魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや

文字の大きさ
104 / 120

第105話 囮

しおりを挟む
 結局2件目の食堂で俺は何をするでもなく、チマチマと追加注文したツマミを口にしながら待たされる羽目になった。

 しかしその間の手隙の時間で、少々考えをまとめられたのは良かったかも知れない。

 まず俺の魔剣を作ったとされる『暴虐』『策謀』『淫奔』の三神は、愛の女神アイトゥーシアの治めるこの世界に対して、破壊活動を含む大規模な反社会的活動を起こそうとしていた事がほぼ確定した。

 俺が対応した『虚無ヴォイド』でのゾンビ大量発生や、密かにゴブリンを軍事訓練していたガドゥの暗躍等は、恐らくその予兆だったのだろう。

 その上で『魔剣』を持ちながらのんびりと冒険者ライフを送っている俺を見限り、新井を新たな勇者として送り込んできたと考えられるが、新井がバルジオンではなくウルカイザーに送られた事と併せ、別の意図も考慮しておくべきかも知れない。

 まぁ『暴虐の神』ってくらいだから、栄養が筋肉に偏って知恵周りが足らずに、目的地が分からず無作為に新井を送り込んできた可能性も無きにしもあらずだが……。

 もしも新井がウルカイザーに送られた理由で、きちんとした物があるとするならば、『ウルカイザーに滞在するガドゥとの合流』は充分に考えられる。
 もしあの2人が協力して、同時に襲ってきたら正直勝てる気がしないな……。

 現状それに関しては『新井が馬鹿で助かった』と言わざるを得ない。ガドゥも新井みたいな奴と組みたくは無いだろうしね。知らんけど。

 ただそれによって、繋がりかけたガドゥへの手掛かりが途絶えてしまったのは惜しい。いまとなってはチャロアイトがどれだけ動けるか? だが……。

 ☆
 
 時計が無いので正確には分からないが、大体2時間弱くらい待っただろうか? チャロアイトが何食わぬ顔をして戻って来た。

 行為の後の仄かに上気したフェロモンをプンプンさせた妙齢の女が店に入ってきて、客たちは一瞬ざわめきを見せる。

 ウルカイザーもバルジオンと同様に国教がアイトゥーシア教会であり、性的な事を表面に出すのは歓迎されない風潮がある。

 当然男と女がいる以上、市井しせいでも夜の営みは普通に行われるし、その手のサービス業も廃れる事は無い。
 
 チャロアイトみたいなタイプは、一般人から見たらもろに『その手のサービス業従事者』に見えるし、彼女と同じテーブルについている俺も『その客』と思われているのだろう。まぁ良いけどね。

「で? 何か収穫はあったか?」

 散々待たされた挙句に「情報無し」となるとややダメージが大きいのだが、チャロアイトは答える代わりに「はぁ~」と大きく溜め息を吐ついて、俺の対面に腰を下ろした。

「一応その『アライさん?』て人と接触して話は聞けたわ。貴方に逃げられてヤケ酒飲んでいたから、付け入るのは簡単だった…」

 話を聞けたのに溜め息とは… その結果が推して知れるけどな。

「ケンカの強さをおだててちょっと擦り寄ったら、すぐその気になってきてさ、まぁ抱かれてきてやったんだけど…」

 抱かれちゃったかぁ… チャロアイトは生まれた時から魔道士で、任務の為に貞操とか倫理観とかを学ばずに生きてきた女だから、その辺の対応は極めて軽い。

 俺は別にチャロアイトと恋仲では無いので口を出す権利は無いのだが、俺を殺した犯人と穴兄弟になってしまったのは少々嫌悪感がある。
 まぁ口には出さないが……。

「モノはそれなりに立派だったけど、やっぱり童貞はダメね。激しく突けばそれで良いと思ってる浅はかさがダメ…」

 今そういう話は聞きたくないなぁ……。

「ただヤッてきただけの報告なら要らないぞ?」

「やぁねぇ、そんな訳無いでしょ? 私を誰だと思っているのよ…?」

 お前が『幻夢兵団エースのチャロアイトさん』なのは知ってるよ。でも今のところ俺にセクハラしているだけの只の痴女だからな?

「転生についても少し聞いて、その流れでガドゥの事を聞いたの。そっちに関しては『包帯男と一緒に見かけた気がする』って探ってみたんだけど、それが大当たりだったわ」

 あぁそうか… いきなり名前とか鬼族オーガとか言っても、この世界に慣れていない新井が理解していなかった可能性があるな。これは俺のミスだな。

「ガドゥと接触して技の手ほどきを受けたのは確かみたい。その場所も『城壁内まちのどこか大きな建物の近く』とは教えては貰ったのだけど、アライの記憶もあやふやで場所を絞り込むには至って無いわ…」

 その場所がウルカイザーにおけるガドゥの隠れ家であるならば大きなネタだが、ガドゥあいつの性格的に新井みたいな聡明さに欠ける奴を簡単に拠点に招き入れるとは考えにくい。
 
 う~ん、情報としては微妙ではあるけど、まぁ調査開始の初日でコレなら破格の戦果なのではなかろうか?

「一応私の部下を使って詳しく調べさせているけど、どうしても数日はかかりそうなの…」

 それは仕方ない。かと言ってその数日を遊んで暮らす訳にもいかないしなぁ……。

「ね、アライを餌にガドゥをおびき寄せられないかしら…?」

 唐突にチャロアイトが提案してきたが、正直言って新井如きの為にむざむざガドゥが顔を出してくるとは考えづらいんだよなぁ。あいつそんな情に厚いタイプじゃないだろ……。

 とは言え、新井とガドゥの関係が予想よりも深いものだった場合は作戦が上手くいく可能性もある。
 
 例えばガドゥが新井を疎ましく思っていても、その上の神様同士が同盟を組んでいるのだから、『新井を保護せよ』と言われていたら上意下達には逆らえないだろう。

 まずは俺が新井に探知されるべく、目立つ様に動いて奴を誘き出す。新井を死なない程度に痛めつければ、助けを求めてガドゥ本人かガドゥの隠れ家へ導いてくれるかも知れない。

 あくまで「全て都合よく進めば」だが……。

「倍率は高くないだろうけど試してみる価値はあるかもな。そういう事なら…」

「はい、御駄賃。町の外でやり合うんでしょ…?」

 俺がチャロアイトに手を出したら、チャロアイトは瞬時にその手に小銭を乗せてきた。

 町中では俺の武器は封印されていて抜刀出来ない。『封印』と言っても軽くシールで止めているだけなので、物理的に剣を抜くのは極めて容易だ。だがその瞬間町中の衛兵が敵になりウルカイザーには居られなくなる。

 俺がバルジオンから入国してきた記録も残っているから、下手したら俺が原因でバルジオンとウルカイザーの間で戦争が始まってしまう。それは避けたい。

 それを避ける為に、封印を取っても構わなくなる町の外に出る事。そして一戦終えた後に、町の中に再度戻る入場料が必要になるのだ。
 チャロアイトはそこまで瞬時に理解して、俺にその分の金を寄越してきた、という訳だ。

「どうする? すぐ動く? それとも明日にする?」

 時刻はそろそろ夕暮れ時で、今から動き出すには遅い時間なのだが、このまま宿に泊まると今夜もチャロアイトと同衾する事になるだろう。

 だが新井と致してきたばかりのチャロアイトをどうしても抱く気にはなれず、俺は図らずも「すぐ行こう」と口にしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...