賊の連中は俺が片付けたけど、イクチナさんの思い切りの良さは無防備にも程がある。例えば物資に罠が仕掛けてある可能性も否定出来ないのだ。

「これは… 鍵が掛かってますね…」
「任せて!」

 施錠された大きくて頑丈そうな宝箱が目に入る。いかにも貴重品が入っている風の雰囲気だが、それが故に罠などが掛けられている可能性が……。

「ハイ開いたよ!」

 人が考え事をしている間にモンモンが、それこそ「あっという間」に鍵を開け箱の蓋を開いていた。仕事早すぎだろ。
 ベルモのお墨付きだけあって、なかなかレベルの高い解錠技能を披露してくれた。罠を調べていた雰囲気は無かったけど、ちゃんと調べた上で鍵開けしたんだよね…?

「うわー、お金がいっぱい! …でも小銭ばっかりだねぇ」

 箱の中は現金が詰まっていた。しかしながらその大半は10モア硬貨や1モア硬貨ばかりだ。日本円で考えると100円玉と10円玉ばかりの入った箱、という感じだ。
 確かにひと抱えある箱一杯の100円玉と考えれば『それなり』の金額になるとは思うが、あくまで『それなり』だ。持ち運びの利便性を考えると、お宝とは言え放置確定だよなぁ。

「いえ、これで結構です。これこそが『宝具』ですわ」

 小銭の詰まった箱の中からイクチナさんが嬉しそうに手に取ったのは、まさにその小銭の一部、『1モア硬貨』だった……。

 ☆

 その後、無人の山賊の野営地でお宝を漁ったが、あまり価値のある物は拾えなかった。ただ1点、俺に突き殺されたボスの持っていた剣が結構な業物わざものだったらしく、クロニアが気に入って回収していた。
 
 懸念されていた敵の魔法使いの存在が確認されなかった為に、難易度5の任務の割には難易度1のゴブリン退治と変わらない危険度とお宝で幕を閉じる結果となった。

 ☆

「ありがとうございました。報酬は匠合ギルドに預けてありますので。また縁がありましたら宜しくお願いしますね」
 
 バルジオの街に戻りイクチナさんは俺達と別れた。「また宜しく」とか言ってくれたが、何やら腹に一物あるタイプに見受けられたんだよなぁ……。
 結果として裏切られる事こそ無かったが、どうにもモヤモヤした気持ちを抱えたまま解散する事になってしまった。こんな事ならいっそのこと触って『魅了』してしまえば良かったか?
 
 イクチナさんは『宝具』についての説明を最後まで拒否した。我々の代表としてモンモンがしつこく聞いていたが、あのコイン型の宝具にどの様な力が込められているのかも教えてはくれなかったし、そもそも本当に魔法の力が込められているのかすら謎のままだった。
 優しく穏やかな顔をして、彼女はプライベートを含む一切の情報を俺達に与える事は無かった。イクチナという名前すら本名かどうかも怪しいよな……。

 ☆

「最高難易度のお仕事ご苦労様でした。依頼達成の報酬として2000カイをお預かりしております。ところで投資にご興味はありませんか? 当匠合ギルドでは融資の事業もしておりまして…」

 人が金を持った瞬間に投資のお誘いかよ。受付嬢のスマイルもいつにも増して鬼気迫っている様にも感じられる。
 投資の話は後でゆっくり聞くとお断りを入れ、まずはようやく手に入れた大金の重さを噛み締めたいと思う。

 周りの冒険者達も1800カイ(手数料で200引かれた)の仕事を成し遂げた俺達を、興味と羨望のいまぜになった目で見つめてくる。
 まぁ仕事そのものは相場で言うなら50カイ程の難易度1~2程度の物だったが、それは結果論だし周りの嫉妬を招く恐れがあるのでわざわざ口外する必要は無いだろう。

「でもこれで当分の間金子きんすの心配をしなくて良くなったのは精神的にとても助かるな」

「でもクロニア、今回のお仕事ではわたくしと貴女は何の働きもしていないから少々心苦しいですわ…」

 ティリティアがそう言って俺の方へと甘えた視線を送る。これはきっと『何かフォローしろ』という面倒くさいメッセージだな。

「いや、ティリティアとクロニアが後方で依頼主やモンモンを守ってくれていたから、俺は憂いなく前に進めた。活躍の頻度は問題じゃないよ」

 半分は急かされたフォローだが、口から出た言葉は紛れもなく本心だ。
 俺が前衛フロントで荒事を引き受け、ティリティアは街での交渉や戦闘時の回復、モンモンは探索や情報収集、その2人をクロニアが護衛する事で俺は後顧の憂いを断てる。これ以上無くバランスの取れたパーティになったと思う。

 ティリティアも満足げに微笑んでいたあたり、俺の回答はかなり高得点だったのだろう。

 ☆

「それで、金の使い途は何か考えているのか? 持って歩く訳にもいくまい」

 クロニアが話を戻してくれた。俺は漠然と現代知識のまま『銀行に預けておけばいい』などと考えていたが、話を聞くにこの世界の銀行は身分の保証された貴族か豪商しか使えない物らしい。まぁ庶民が金を貯められる程、生活レベルの高い世界じゃ無いから無理もないか……。

「そこでオススメするのが私達『王立冒険者支援協会』で行っている資産運用です!」

 俺達の話が一段落ついたタイミングを見計らって受付嬢が顔を出してきた。
 
「確か貴方がたは鍛冶屋で装備の買い替えをしたばかりですよね? 今後大きな買い物は当面なさらないと思うのですが如何です?」

 投資話とやらを聞くだけ聞いてみると、冒険者から持ち込まれた宝石や美術品をより高値で売却したり、農作物の先物取引で利益を上げて匠合ギルドの福利厚生に回す為の資金を募集しているらしい。
 一応半年に1回程、あまり高価では無いが株の配当金に相当する物が配られるそうだ。

 結局1番のメリットは、街の中でも荒くれ者の跋扈ばっこするこの世界で『安心して金を預けられる』って事らしい。まぁそうだよな。

「担当者のイクチナ・バリガ様の金銭感覚は素晴らしくて、原資が減る事はまずありません。是非ご利用下さい!」

 ここまで押し込んでくるって事は、投資の契約が成立するとこの娘にもキックバックがあるのだろうと予測される。良家の子女なのに苦労してんのかな…?

「イクチナさんならさっきまで一緒だったよ。あの細身の美人とまた会えるなら考えても良いかな…?」

「え? イクチナさんとさっきまで一緒だったのは私ですし、彼女はとてもふくよかな叔母様ですよ? 誰かと勘違いされてませんか…?」

 ……………………。

 おぉっと、こいつぁ新たな疑惑が浮上してきてしまったねぇ…?
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