13番目の神様

きついマン

文字の大きさ
51 / 69
二期 三・五章

悪魔の加護

しおりを挟む
 クレイスが悪魔と契約したのは、まだクレイスがA級だった頃の話である。
 契約することになった理由というのは、後述するが、一言でいえばアザゼルにそうするよう仕向けられたのであった。

 +A級になる前より人類最強と謳われていたクレイスは、魔王ルシファーの復活を望む悪魔達には邪魔な存在となった。
 監視役アザゼルはその存在をいち早く見つけ、自分のものにしようと考えたのだ…


―数年前―

「クレイス、あなたにしか頼めない依頼が来ているわ。」
 
 コロシアム内にあるギルドの掲示板で依頼を物色している俺に話しかけてきたのは、このギルドの看板娘であるシルキーであった。愛嬌のある笑顔と真面目なときのクールな顔のギャップに、ここのギルドを拠点にしている男性冒険者はデレデレである。
 彼女はこのギルドの受付嬢であり、冒険者でもある。受け付けの仕事はもちろん、剣の腕も確かで、兼業にも関わらず冒険者ランクはC級である。

「俺にしか頼めない依頼?」

「ええ、調査の依頼みたいね…。」

 クレイスに慢心はないが、自分の強さをよく理解していた。今まで鍛錬を怠らなかった自信と、クエスト成功率100パーセントの実績がその強さを裏付けしていた。

 つまり、そんな俺にくる依頼というものは、正真正銘代行が立てられないものであると理解していた。

「俺にくる調査…?変異種か新種か?」

「よくわかったわね、エスパー?」

 そういって笑うシルキー。綺麗な目に吸い込まれそうになる。
 毎度のことで予想がついただけだ、と目をそらす。

「どこに行けばいいんだ?」

「キルドの森見たいね、ここにくる途中の行商人がその魔物の影を見たらしいわ。」

 細かい情報はこの書類に書いてあるわ、とシルキーは俺に髪の束を渡してきた。
 その書類にはこう書いてあった。

*調査依頼(変異種可能性あり)*
 場所:キルドの森
 依頼者:行商人ゼル・ビークス

 私はカーヴァスの町と行き来している行商人なのですが、今回新たな素材をカーヴァスで仕入れたのでアルケイデスに数ヶ月ぶりに向かっていました。その際に、いつもの様にキルドの森の道を通っていたところ、いつもは襲ってこないボアの群れが襲ってきたのです。
 ボア程度なら…これでも行商人として多少の心得はあるのでなんとかなったのです。
 ただ、どうやらそのボアの群れは、違う魔物から逃げてきたようでした。
 追い払っても追い払っても森の奥から走ってこちらに向かってきてきりがありませんでした。
 さらには上位種のボアアークまでもが見えてき始め、さらにこちらの明かりの燃料も心もとなくなってまいりましたので、一度引き返し遠回りの別の道からはるばるやって参りました。
 通れないだけならまだいいのですが、あの量のボアやボアアークが逃げてきて、カーヴァスやアルケイデスにまで被害が及ぶと大変です。
 どうか、この不思議な現象の主を調査し、討伐していただきたく思います。

ゼルより


「…なるほどな。」

 一通り読み終わった俺は書類をシルキーに返し、親指を突き立て…

「俺に任せておけ!必ず解決してみせよう!」

 そう啖呵を切るのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。 凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。 だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった…… 同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!? 一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

処理中です...