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第58話 ライクとリーナ
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「陛下! 勇者様も…」
この場で俺と王様との戦いを止めようとしているのはティリティアだけだ。俺と王様の間に入って両者の攻撃を抑えようとしている。
王様の剣はどうだか知らないが、俺の聖剣は『ちょっとした怪我』では済まない事をティリティアはよく知っているからだろう。
「はやるなティリティアよ。何も余は『死合い』をしたい訳では無い。この者の実力を知りたいだけなのだ。そこを退きなさい…」
「なにとぞ…」
ティリティアは貴族の娘ではあるが、当然王様に対して何か意見できる立場ではない。それなのに一生懸命突っ張って俺(と王様)を守ろうとしてくれている。
「王の命であるぞ…?」
王様の目が薄くなり仄かな殺気を孕んでいた。恐らく最終警告、これ以上逆らえばティリティアが王様に斬られてしまう。
吐き気と頭痛で上手く動かない体を前に出し、左手でティリティアを引き戻して俺の後ろに置く。右手は王様の奇襲に備えて正眼の構えのまま王様と対峙する。
王様の殺気が俺とティリティアを包む。これ以上近寄ったら相手の間合いに入り、容赦のない斬撃が見舞われる事だろう……。
「陛下… そのくらいで赦して差し上げては如何でしょうか…? 剣士様も体調がすぐれないご様子ですし…」
王様の後ろから割って入ったのはチャロアイトだった。王様に歩み寄り、情婦の様に空いた彼の左手にしなだれかかって来た。
その際に俺を一瞥してウインクする。これは何か彼女なりに事態を収めて上げようという意味なのだろうか…?
「ふむ、なるほど… 興が冷めたわ。謁見はこれにて終了! ライク、リーナ、後は頼んだ…」
王様は一方的に声を上げ、剣を鞘に納めると無造作に後ろを向いて部屋から退出していった。
これはもしかして突発的な試合、いや『死合い』を回避できたって事で良いのかな…?
王様に続いて鎧の大男と痩せた悪党面の男も無言で退出する。残ったのは俺達とチャロアイト、後は神官風の男とローブの女だ。
この2人が『ライク』と『リーナ』なら、名前から判断して恐らく神官がライクでローブ女がリーナだろう。
「やれやれ… すみませんねティリティア様、そして少年も。カーノは昔から喧嘩バカでねぇ…」
ライクが俺達に優しい眼差しで話しかけて来てくれた。ここまでの緊張感から一気に解き放たれる。
王様に対して『バカ』とか不敬罪なのだろうけど、ローブの女も先程「カーノ」と呼び捨てにしていたので、仲間うちではフランクな関係を続けているのだと思われる。
「いえ、ラングローム閣下であればあの場を収めて頂けるものと信じておりました…」
ティリティアがライクに頭を下げる。つまりは2人は知り合いで、ライク・ラングロームなる者が教会の重鎮に居るって事だな。
ティリティアが俺の方を向いてライクに手のひらの先を向ける。
「勇者様、こちらはラングローム大司教閣下です。いつぞや2人で一緒に教会に赴いた時に、わたくしがお会いした方ですわ」
あぁ、あったなそんな事。確かその時に神託とかで新しい勇者が選ばれる、みたいな話を聞いたんだっけか。
「あ、よろしく、です…」
紹介されて無視する訳にもいかず、俺は相変わらず挙動不審な自己紹介をしてしまった。
「ふふふ、畏まる必要はありませんよ。しかし貴方は実に興味深い。一度ゆっくり話をしてみたいですよ」
大司教の本気か冗談かも分かりにくいトークに戸惑っていると、大司教の横からリーナが顔を出してきた。
やはり齢の頃は17~8歳に見える。それでいて気というか魔力というか、とにかく『圧』が凄い。少なくとも見た目通りの年齢じゃないのは間違い無さそうだ。
「こんにちわ~、『見習い魔女』のリーナで~す。よろしくね~」
今、『魔女』って言ったよね? この世界で『魔法使い』を自称するのは結構危険な行為なんじゃなかったのか? ましてや魔法を『禁忌』としているアイトゥーシア教会の大司教の前で……。
ここでチャロアイトが「ゴホン」とわざとらしい咳払いをして、リーナもイタズラの見つかった子供の様な反応を見せる。
チャロアイトの関係者なら魔法使いの疑いが濃厚だし、ライクや悪党面のオジサンが王様のかつての冒険仲間だとしたら、年齢的に彼らとリーナは同年代と考えられる。つまり今目の前にいる彼女の外見は……。
「あの、わたくし共はこのまま帰ってもよろしいのでしょうか…? 陛下は何か別の目的があったようにもお見受けしましたが…?」
「あぁ、そうですね… もう良いんじゃないかな? ね…?」
ティリティアの質問にはライク大司教が答えてくれた。だがその視線は魔女に向けて確認を取っている様に見えた。
これではっきり理解した。チャロアイトの言っていた『幻夢兵団』とやらは、アイトゥーシア教会とはツーカーの関係なんだ。表向きは『禁忌』として迫害しているが、その裏では密に連絡を取り合って協力関係にある訳だ。
「う~ん、こちらとしてももう少し情報が欲しいけど、とりあえず今日は帰ってもらって良いんじゃない?」
何の『情報』だろう? 俺だってチャロアイトに話した以上の事は多分知らないぞ…?
そこからリーナはおもむろにチャロアイトに目を向け口を開いた。
「じゃあそういう事だからチャロアイトを連れて行って上げて。勇者ショウの面倒は私が見るわ」
「御意…」
リーナの言葉に胸に手を当てて頭を下げるチャロアイト。もう上下関係丸わかり。
「あとチャロアイト、‥¶µ※↹⇖⇔✝✢❆❧❖▶❋◢❥❑|」
リーナがチャロアイトに何かを言ったが、その言葉は聞いた事のない知らない言語だった。
そしてその言葉に対してチャロアイトは頭を下げ、無言のまま動かなかった。
リーナが何を言ったのか? 恐らく外部に情報を漏らさない為の、組織内の暗号か何かの類だと思う。
普段ならそのまま聞き流される様な雰囲気ではあったが、生憎俺の聖剣は同時通訳機能も完備しているんだ。言葉は分からなくても、その意思は読み取れた。
「この者は限りなく『魔』に近い存在である。怪しい動きを見せたら即座に消せ」
という強烈な意思をね……。
この場で俺と王様との戦いを止めようとしているのはティリティアだけだ。俺と王様の間に入って両者の攻撃を抑えようとしている。
王様の剣はどうだか知らないが、俺の聖剣は『ちょっとした怪我』では済まない事をティリティアはよく知っているからだろう。
「はやるなティリティアよ。何も余は『死合い』をしたい訳では無い。この者の実力を知りたいだけなのだ。そこを退きなさい…」
「なにとぞ…」
ティリティアは貴族の娘ではあるが、当然王様に対して何か意見できる立場ではない。それなのに一生懸命突っ張って俺(と王様)を守ろうとしてくれている。
「王の命であるぞ…?」
王様の目が薄くなり仄かな殺気を孕んでいた。恐らく最終警告、これ以上逆らえばティリティアが王様に斬られてしまう。
吐き気と頭痛で上手く動かない体を前に出し、左手でティリティアを引き戻して俺の後ろに置く。右手は王様の奇襲に備えて正眼の構えのまま王様と対峙する。
王様の殺気が俺とティリティアを包む。これ以上近寄ったら相手の間合いに入り、容赦のない斬撃が見舞われる事だろう……。
「陛下… そのくらいで赦して差し上げては如何でしょうか…? 剣士様も体調がすぐれないご様子ですし…」
王様の後ろから割って入ったのはチャロアイトだった。王様に歩み寄り、情婦の様に空いた彼の左手にしなだれかかって来た。
その際に俺を一瞥してウインクする。これは何か彼女なりに事態を収めて上げようという意味なのだろうか…?
「ふむ、なるほど… 興が冷めたわ。謁見はこれにて終了! ライク、リーナ、後は頼んだ…」
王様は一方的に声を上げ、剣を鞘に納めると無造作に後ろを向いて部屋から退出していった。
これはもしかして突発的な試合、いや『死合い』を回避できたって事で良いのかな…?
王様に続いて鎧の大男と痩せた悪党面の男も無言で退出する。残ったのは俺達とチャロアイト、後は神官風の男とローブの女だ。
この2人が『ライク』と『リーナ』なら、名前から判断して恐らく神官がライクでローブ女がリーナだろう。
「やれやれ… すみませんねティリティア様、そして少年も。カーノは昔から喧嘩バカでねぇ…」
ライクが俺達に優しい眼差しで話しかけて来てくれた。ここまでの緊張感から一気に解き放たれる。
王様に対して『バカ』とか不敬罪なのだろうけど、ローブの女も先程「カーノ」と呼び捨てにしていたので、仲間うちではフランクな関係を続けているのだと思われる。
「いえ、ラングローム閣下であればあの場を収めて頂けるものと信じておりました…」
ティリティアがライクに頭を下げる。つまりは2人は知り合いで、ライク・ラングロームなる者が教会の重鎮に居るって事だな。
ティリティアが俺の方を向いてライクに手のひらの先を向ける。
「勇者様、こちらはラングローム大司教閣下です。いつぞや2人で一緒に教会に赴いた時に、わたくしがお会いした方ですわ」
あぁ、あったなそんな事。確かその時に神託とかで新しい勇者が選ばれる、みたいな話を聞いたんだっけか。
「あ、よろしく、です…」
紹介されて無視する訳にもいかず、俺は相変わらず挙動不審な自己紹介をしてしまった。
「ふふふ、畏まる必要はありませんよ。しかし貴方は実に興味深い。一度ゆっくり話をしてみたいですよ」
大司教の本気か冗談かも分かりにくいトークに戸惑っていると、大司教の横からリーナが顔を出してきた。
やはり齢の頃は17~8歳に見える。それでいて気というか魔力というか、とにかく『圧』が凄い。少なくとも見た目通りの年齢じゃないのは間違い無さそうだ。
「こんにちわ~、『見習い魔女』のリーナで~す。よろしくね~」
今、『魔女』って言ったよね? この世界で『魔法使い』を自称するのは結構危険な行為なんじゃなかったのか? ましてや魔法を『禁忌』としているアイトゥーシア教会の大司教の前で……。
ここでチャロアイトが「ゴホン」とわざとらしい咳払いをして、リーナもイタズラの見つかった子供の様な反応を見せる。
チャロアイトの関係者なら魔法使いの疑いが濃厚だし、ライクや悪党面のオジサンが王様のかつての冒険仲間だとしたら、年齢的に彼らとリーナは同年代と考えられる。つまり今目の前にいる彼女の外見は……。
「あの、わたくし共はこのまま帰ってもよろしいのでしょうか…? 陛下は何か別の目的があったようにもお見受けしましたが…?」
「あぁ、そうですね… もう良いんじゃないかな? ね…?」
ティリティアの質問にはライク大司教が答えてくれた。だがその視線は魔女に向けて確認を取っている様に見えた。
これではっきり理解した。チャロアイトの言っていた『幻夢兵団』とやらは、アイトゥーシア教会とはツーカーの関係なんだ。表向きは『禁忌』として迫害しているが、その裏では密に連絡を取り合って協力関係にある訳だ。
「う~ん、こちらとしてももう少し情報が欲しいけど、とりあえず今日は帰ってもらって良いんじゃない?」
何の『情報』だろう? 俺だってチャロアイトに話した以上の事は多分知らないぞ…?
そこからリーナはおもむろにチャロアイトに目を向け口を開いた。
「じゃあそういう事だからチャロアイトを連れて行って上げて。勇者ショウの面倒は私が見るわ」
「御意…」
リーナの言葉に胸に手を当てて頭を下げるチャロアイト。もう上下関係丸わかり。
「あとチャロアイト、‥¶µ※↹⇖⇔✝✢❆❧❖▶❋◢❥❑|」
リーナがチャロアイトに何かを言ったが、その言葉は聞いた事のない知らない言語だった。
そしてその言葉に対してチャロアイトは頭を下げ、無言のまま動かなかった。
リーナが何を言ったのか? 恐らく外部に情報を漏らさない為の、組織内の暗号か何かの類だと思う。
普段ならそのまま聞き流される様な雰囲気ではあったが、生憎俺の聖剣は同時通訳機能も完備しているんだ。言葉は分からなくても、その意思は読み取れた。
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