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三期 一.五章
一方
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アレク一同がレイムブルグに移動した同日。
魔王城も動きを見せていた。
「な、なんだ!!!」
玉座の間の方から自らの聴覚を疑うかのような爆発音が鳴り響き、アバドンは血相を変えて飛んで行った。
「あの場所は玉座の間…何が起きている!!」
玉座の間に近づけば近づくほど崩壊していくことに焦りを覚えるアバドン。全速力で玉座の間へと駆けつける。
「これは…?」
アバドンは目の前の凄惨な景色が現実だと受け入れるまでに幾ばくかの時間を要してしまった。
玉座が荘厳と置かれていた場所から部屋奥にかけて大きな穴が、空間そのものを千切られてしまったかの様に開いていた。暗い、外は夜。雷雨の夜だ。
「ア…アバドン様…。」
目の前で横たわる悪魔がすがる様に手を伸ばしてきた。
彼はアモンダ。玉座の間を見張っていた悪魔の一人。
「アモンダ!これはどういうことだ!!」
「アバドンさ…ま…、私は…もう…」
「アモンダ!!」
アモンダは悪魔の象徴である『羽』を片翼失っていた。普段は魔力で隠している羽を出してまで全力で戦った、もしくは逃げたことが伺える。
羽を失った悪魔は魔力の調整が上手くできなくなり、生きながらえることはできない。
「この様な……!誰が、誰が出来るというのだ!!」
アモンダをここまで追い詰めることが出来るものは、少なくともこの世界にはそういないはずであると考えたアバドンは周囲に目を向けながら叫ぶ。
取り乱したアバドンは玉座のあった場所に目を向けると闇に紛れて何者かが佇んでいることに気付いた。
「誰だ!!!」
アバドンは叫んだ。
「…」
雷鳴が轟き、閃光が走る。
一瞬照らされた部屋、佇んでいた者は
「悪魔…?」
天高く羽を伸ばした悪魔だった。
その悪魔は玉座の場所、つまり魔王の封印されていた場所付近に立っていた。
また、雷が落ちる。
今度はハッキリと姿が見える。
アバドンは、涙していた。
「アバドンか、久しいな。」
後ろを向いていた姿が正面を向く。アバドンの目からは何百年ぶりの涙が流れていた。
「あ、貴方様は…!ルシファー様!」
ルシファーと呼ばれた青年程の男性の容姿をした羽の大きな悪魔は、まだ魔力が安定しておらず、羽と尾を出したままその場に、つまり玉座のあった場所に胡座をかいた。
「…すまない。朦朧とした意識の中で、魔力の枯渇を感じてしまい、そいつらを喰ってしまった。」
ルシファーは尾で肉片とアモンダを指した。
「滅相も御座いません。私が食事を用意できなかった事に問題があります。また必要とあれば…」
アバドンは既に事切れていたアモンダを地面に寝かせ、片膝をつき喰われるのを待った。
「いい、貴様は喰わん。」
「申し訳御座いません。失礼いたしました。」
支配者然とし、一瞥もせずそう吐いた。
「…この気配。この世界に神が堕ちているのか?」
手を握ったり開いたりしながらアバドンにルシファーが問う。
「…はい。恐らくは神の『使い』といったところでしょうか。」
「ふむ…」
ルシファーは硬く握った拳を顎にあて、思考する。
「まだ放置しておくか。この弱さ、大したことは無いだろう。私は復活の羽休めとしよう。」
顎に置いた手を開きながら前に出すルシファー。その手には眩い程の魔力が集まっていた。
「ルシファー様、何を?」
「なに、玉座の間をお片付けしようとな。」
そう呟いたルシファーの手から放たれた閃光は、闇を包み込んだ。
それはアバドンの目を怯ませるのには充分で、その一瞬で、
「…流石です。『復元』ではなく、『遡行』とは…」
ルシファーが部屋の時を戻すには充分だった。
「ふ…」
魔王は少し笑いながら玉座に座った。
魔王城も動きを見せていた。
「な、なんだ!!!」
玉座の間の方から自らの聴覚を疑うかのような爆発音が鳴り響き、アバドンは血相を変えて飛んで行った。
「あの場所は玉座の間…何が起きている!!」
玉座の間に近づけば近づくほど崩壊していくことに焦りを覚えるアバドン。全速力で玉座の間へと駆けつける。
「これは…?」
アバドンは目の前の凄惨な景色が現実だと受け入れるまでに幾ばくかの時間を要してしまった。
玉座が荘厳と置かれていた場所から部屋奥にかけて大きな穴が、空間そのものを千切られてしまったかの様に開いていた。暗い、外は夜。雷雨の夜だ。
「ア…アバドン様…。」
目の前で横たわる悪魔がすがる様に手を伸ばしてきた。
彼はアモンダ。玉座の間を見張っていた悪魔の一人。
「アモンダ!これはどういうことだ!!」
「アバドンさ…ま…、私は…もう…」
「アモンダ!!」
アモンダは悪魔の象徴である『羽』を片翼失っていた。普段は魔力で隠している羽を出してまで全力で戦った、もしくは逃げたことが伺える。
羽を失った悪魔は魔力の調整が上手くできなくなり、生きながらえることはできない。
「この様な……!誰が、誰が出来るというのだ!!」
アモンダをここまで追い詰めることが出来るものは、少なくともこの世界にはそういないはずであると考えたアバドンは周囲に目を向けながら叫ぶ。
取り乱したアバドンは玉座のあった場所に目を向けると闇に紛れて何者かが佇んでいることに気付いた。
「誰だ!!!」
アバドンは叫んだ。
「…」
雷鳴が轟き、閃光が走る。
一瞬照らされた部屋、佇んでいた者は
「悪魔…?」
天高く羽を伸ばした悪魔だった。
その悪魔は玉座の場所、つまり魔王の封印されていた場所付近に立っていた。
また、雷が落ちる。
今度はハッキリと姿が見える。
アバドンは、涙していた。
「アバドンか、久しいな。」
後ろを向いていた姿が正面を向く。アバドンの目からは何百年ぶりの涙が流れていた。
「あ、貴方様は…!ルシファー様!」
ルシファーと呼ばれた青年程の男性の容姿をした羽の大きな悪魔は、まだ魔力が安定しておらず、羽と尾を出したままその場に、つまり玉座のあった場所に胡座をかいた。
「…すまない。朦朧とした意識の中で、魔力の枯渇を感じてしまい、そいつらを喰ってしまった。」
ルシファーは尾で肉片とアモンダを指した。
「滅相も御座いません。私が食事を用意できなかった事に問題があります。また必要とあれば…」
アバドンは既に事切れていたアモンダを地面に寝かせ、片膝をつき喰われるのを待った。
「いい、貴様は喰わん。」
「申し訳御座いません。失礼いたしました。」
支配者然とし、一瞥もせずそう吐いた。
「…この気配。この世界に神が堕ちているのか?」
手を握ったり開いたりしながらアバドンにルシファーが問う。
「…はい。恐らくは神の『使い』といったところでしょうか。」
「ふむ…」
ルシファーは硬く握った拳を顎にあて、思考する。
「まだ放置しておくか。この弱さ、大したことは無いだろう。私は復活の羽休めとしよう。」
顎に置いた手を開きながら前に出すルシファー。その手には眩い程の魔力が集まっていた。
「ルシファー様、何を?」
「なに、玉座の間をお片付けしようとな。」
そう呟いたルシファーの手から放たれた閃光は、闇を包み込んだ。
それはアバドンの目を怯ませるのには充分で、その一瞬で、
「…流石です。『復元』ではなく、『遡行』とは…」
ルシファーが部屋の時を戻すには充分だった。
「ふ…」
魔王は少し笑いながら玉座に座った。
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