低劣内気なダメ魔法使いの成り上がり

しのふ

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1章 入学編

0話 生まれながらに劣等

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 私の世界にはいつだって近くに魔法があった。
 いつもそれは光り輝いていたし、見るたびに心揺らされていた。

 私が6歳のころ、ある大災害に巻き込まれて死にかけていた時だって、その魔法は私を元気づけてくれたし助けてもくれた。あの瞬間だけは忘れられない。

『大丈夫ですか?すぐに、助けが来ますからね―』

 あの少女はまだ幼いながらに私のケガを魔法で治してくれたし、そう励ましてくれた。

 多分、私が魔法に憧れを抱いたのはその時からだったと思う。


「お父さん!私ね、いつかあのお姉ちゃんみたいなかっこいい魔法使いになるんだ!」

「そうかそうか、だけどなソフィ。まずは来月にある適性試験でどれくらいの魔法適性があるかを測る試験を受けないとな」

「てきせい、しけん?」

 幼いながらにして私は父の言っていることがよくわからなかった。
 7歳の5月に一斉に執り行われる小人適性魔法試験。私はそれを来月にこの時には控えていた。

 難しい言葉だったし、何のことかもよくわからなかったからその時は深くは聞かずにそのまま眠ったと思う。

「お父さん。なんで、そんな怖い顔してるの?」

 父の様子がおかしくなったのは、試験を控えた三週間前。
 適性試験の内容が発表され、子供の魔法訓練が本格的に解禁されたころだ。父はまじめだったため、その時期から私に魔法を教えるようになったが、私の体の異常に気付いたのは訓練を初めてすぐのころだった。

 私には直接言ってくれなかったけど、夜中私が眠りについた後母と喧嘩する声の内容でよくないことが起きているのだと当時の私は感じた。

「マナを吸わないんだ、わかるかこの異常さが!? マナを吸わないなら魔法を行使することはできない! ましてや、マナを使った施設や道具すらまともに扱えないんだぞ!! こんな体でどうやって生きていくというんだ!?」

「あなたはお医者さんなんでしょう! だったらあの子の病気くらい治せないの?!」

 毎日毎日。ずっとそんなやり取りをしていた。耳をふさいでも聞こえてくる声。時々ものが壊れる音もした。まるで私を追い払うみたいに父は色々なものを壁に投げつけては壊していた。
 当時の私はなぜ父があそこまで激怒しているのかわからなかった。

 数日後私は医者にかかり、先天性の疾患が見つかった。

「ソフィリアさん。あなたには魔法因子の源であるマナを放出するためのマナゲートが欠如してしまっています。なので、あなたの体では魔法を扱うことはおろか、取り込むことすら無理でしょう」

 一緒に診察室で聞いていた父はやっぱりかと言いたげな目で私を見て、母は泣き崩れた。
 言っている意味がわからなかったけど、あのお姉ちゃんみたいにはなれないのだとそれだけはなぜかわかった。

 それから滞りなく試験は開催された。私の不在など試験の内容に支障はないということを、開催のパレードの音を観客席側で聞いていた時に感じた。疎外感?というものだろう。周りの大人からは奇怪の目に見られていたと思う。

 ずっと、ずっと夢見ていた。本の中のように、あのお姉ちゃんのように魔法を使って人の助けになる自分の姿を。だけど、それは一生かけても叶うことはない。私は魔法に携われない、そんな人生を生まれてたった7年で突き付けられたのだ。

「羨ましいなぁ」

 私には一人妹がいる。ティアマトというかわいらしい白髪の少女だ。積極的な性格ではないもののある程度の社交性が小さいころから身についており、私なんかよりもずっと可愛い妹だ。

 私の一件があってか、父は妹の試験に関しては5歳のころから訓練を始めていた。
 まだ魔法を行使するためのマナゲートと呼ばれる器官が発達していないので、法律上この年齢から魔法を行使するのは禁止されている。バレれば一発で捕まる。

 ティアマトに関しては無事ゲートは育ち、試験では一番成績の良い結果を残した。地元の記事にも乗ったほどの有名ぷりで、当時は私も含めて父母も大喜びしていた。

 だが喜びもつかの間。魔法律というこのアランという世界で一番強く機能する法律に違反したとして父は捕縛された。
 告発をしたとして父は私に激昂したが、私はもちろんそんなことしてないし、するメリットもない。そのころ偶然私の外出する頻度が高かったため疑われたのだが、私はそのころの記憶があいまいで実際のところ覚えていなかった。

 父は児童虐待と児童魔法行使法違反で捕縛されて、懲役二年の実刑でアラン連邦刑務所に連れていかれた。

 この時私は10歳、ティアマトは7歳だ。

 そこから月日は流れ、私は普通の魔法関連ではない学校へ。ティアマトは幼少期から魔法を行使し実力があったため魔法専攻の学校へと進学した。

 そこからは、正直話すにはつまらない。地味で嫌悪まみれの日常だ。

「あいつ、魔法使えないらしいぜ」
「魔法使えないとかなんで生きてんの?」
「さわったら俺たちのマナも吸われるらしいぞ」

 そんな心無い言葉を小学生時代言われ続け、中学に上がった段階でもそれは終わることはなかった。
 だが、私よりもティアマトのほうがひどい扱いを受けていたらしい。

 このご時世魔法適性力がものを言う。5歳から英才教育を受けていたティアマトは学校で迫害を受けていた。ズルしたと揶揄され、それを理由にクラス単位でのいじめにまで発展した。それも二年以上。

 父が帰ってきた後にティアマトは母元を離れ、別々で暮らすことになった。ティアマトは転校し、私は母と二人で暮らすようになったのだ。母は毎日遅くまで仕事、大して私は魔法も使えないただの人間。

 私の性格は当たり前のように臆病で、他人の視線や評価を気にする低劣で内気なものへ変わっていった。

 だから、だから多分。私の夢は叶わないと知っていても、ここまで変わらずに色褪せず輝いて見えているのだろう。

『もう少しで私の班の人たちが来るので、それまで頑張ってください!』

 一人で魔獣に立ち向かうあの人の後ろ姿。ボロボロになっても、制服が焦げて欠損しても、あの人はあきらめずに私を護ってくれた。
 私だけじゃない。その場にいたすべての人間に癒しと希望を与えてくれていた。

『綺麗・・・』

 彼女が放った魔法一撃一撃が、まるで星の流星群のように見えた。これが魔法なのだと、人知を超えた人を護ろうとする意志が織り成す姿。

『魔法は好き?あなたはなれますきっと、だってこんなにも勇気があるんですから』

 去り際にお姉ちゃんにそう投げかけられた。
 だから、私はそんな姿を諦められない。
 でも、私の体ではそれは到底なしえない。

 気づけば私は13歳の夏、学校の校舎から飛び降り自殺を図ろうとしていた。
 そこで再会したのだ、私の恩人であり憧れだったあの女性と。
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