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第105話 囮
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結局2件目の食堂で俺は何をするでもなく、チマチマと追加注文したツマミを口にしながら待たされる羽目になった。
しかしその間の手隙の時間で、少々考えをまとめられたのは良かったかも知れない。
まず俺の魔剣を作ったとされる『暴虐』『策謀』『淫奔』の三神は、愛の女神アイトゥーシアの治めるこの世界に対して、破壊活動を含む大規模な反社会的活動を起こそうとしていた事がほぼ確定した。
俺が対応した『虚無』でのゾンビ大量発生や、密かにゴブリンを軍事訓練していたガドゥの暗躍等は、恐らくその予兆だったのだろう。
その上で『魔剣』を持ちながらのんびりと冒険者ライフを送っている俺を見限り、新井を新たな勇者として送り込んできたと考えられるが、新井がバルジオンではなくウルカイザーに送られた事と併せ、別の意図も考慮しておくべきかも知れない。
まぁ『暴虐の神』ってくらいだから、栄養が筋肉に偏って知恵周りが足らずに、目的地が分からず無作為に新井を送り込んできた可能性も無きにしもあらずだが……。
もしも新井がウルカイザーに送られた理由で、きちんとした物があるとするならば、『ウルカイザーに滞在するガドゥとの合流』は充分に考えられる。
もしあの2人が協力して、同時に襲ってきたら正直勝てる気がしないな……。
現状それに関しては『新井が馬鹿で助かった』と言わざるを得ない。ガドゥも新井みたいな奴と組みたくは無いだろうしね。知らんけど。
ただそれによって、繋がりかけたガドゥへの手掛かりが途絶えてしまったのは惜しい。いまとなってはチャロアイトがどれだけ動けるか? だが……。
☆
時計が無いので正確には分からないが、大体2時間弱くらい待っただろうか? チャロアイトが何食わぬ顔をして戻って来た。
行為の後の仄かに上気したフェロモンをプンプンさせた妙齢の女が店に入ってきて、客たちは一瞬ざわめきを見せる。
ウルカイザーもバルジオンと同様に国教がアイトゥーシア教会であり、性的な事を表面に出すのは歓迎されない風潮がある。
当然男と女がいる以上、市井でも夜の営みは普通に行われるし、その手のサービス業も廃れる事は無い。
チャロアイトみたいなタイプは、一般人から見たらもろに『その手のサービス業従事者』に見えるし、彼女と同じテーブルについている俺も『その客』と思われているのだろう。まぁ良いけどね。
「で? 何か収穫はあったか?」
散々待たされた挙句に「情報無し」となるとややダメージが大きいのだが、チャロアイトは答える代わりに「はぁ~」と大きく溜め息を吐ついて、俺の対面に腰を下ろした。
「一応その『アライさん?』て人と接触して話は聞けたわ。貴方に逃げられてヤケ酒飲んでいたから、付け入るのは簡単だった…」
話を聞けたのに溜め息とは… その結果が推して知れるけどな。
「ケンカの強さをおだててちょっと擦り寄ったら、すぐその気になってきてさ、まぁ抱かれてきてやったんだけど…」
抱かれちゃったかぁ… チャロアイトは生まれた時から魔道士で、任務の為に貞操とか倫理観とかを学ばずに生きてきた女だから、その辺の対応は極めて軽い。
俺は別にチャロアイトと恋仲では無いので口を出す権利は無いのだが、俺を殺した犯人と穴兄弟になってしまったのは少々嫌悪感がある。
まぁ口には出さないが……。
「モノはそれなりに立派だったけど、やっぱり童貞はダメね。激しく突けばそれで良いと思ってる浅はかさがダメ…」
今そういう話は聞きたくないなぁ……。
「ただヤッてきただけの報告なら要らないぞ?」
「やぁねぇ、そんな訳無いでしょ? 私を誰だと思っているのよ…?」
お前が『幻夢兵団エースのチャロアイトさん』なのは知ってるよ。でも今のところ俺にセクハラしているだけの只の痴女だからな?
「転生についても少し聞いて、その流れでガドゥの事を聞いたの。そっちに関しては『包帯男と一緒に見かけた気がする』って探ってみたんだけど、それが大当たりだったわ」
あぁそうか… いきなり名前とか鬼族とか言っても、この世界に慣れていない新井が理解していなかった可能性があるな。これは俺のミスだな。
「ガドゥと接触して技の手ほどきを受けたのは確かみたい。その場所も『城壁内のどこか大きな建物の近く』とは教えては貰ったのだけど、アライの記憶もあやふやで場所を絞り込むには至って無いわ…」
その場所がウルカイザーにおけるガドゥの隠れ家であるならば大きなネタだが、ガドゥの性格的に新井みたいな聡明さに欠ける奴を簡単に拠点に招き入れるとは考えにくい。
う~ん、情報としては微妙ではあるけど、まぁ調査開始の初日でコレなら破格の戦果なのではなかろうか?
「一応私の部下を使って詳しく調べさせているけど、どうしても数日はかかりそうなの…」
それは仕方ない。かと言ってその数日を遊んで暮らす訳にもいかないしなぁ……。
「ね、アライを餌にガドゥをおびき寄せられないかしら…?」
唐突にチャロアイトが提案してきたが、正直言って新井如きの為にむざむざガドゥが顔を出してくるとは考えづらいんだよなぁ。あいつそんな情に厚いタイプじゃないだろ……。
とは言え、新井とガドゥの関係が予想よりも深いものだった場合は作戦が上手くいく可能性もある。
例えばガドゥが新井を疎ましく思っていても、その上の神様同士が同盟を組んでいるのだから、『新井を保護せよ』と言われていたら上意下達には逆らえないだろう。
まずは俺が新井に探知されるべく、目立つ様に動いて奴を誘き出す。新井を死なない程度に痛めつければ、助けを求めてガドゥ本人かガドゥの隠れ家へ導いてくれるかも知れない。
あくまで「全て都合よく進めば」だが……。
「倍率は高くないだろうけど試してみる価値はあるかもな。そういう事なら…」
「はい、御駄賃。町の外でやり合うんでしょ…?」
俺がチャロアイトに手を出したら、チャロアイトは瞬時にその手に小銭を乗せてきた。
町中では俺の武器は封印されていて抜刀出来ない。『封印』と言っても軽くシールで止めているだけなので、物理的に剣を抜くのは極めて容易だ。だがその瞬間町中の衛兵が敵になりウルカイザーには居られなくなる。
俺がバルジオンから入国してきた記録も残っているから、下手したら俺が原因でバルジオンとウルカイザーの間で戦争が始まってしまう。それは避けたい。
それを避ける為に、封印を取っても構わなくなる町の外に出る事。そして一戦終えた後に、町の中に再度戻る入場料が必要になるのだ。
チャロアイトはそこまで瞬時に理解して、俺にその分の金を寄越してきた、という訳だ。
「どうする? すぐ動く? それとも明日にする?」
時刻はそろそろ夕暮れ時で、今から動き出すには遅い時間なのだが、このまま宿に泊まると今夜もチャロアイトと同衾する事になるだろう。
だが新井と致してきたばかりのチャロアイトをどうしても抱く気にはなれず、俺は図らずも「すぐ行こう」と口にしていた。
しかしその間の手隙の時間で、少々考えをまとめられたのは良かったかも知れない。
まず俺の魔剣を作ったとされる『暴虐』『策謀』『淫奔』の三神は、愛の女神アイトゥーシアの治めるこの世界に対して、破壊活動を含む大規模な反社会的活動を起こそうとしていた事がほぼ確定した。
俺が対応した『虚無』でのゾンビ大量発生や、密かにゴブリンを軍事訓練していたガドゥの暗躍等は、恐らくその予兆だったのだろう。
その上で『魔剣』を持ちながらのんびりと冒険者ライフを送っている俺を見限り、新井を新たな勇者として送り込んできたと考えられるが、新井がバルジオンではなくウルカイザーに送られた事と併せ、別の意図も考慮しておくべきかも知れない。
まぁ『暴虐の神』ってくらいだから、栄養が筋肉に偏って知恵周りが足らずに、目的地が分からず無作為に新井を送り込んできた可能性も無きにしもあらずだが……。
もしも新井がウルカイザーに送られた理由で、きちんとした物があるとするならば、『ウルカイザーに滞在するガドゥとの合流』は充分に考えられる。
もしあの2人が協力して、同時に襲ってきたら正直勝てる気がしないな……。
現状それに関しては『新井が馬鹿で助かった』と言わざるを得ない。ガドゥも新井みたいな奴と組みたくは無いだろうしね。知らんけど。
ただそれによって、繋がりかけたガドゥへの手掛かりが途絶えてしまったのは惜しい。いまとなってはチャロアイトがどれだけ動けるか? だが……。
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時計が無いので正確には分からないが、大体2時間弱くらい待っただろうか? チャロアイトが何食わぬ顔をして戻って来た。
行為の後の仄かに上気したフェロモンをプンプンさせた妙齢の女が店に入ってきて、客たちは一瞬ざわめきを見せる。
ウルカイザーもバルジオンと同様に国教がアイトゥーシア教会であり、性的な事を表面に出すのは歓迎されない風潮がある。
当然男と女がいる以上、市井でも夜の営みは普通に行われるし、その手のサービス業も廃れる事は無い。
チャロアイトみたいなタイプは、一般人から見たらもろに『その手のサービス業従事者』に見えるし、彼女と同じテーブルについている俺も『その客』と思われているのだろう。まぁ良いけどね。
「で? 何か収穫はあったか?」
散々待たされた挙句に「情報無し」となるとややダメージが大きいのだが、チャロアイトは答える代わりに「はぁ~」と大きく溜め息を吐ついて、俺の対面に腰を下ろした。
「一応その『アライさん?』て人と接触して話は聞けたわ。貴方に逃げられてヤケ酒飲んでいたから、付け入るのは簡単だった…」
話を聞けたのに溜め息とは… その結果が推して知れるけどな。
「ケンカの強さをおだててちょっと擦り寄ったら、すぐその気になってきてさ、まぁ抱かれてきてやったんだけど…」
抱かれちゃったかぁ… チャロアイトは生まれた時から魔道士で、任務の為に貞操とか倫理観とかを学ばずに生きてきた女だから、その辺の対応は極めて軽い。
俺は別にチャロアイトと恋仲では無いので口を出す権利は無いのだが、俺を殺した犯人と穴兄弟になってしまったのは少々嫌悪感がある。
まぁ口には出さないが……。
「モノはそれなりに立派だったけど、やっぱり童貞はダメね。激しく突けばそれで良いと思ってる浅はかさがダメ…」
今そういう話は聞きたくないなぁ……。
「ただヤッてきただけの報告なら要らないぞ?」
「やぁねぇ、そんな訳無いでしょ? 私を誰だと思っているのよ…?」
お前が『幻夢兵団エースのチャロアイトさん』なのは知ってるよ。でも今のところ俺にセクハラしているだけの只の痴女だからな?
「転生についても少し聞いて、その流れでガドゥの事を聞いたの。そっちに関しては『包帯男と一緒に見かけた気がする』って探ってみたんだけど、それが大当たりだったわ」
あぁそうか… いきなり名前とか鬼族とか言っても、この世界に慣れていない新井が理解していなかった可能性があるな。これは俺のミスだな。
「ガドゥと接触して技の手ほどきを受けたのは確かみたい。その場所も『城壁内のどこか大きな建物の近く』とは教えては貰ったのだけど、アライの記憶もあやふやで場所を絞り込むには至って無いわ…」
その場所がウルカイザーにおけるガドゥの隠れ家であるならば大きなネタだが、ガドゥの性格的に新井みたいな聡明さに欠ける奴を簡単に拠点に招き入れるとは考えにくい。
う~ん、情報としては微妙ではあるけど、まぁ調査開始の初日でコレなら破格の戦果なのではなかろうか?
「一応私の部下を使って詳しく調べさせているけど、どうしても数日はかかりそうなの…」
それは仕方ない。かと言ってその数日を遊んで暮らす訳にもいかないしなぁ……。
「ね、アライを餌にガドゥをおびき寄せられないかしら…?」
唐突にチャロアイトが提案してきたが、正直言って新井如きの為にむざむざガドゥが顔を出してくるとは考えづらいんだよなぁ。あいつそんな情に厚いタイプじゃないだろ……。
とは言え、新井とガドゥの関係が予想よりも深いものだった場合は作戦が上手くいく可能性もある。
例えばガドゥが新井を疎ましく思っていても、その上の神様同士が同盟を組んでいるのだから、『新井を保護せよ』と言われていたら上意下達には逆らえないだろう。
まずは俺が新井に探知されるべく、目立つ様に動いて奴を誘き出す。新井を死なない程度に痛めつければ、助けを求めてガドゥ本人かガドゥの隠れ家へ導いてくれるかも知れない。
あくまで「全て都合よく進めば」だが……。
「倍率は高くないだろうけど試してみる価値はあるかもな。そういう事なら…」
「はい、御駄賃。町の外でやり合うんでしょ…?」
俺がチャロアイトに手を出したら、チャロアイトは瞬時にその手に小銭を乗せてきた。
町中では俺の武器は封印されていて抜刀出来ない。『封印』と言っても軽くシールで止めているだけなので、物理的に剣を抜くのは極めて容易だ。だがその瞬間町中の衛兵が敵になりウルカイザーには居られなくなる。
俺がバルジオンから入国してきた記録も残っているから、下手したら俺が原因でバルジオンとウルカイザーの間で戦争が始まってしまう。それは避けたい。
それを避ける為に、封印を取っても構わなくなる町の外に出る事。そして一戦終えた後に、町の中に再度戻る入場料が必要になるのだ。
チャロアイトはそこまで瞬時に理解して、俺にその分の金を寄越してきた、という訳だ。
「どうする? すぐ動く? それとも明日にする?」
時刻はそろそろ夕暮れ時で、今から動き出すには遅い時間なのだが、このまま宿に泊まると今夜もチャロアイトと同衾する事になるだろう。
だが新井と致してきたばかりのチャロアイトをどうしても抱く気にはなれず、俺は図らずも「すぐ行こう」と口にしていた。
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