魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

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第44話 ブリーフィング

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「おー、1ヶ月と離れてないけど、なんかずいぶん久し振りな気がするなぁ…」

 件の森にやってきたモンモンの第一声だ。久し振りの感覚は俺とクロニアもよく分かる。初めは単なる盗賊退治のはずが、紆余曲折を経て今に繋がっている。この森の一件が無ければ、俺は今の仲間達の誰とも出会えていなかっただろう。

「まずはアタイらの村で状況説明をするよ。従いてきてくれ」

 ベルモの案内で、これまた懐かしの盗賊団の野営地、もとい『傭兵団の開拓村』に通される。前回来た時よりも清潔感があるように見えるのは、ゴロツキばかりの犯罪者集団を卒業して真っ当な生活を始めたからだろうか?

「我々の『始まりの地』だな。色々あったが、今となってはみな懐かしく思える…」

 クロニアが感慨深く呟く。彼女も俺と似た様な感情でこの場を見ているのだろう。

「あら、なんだかわたくしだけ皆さんの思い出から除け者にされているみたいで面白くありませんわ…」

 ティリティアはこの森は初体験だ。絶対に演技だと分かっているのだが、美少女に寂しげに涙交じりの弱い微笑みを見せると、やはり多少なりとも心に『くる』物がある。

「ティリティアねーちゃんもこの村に来たなら、もうボクらの友達さ!」

 俺が気の利いた答えを考えているうちに、モンモンが綺麗に締めてくれた。
 
「しかし王都の冒険者様は儲かるのかい? みんな立派になっちゃって。特にクロニアは見違えたねぇ。全身ピカピカで『一端いっぱしの戦士様』って感じだよ」

 ベルモの雑談ついでに言っておくと、俺達は頼んでいた装備の改修を終わらせ、全体的に小綺麗になった。
 ベルモの言うようにクロニアは革鎧レザーアーマーから、より防御力が高くて機動性を阻害しない薄片鎧ラメラーアーマーに更新し、岩鎧虫ロックワームの甲殻を元に加工した盾を備え、宝具回収の際の戦利品である高品質の剣を研ぎ直して全身の装備を一新した。

 後はティリティアがローブの下に鎖帷子チェーンメイルを着て防御力を高め、杖も原理はよく分からんが彼女の法力をより効果的に発現出来る素材の物に変えてもらった。
 
 モンモンは「重たい鎧は着たくない」と言う事なので、能力的な変化は無し。普段着ているポンチョ型の外套が経年劣化でくたびれていたので新調したくらい。

 ベルモも岩鎧虫ロックワームの牙を加工した、左右一対の小剣を新調しており、いつの間にか鎧もワンランク上等な物に変更していた。

 俺は… 擦り切れていた野営用のマントを丈夫な物に新調したくらいだ。聖剣のおかげで攻撃力や防御力をことさら強化する必要は無い。
 ただ先日の翼竜ワイバーンの吐く酸の様に、聖剣バリアが意外な所で無効化する事を考え、マントの様に咄嗟の時に体を覆える装備が必要と考えた為だ。

 他の一党パーティもなかなか高ランクに相応しい装備をしている様に見受けられる。もしかして俺みたいに神様からチート武器を賜った奴が他にいるのかも知れないな。その辺は実際にモンスターが現れてからのお楽しみか……。
 


「…以上がアタイらが何人かの犠牲と共に手に入れた『大蛇』の特徴だよ。何か質問があるかい?」

 普段な宴会場として使われている部屋に多数の椅子を持ち込み、ベルモの説明会が行われた。以前に聞いた通り、今度の蛇型のモンスターは全体が黒い霧の様な物で構成されていて、切っても突いても射てもまるで歯応えが無いという事が主題だ。
 
 文字通り「雲を手で掴む」様な話であり、俺の聖剣でもそんな敵に対抗できるのかどうだか自信が無い。ゲームとかだと魔力付与のされている武器は、亡霊の様な実体を持たない相手にも有効打を与えられたりするのだが、そんなゲーム情報を盲信して特攻する訳にも行かない。

「ちょっと良いかな? 『通常攻撃が効かない敵』との事だが、魔法攻撃の有効性は検証しているのだろうか?」

 アンバーの一党パーティの1人が挙手してベルモに質問した。わざわざそんな事を聞いてくるという事は、アンバーチームには魔法攻撃の心得がある者が居る、という事なのだろう。

「生憎だけど、アタイらの部隊には魔法を使える奴は居ないよ。だから悪いけど『魔法の有効性』とか言われてもサッパリだね」

 まぁそりゃそうだろうな。この世界は魔法が禁忌とされているので、大っぴらに『魔法使い』などと自称しようものなら、あっという間に逮捕、投獄される。それこそ冒険者稼業の様な実力主義の世界で、ひっそりと生きるしか道が無いよな……。
 
 ベルモに質問をしていたのは盗賊の様な身なりをしている細身の男だが、リーダーのアンバーが『盗賊シーフ』なのだから、職業クラス被りは考え難い。そうなるとこいつが『魔法使い』なのか…?

 ……そうだ思い出した!!

 ワイバーン退治の時に、逃げようとしたワイバーンを魔法のビーム(?)で撃ち落としてくれた奴がいた。
 ローブを着て民芸品の様な奇妙な仮面で顔を隠した人物に見えたが、その格好に酷似した外見の奴が例の勇者パーティに居るじゃないか……。
 
 いやまぁ、あの時は黄昏時でハッキリと視認できた訳では無いので、同一人物であると言える根拠はまるで無い。ただ『同じ様な格好をしていたら、同じ様な仕事が出来るのではないか?』という予想に過ぎない。

 勇者パーティの魔法使い(仮)については、ティリティアかモンモンを使って情報を探るべきだと感じた。もちろん魔法使い(仮)だけではなく、勇者の持つ『聖剣』とやらの情報も欲しい。『勇者』とは将来敵対する可能性もゼロではないのだから、もし少しでも弱点があるなら探っておきたいからね。

 勇者パーティは全員ベルモらの話を聞いているだけで、誰一人発言しようとはしなかった。それが単に恥ずかしいのか、緊張しているのか、「黙っていろ」という指示を受けているのかは定かではない。『勇者』という肩書の割にはどうにも大人しくて地味というか、不気味な物すら感じられる。これがただの俺の杞憂なら良いんだけどね……。
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