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二期 三章
結末
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「血咲花」
呟き、アリサはクレイスへと一直線に踏み込んだ。
踏み込んだ地面は抉れ、壁は反動で所々崩れている。
さらに、高速で動く剣先からは、かまいたちのような風が吹き荒れている。その風は洞窟内に傷をつけて行った。
クレイスはアリサの姿が見えていなかった。
気づいた時にはすでに…
腹部に冷たい感覚が走っていた。
時間で言えば一秒未満。数メートル離れていた彼女が消えて、次の瞬間。荒れる洞窟とともに彼女が目の前に現れていた。
「カハッ…」
血反吐を吐き、腹部から吹き出すように血が大量に流れでる。
まるで、体に咲いた一輪の花のように、血は舞う。
「貴方の血で、この枯れた洞窟に花を。」
「貴様…!実力を…隠して…いたのか…!」
クレイスが血を吐きながらアリサに聞く。
「隠してないわ。貴方が、私をこうしたのよ。」
アリサはそう答える。
アリサの目の色は元に戻っていた。
つまり、クレイスに、致命的なダメージを与えたというわけになる。
「終わりにするわ。」
アリサが剣を引き抜こうとした時、後ろから声が聞こえた。
「クレイス!!!」
叫び声の主は綺麗な女性だった。
「シルキー…来ちゃ、だめだ!!」
クレイスは忠告するが、シルキーは問答無用で迫ってくる。
「誰だか知らないけど、離れて!!」
ものすごい剣幕で迫るシルキーに気圧され、剣を離して離れた。
クレイスに駆け寄るシルキー。
どうやら治癒魔法が使えるようで、剣を少しずつ引き抜きながら魔法を使っている。
「どうして…こんなこと…」
シルキーは涙を流しながら聞く。
「彼は私の大切な人に同じことをしたのよ。」
シルキーは少し無言の後、クレイスに「本当?」と聞いた。
クレイスは静かに頷いた。
「なぜそんなことを…!」
「お前を…なんとしても…助けたかった…。そのためには悪魔の…やつの肩を…持つしかなかった…。」
クレイスは続ける。
「現に、奴は魔法陣完成のために…他の奴らを皆、すでに生贄に捧げていた…」
「…次はおそらく…ダインか、お前だったんだろう?」
話を聞いていたアリサは反応の少なさの意味がわかった。
すでに贄にされていたのだ。
「そうだけど…貴方が手を汚す必要は…!」
「時間がなかった…だろ…?がはっげほっ!」
血反吐を吐きながら離し続けるクレイス。
「それでこんなことになって…恨みを買って……、貴方って私が絡むと本当にだめなんだから…」
「それよりも…逃げろ…、お前じゃあいつには敵わない…俺もおそらく…死ぬ。」
クレイスは治癒魔法をかけ続けるシルキーに逃げるよう促した。
「そんな…そんなこと…!」
その一部始終を見ていたアリサが割って入る。
「死にはしないわよ。殺しちゃったら仕返しになってないもの。」
そう、アリサはクレイスを殺す気は無かった。
「死ねだのなんだの言ったけど、本当に殺すほど狂っちゃいないわよ。ただ、貴方は殺す気でアレクを切ったでしょ?その仕返しよ。」
シルキーは困惑している。
死なない?クレイスの傷を見るがどう見ても致命傷だ。
「でもこのままじゃ死んじゃうじゃない!!」
「治癒魔法をかけ続けて。ダインとかいう人も連れて街に戻るわ。」
「戻ったからって…!」
「私の仲間に治癒魔法が得意なやつがいるの。」
アリサはクレイスに向き直る。
「そいつのおかげであんたを殺さなくて済んだのよ、感謝しなさい。」
アリサはまだ怒りが収まっていなかったが、なんとか噛み砕いてそう言った。
「どういう…ことだ…?」
「…アレクが生きてるから、あんたを殺さなかったのよ。」
つまり、アリサは最初から殺す気などなかった。
もちろん殺したいほど憎んではいたが、アレクは事実死には至っていない。
これで恨みのまま殺して仕舞えば、さらなる恨みを生むことを理解していた。
人を呪わば穴二つ。
そうなることはわかっていた。
さらに、クレイスを戦闘不能にした事のさらなる意味もあった。
「貴方、悪魔に魂を売ったでしょう?」
「よくわかったな…、どうしてだ…?」
「見たのよ、ステータスを…」
アリサは洞窟で最初に剣を交えた時、心眼でクレイスを見た。
クレイスのステータスが見れた。
攻撃力、防御力、体力…そして…
「アザゼルの加護!!」
クレイスは悪魔の加護を受けていた。
それも、ベリアルではなく、アリサの仇であるアザゼルの加護を…
呟き、アリサはクレイスへと一直線に踏み込んだ。
踏み込んだ地面は抉れ、壁は反動で所々崩れている。
さらに、高速で動く剣先からは、かまいたちのような風が吹き荒れている。その風は洞窟内に傷をつけて行った。
クレイスはアリサの姿が見えていなかった。
気づいた時にはすでに…
腹部に冷たい感覚が走っていた。
時間で言えば一秒未満。数メートル離れていた彼女が消えて、次の瞬間。荒れる洞窟とともに彼女が目の前に現れていた。
「カハッ…」
血反吐を吐き、腹部から吹き出すように血が大量に流れでる。
まるで、体に咲いた一輪の花のように、血は舞う。
「貴方の血で、この枯れた洞窟に花を。」
「貴様…!実力を…隠して…いたのか…!」
クレイスが血を吐きながらアリサに聞く。
「隠してないわ。貴方が、私をこうしたのよ。」
アリサはそう答える。
アリサの目の色は元に戻っていた。
つまり、クレイスに、致命的なダメージを与えたというわけになる。
「終わりにするわ。」
アリサが剣を引き抜こうとした時、後ろから声が聞こえた。
「クレイス!!!」
叫び声の主は綺麗な女性だった。
「シルキー…来ちゃ、だめだ!!」
クレイスは忠告するが、シルキーは問答無用で迫ってくる。
「誰だか知らないけど、離れて!!」
ものすごい剣幕で迫るシルキーに気圧され、剣を離して離れた。
クレイスに駆け寄るシルキー。
どうやら治癒魔法が使えるようで、剣を少しずつ引き抜きながら魔法を使っている。
「どうして…こんなこと…」
シルキーは涙を流しながら聞く。
「彼は私の大切な人に同じことをしたのよ。」
シルキーは少し無言の後、クレイスに「本当?」と聞いた。
クレイスは静かに頷いた。
「なぜそんなことを…!」
「お前を…なんとしても…助けたかった…。そのためには悪魔の…やつの肩を…持つしかなかった…。」
クレイスは続ける。
「現に、奴は魔法陣完成のために…他の奴らを皆、すでに生贄に捧げていた…」
「…次はおそらく…ダインか、お前だったんだろう?」
話を聞いていたアリサは反応の少なさの意味がわかった。
すでに贄にされていたのだ。
「そうだけど…貴方が手を汚す必要は…!」
「時間がなかった…だろ…?がはっげほっ!」
血反吐を吐きながら離し続けるクレイス。
「それでこんなことになって…恨みを買って……、貴方って私が絡むと本当にだめなんだから…」
「それよりも…逃げろ…、お前じゃあいつには敵わない…俺もおそらく…死ぬ。」
クレイスは治癒魔法をかけ続けるシルキーに逃げるよう促した。
「そんな…そんなこと…!」
その一部始終を見ていたアリサが割って入る。
「死にはしないわよ。殺しちゃったら仕返しになってないもの。」
そう、アリサはクレイスを殺す気は無かった。
「死ねだのなんだの言ったけど、本当に殺すほど狂っちゃいないわよ。ただ、貴方は殺す気でアレクを切ったでしょ?その仕返しよ。」
シルキーは困惑している。
死なない?クレイスの傷を見るがどう見ても致命傷だ。
「でもこのままじゃ死んじゃうじゃない!!」
「治癒魔法をかけ続けて。ダインとかいう人も連れて街に戻るわ。」
「戻ったからって…!」
「私の仲間に治癒魔法が得意なやつがいるの。」
アリサはクレイスに向き直る。
「そいつのおかげであんたを殺さなくて済んだのよ、感謝しなさい。」
アリサはまだ怒りが収まっていなかったが、なんとか噛み砕いてそう言った。
「どういう…ことだ…?」
「…アレクが生きてるから、あんたを殺さなかったのよ。」
つまり、アリサは最初から殺す気などなかった。
もちろん殺したいほど憎んではいたが、アレクは事実死には至っていない。
これで恨みのまま殺して仕舞えば、さらなる恨みを生むことを理解していた。
人を呪わば穴二つ。
そうなることはわかっていた。
さらに、クレイスを戦闘不能にした事のさらなる意味もあった。
「貴方、悪魔に魂を売ったでしょう?」
「よくわかったな…、どうしてだ…?」
「見たのよ、ステータスを…」
アリサは洞窟で最初に剣を交えた時、心眼でクレイスを見た。
クレイスのステータスが見れた。
攻撃力、防御力、体力…そして…
「アザゼルの加護!!」
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