魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

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第41話 報告書

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~???視点

 『対象11号』に関する報告書

 アイトゥーシア教会の予言にあった『勇者』候補の選定であるが、かねてより報告のあった対象と接触、情報の入手に成功。所見を述べる事とする。

 結論から申し上げると『対象11号』は勇者として『不適格』と断ぜざるを得ない。

 『王立冒険者支援協会』に提出された彼の氏名では王国内には戸籍が存在せず、『対象11号』の出生に関する情報は皆無であった。単に届け出のされていない私生児か、他国からの密入国者と思われるが、或いはあの忌まわしい東の虚無ヴォイドからの訪問者の可能性も否めない。

 その足跡を調べるに『対象11号』はある日忽然とガルソム侯爵領、ラモグ町近郊に現れた。周辺の村々には彼の年齢や人相風体と同一性を持つ男子は存在せず、またガルソム領はウルカイザー公国と国境を接するが、ウルカイザーからの入国者にも該当する人物は見受けられない。

 また別件ではあるが、ラモグ町で強盗殺人の容疑で手配されている人物と11号が酷似しているとの連絡も来ているが、追ってそちらの検証も進めていくつもりだ。

 また『対象11号』の卓越した戦闘力の高さをして、それまで近隣で彼の幼少期からの知名度が皆無なのも不可解な話である。また彼がオーガではない事も確認済みなので、隠匿されたオーガの私生児の線も薄い。
 全てが謎に包まれており、その実力はともかく思想信条の面で安心と確定出来るまでは『勇者』への推薦は出来かねる結果となった。

 彼の戦闘力はその背中に負った長剣に依るもので、他の武器は使用しない模様である。
 その剣技は飛来する矢を切り落として見せたが、近接戦闘の技術自体はお世辞にも上等とは言えず、ただ力任せに振り回しているだけの様に見受けられた。

 恐らくは『使用者』ではなく『剣そのもの』が強力なのだと思われるが、私の『魔力感知』では力不足の為か魔法の力は感知出来なかった。
 剣自体が業物わざものであるのは間違いないが、一振りで翼竜ワイバーンの首を切断できる程の技量を彼は持たない。
 
 以上の事から、あの剣は何処ぞの魔導師による脆弱な魔法具マジックアイテムなどではなく、恐らくは『神の御業』かそれに類する特級遺物アーティファクトであると推察される。
 ただ、刀身に刃文が浮かぶ特殊な製法で造られた、見る者を魅了さえするその美しさは、創世伝説に歌われる悪魔が使ったとされる『伝説のアドモンゲルン』を彷彿させる所があった。
 
 まさか本当に『神器』ではあるまいが、ならば尚の事正体不明の男にその様な代物を持たせておくのも危険極まりないと判断、引き続き彼の監視の続行を提言するものである。

 剣の一振りで10mの射程を持つ事も確認しているが、逆にそれ以上離れると攻撃能力を喪失してしまう様であった。
 彼と翼竜との戦いの際に、私は彼の戦闘力を測る為に逃げる翼竜を妨害すべく《光矢》の魔法で介入したのだが、その直後に翼竜は両断され、剣の威力をこの目で確認する事が出来た。

 次に彼らの一党パーティに潜入した際に見聞した、11号の人となりを報告する。
 彼らの一党は総勢4名、彼の他はガルソム領の兵士、アイトゥーシア神官の治癒師、オーガの子供、いずれも若い女性であった。

 全員が11号に対して絶対的な信頼を置いており、結束は高い様に見受けられた。
 正直それほどまでのカリスマ性が11号にあるか? と問えば、それは私の見聞きした範囲では甚だ疑問である。

 11号のドワーフの様な体型は、鍛錬された剣士の『それ』ではない。中年男の不摂生を絵に描いた醜悪な物だとさえ言える。
 加えて天下無双の戦闘力のくせに、いつも自信の無さそうな卑屈な顔付きも、お世辞にも魅力的には思えない。
 あの卑屈な微笑みは、彼の強さの由来が『彼本人』に帰結していない、という仮説の裏付けになるだろう。

 また11号の活動の動機についても、分かりやすい『富』や『名声』ではなく『流されて』物事を決める様な優柔不断な部分が垣間見えた。
 その知性に一定の思慮深さは認めるが、彼の意志力の弱さは今後、その力を利用しようとする者が現れた際に大変危険な物として臣民に牙を剥く可能性がある。

 それらの『11号の持つ性的魅力の薄さ』にも関わらず、かの一党の治癒師の女は私が11号に接触しようとするのを執拗に妨害してきた。まるで『私の男に手を出すな』と言わんばかりに。
 アイトゥーシア教会は確かに性愛に関しては堅苦しい教義を堅持しているが、他人の恋愛行為に口を挟むほど野暮でもなかったはずである。

 何でも、ティリティアあの女はガルソム侯爵家の令嬢らしいが「お転婆が過ぎて勘当された」とも伝え聞く。単に『変わり者』と『変わり者』同士が引き合って一党を組んでいるだけなのか、別の目的があるのかまでは計り知れないし、そこまでは私の任務の範囲外である。

 他にも兵士の女クロニアはガルソム領の治安維持隊の衛士小隊長との事だ。『森の盗賊団退治』の任を受け、そこで11号の助力を受けたのが出会いらしい。
 
 鬼族の子供モンモンに関しては『手癖の悪い子供』以外の何の情報もない。初対面の際に私のふところから何食わぬ顔で財布をスリ取ろうとした子供だ。こちらもさり気なく奴の手を差し止めたが、そのまま切断するべきだったかも知れない。まぁ度胸だけは認めてやるべきか…?

 以上の点を踏まえ、勇者候補の選定から外れたとしても、11号の一党を監視する必要性を感じている。
 もし許可が降りるようであれば再度私が作戦を行い、より詳細な報告が可能であると考えている。

 最後に、彼らの行動の映像を収めた『記録義眼』を添えて当報告書を献じる事とする。精査願いたい。
 
 以上、カーノ・バルジオン国王陛下に報告するものである。
 
 幻夢兵団 No.268710 チャロアイト
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