13番目の神様

きついマン

文字の大きさ
34 / 69
二期 二章

コロシアム 中

しおりを挟む
 試合場に悠々と立つ騎士とアリサは向き合った。
 騎士はすでに3戦目というのにもかかわらず、汗1つ書いていない。
 すさまじい使い手であることは間違いない。…これは俺も本気で行かなきゃかもな…

「それでは!!」

 審判が手を挙げる。

「試合、開始ぃ!!!」

「はっ!!」

 審判の声とともに、アリサは背中にいつもかけている弓を一瞬で構え、そして五本矢を放った。
 目にも留まらぬ速さで射たれた矢は、騎士の頭、腕、足を真っ直ぐに捉えて飛んで行った。

 並大抵の使い手なら反応すらできないほどの速さ。

 しかし、騎士は微塵も動揺しなかった。
 彼は冷静に全ての矢を放たれた順番に、いった。

「そう簡単には行かないか。」

 アリサがやれやれという様子で弓を後ろに投げた。

「ふふ、君は強そうだから、少しだけ本気を見せてあげるよ。」

 騎士はそう言うと、3戦目にしてようやく、自ら攻撃に転じた。

「それ!」

 騎士はゆっくりとアリサの方へ歩きながら、剣を振る。先ほど見せた剣圧の攻撃だろう。

「くっ、こっちも!」

 アリサは目に見えない剣圧をなんとか避けながら、剣を引き抜く。

「私だってコイツの腕だけは自信あるのよ?」

 アリサも引き抜いた剣を思い切り横に振る。目に見えない剣圧を綺麗に弾いていく。

「ほぉ…?コイツを弾くとは、なかなかの使い手だな。ランクは?」

 騎士は驚いたと言う顔を見せ、剣を振りながらアリサに尋ねる。

「Eだけど?」

 アリサも全てをいなしながら答える。

「いや、多分君はすでにEなんて超えてるよ。」

 騎士は剣を止め、そして高くジャンプした。

「これが証拠さ!!」

 騎士は空中で、アリサに向けて約五十回程剣を振った。

「アリサ!!避けてください!!」

 セリスが叫ぶ。

「大丈夫、見てなさい!はぁっ!」

 アリサは短い気合とともに握っていた剣を思い切り振った。
 空中で見えない攻撃がぶつかり合い、激しい衝撃波が生じる。

「きゃあああ!!」

「うわっ!」

 俺の横でセリスとサンが衝撃に驚き叫ぶ。

 騎士は落ちてきながら剣を構え、着地する瞬間回転し、地面を抉った。抉った地面はアリサに向かって飛んだが、アリサは全てかわし、真っ直ぐ騎士に向かって走る。騎士は少し後ろに下がり、盾を構える、アリサは真っ直ぐに剣を打ちおろすが、盾に弾かれる。騎士はそのまま盾で押し返すが、アリサはその攻撃を受け流し、騎士の頭上を通過しながら騎士の頭に蹴りを入れる。

「ぐっ!」

 騎士への初ダメージと、アリサの動きに会場は一瞬しんとなり、そして大歓声が上がった。

「今の俺に微量でもダメージを与える。君の先頭技術はBランク程度だろう。ステータスが追いついていないようだがね…」

 イテテ、と頭をさすりながら騎士がアリサに言う。

「合格だよ。」

 騎士の3度目のその言葉。
 次の瞬間騎士は動きでアリサの剣を弾いた。

「ッ!!」

 ヒュンヒュンと回りながら宙を舞い、俺の目の前に落ちてきた。

「次は君だよ。」

「粋な演出しやがって…」

 あの野郎余裕だな。

 その試合の様子をやっと理解した審判が手を振り上げた。

「試合終了!!!」

 審判の号令とともにアリサが手を抑えながら歩いてきた。

「大丈夫か?アリサ。」

「大丈夫よ、少し痛めちゃっただけ、次はアレクね!あの騎士、すごく強いから頑張って!」

 強い。たしかにあの騎士はすごく強いが、本気を出しても大丈夫なのだろうか…
 あからさまに俺のステータスは高い。
 
「どうしたのアレク?」

 …いや、考えても分からないな。それにさっきの奴の攻撃、俺も見えてないんだ。本気で行かなきゃやられちまうかもな。

「いや、なんでもない。頑張ってくるよ。」

「うん!頑張って来なさいよね!」

 俺は仲間達の声援と、会場内の観戦の中、騎士と向かい合った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。 凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。 だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった…… 同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!? 一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...