13番目の神様

三期 一章

移動と本

　俺がそれから開口一番に発した言葉が「もともとこの世界の人間ではない。」という言葉だった。
　この場にいる数人は驚いた表情を見せたが、アリサとセリスは迷い人と知っているためあまり驚いていなかった。
　この世界には他にも俺のような迷い人と呼ばれる人達がいるらしいので、驚き方も「あ、お前そうだったんだ知らなかったわ」程度の驚きだった。

「迷い人ってだけじゃないだろ？」

　ゲインが聞いてくる。もちろんそれだけじゃない。

「ここから先が本題、本筋だ。」

　俺はこっちの世界に来るに至った経緯を話し始めた。
　彩人と言う名のしがないサラリーマンだったことに始まり、死んで転生したこと、そして…ペルセポネと約束したこと…全てを話すことにした。

「俺はこの世界の災厄である、魔王ルシファーの復活にともなって、精神力の強い魂として転生させられた。そのルシファーを没するためにな。」

　変わらない沈黙、より張り詰めた空気が漂う。そんな空気を切り裂くように続けて話す。

「その時、俺はおそらく力を授かったんだ。過去の…勇者のような強い力を…。」

「アレク・サンダー…」

　アリサが呟いた。

　過去、勇者アレク・サンダーが魔王ルシファーを倒したという話がアリサの故郷で言い伝えられてきた。
　勇者が魔王を…という上っ面だけは世界的に広がっている話ではあるが、名前は子孫にしか伝えられてなかったようで、名前を聞いた皆(セリス以外)はポカンとしていた。

　そして俺は続ける。

「俺のその力の名前にもアレク・サンダーと入っているんだ。」

「ふむ、ではやはり新しい勇者はお前になるの…ん？お前どうしたんだその手の光は…？」

　ゲインが指をさしながら俺の右手を指差す。目をやると自分の手の中心がわずかに光っていた。

「な、なんだ？？」

　それと同時にストレージバッグが光る。俺は恐る恐る手を入れた。

「多分これが光ってるみたいだ。」

　俺がバッグから出したのはゲインからもらった古書だった。取り出した古書からは小さな光が漏れている。
　その光は徐々に手の光とともに強くなり始めた。

「うっ…！目が…。」

　かなりの強さの光を発し始め、周りのものが見えなくなり始めた。そして…

「ここは…？」

　最初に声をあげたのはシルキーだった。その声に合わせて俺も目を開ける。

　光り輝く壁画が見えた。

　この壁画の存在を知っているものが、少なくとも四人はこの場にいる。

「レイムブルグの洞窟…？」

　アリサが壁画を手でなぞりながら呟く。前に来た時はよく見えなかったが、なんとなく面影がある。
　光があり、描いてあったものがよく見える。

「これは…魔王を示唆しているのか…」

　俺が見たそれはとてつもなく歪で、不安になる、最低最悪な顔をした悪魔の絵だった。

「こんなのは初めてだが…何はともあれレイムブルグに早戻りできたのは間違いねえ！皆、村に来てくれ！」

　俺たちは楽観的なゲインに当てられ、少しクスッと笑い、出口へと急いだ。