13番目の神様

きついマン

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三期 一章

クレイスとゲイン

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 宿に着いた俺たちはシルキー達と合流して、レイムブルグの件をクレイスに話した。

 クレイスはゲインの名を聞いて「あの音害野郎来てたのか!」と顔をニヤッとさせてそう言った。

「誰が音害野郎だ!!」

 扉の向こうで声が聞こえ、どうやら廊下にゲインがいることがわかった。

 シルキー達のお詫びと言うのが、先程頂いた報酬金と情報だった。

 情報と言うのは、前回の悪魔…つまりアザゼルと対面したときの奴の話していたこと。
 それに、今回の件についても…だ。

 ベリアルという悪魔の強行、壁画の活性とともに魔物の活性。
 クレイス達の時の魔物の活性の関係性。

 考えられることを全て話し、聞いた。

「考えたところで、裏で何が起こっているかわからない。まずはレイムブルグを救う。早朝出発でいいか?皆。」

「いいわよ。」
「はい。大丈夫ですぅ!」
「いいぜ。」

 ゲインが俺たちを見つめ、涙を流した。
 
 きっとこれからの戦いは贖罪で、俺が仲間たちにかけた迷惑を返上するために戦うのだろう。
 だが、それは世界のことを考えるよりも頭は冴えるし、確かなものを守れる。

 そんな気がしていた。

「ところで、二人はどう言う関係なんだ?」

 ゲインとクレイスの関係が気になった俺は一息ついて尋ねてみた。

「ああ、説明してなかったなぁ!俺とクレイスは元チームメンバーだぜ!!」

「本当ですかぁ!?あの…」

 話を聞いていたセリスが身を乗り出して興味を示した。
 その反応を見て大体の予想がつく。

「閃光の暁!!」

 やっぱりだ。厨二的センスのチーム名。正直好きな感じだが、ここは郷に入っては郷に従えだ。

「やめてくれ、その名は…」

 ゲインとクレイスの反応は予想通り、昔の自分を見つめ直すような顔をしていた。すごくわかる。

「俺たち二人は、若い頃その通り名で猛威を奮ってたってわけだ。俺はこう見えても、元B級冒険者だからな!!」

 楽しそうに話すゲイン。
 だが、この会話から先ほどの『裏で起こっていること』が少しわかった。
 悪魔側はクレイスとアリサ、前から二人を狙い続けている。
 一見大規模な攻撃で無差別に見せかけてはいるが、その攻撃の中心には必ず二人がいる。しかも、だ。
 アリサは過去、自分の出生の地を襲われた。
 クレイスは過去…説明するまでもないが、加護を受けさせられ、現在では恋人をさらわれた。
 話が前後するが、ゲインの村であるレイムブルグにベルゼ・ブブが居たこともおそらくクレイス絡みだろう。
 
 そんな彼らは悪魔に生かされて居る状況だ。その理由は何か、となると一つしか思いつかない。
 奴らの親玉であるルシファーと恐らく切っても切れない関係がある。
 その関係を無しにする条件としては、恐らく『アリサ、クレイスの二人が生きたまま、奴らの手に渡る。』事が必要な条件なんだろう。
 その為、ルシファーの復活の兆候が見えたあたりから二人が狙われ始めたと言うわけだ。

 そして、今回も。

 例外は無く、ゲイン…つまりクレイスの元相棒絡みだ。クレイスが動くと分かっているんだろう。

 敵の手の内から逃げる方法なんて全く考え付かないが、穴はある。

 それが俺だ。

 最初にアザゼルと対面した時に彼(?)は言っていた。
『神の反応を確認したから急いで来た。』
 さらにベルゼ・ブブも
『忌まわしき神の救世主。』
 これから考えられるのは…、まあ憶測の域を出ないが、俺の存在はとりあえず悪魔側にとって最悪のイレギュラーという事だ。

 アリサが子供、クレイスが加護を貰った頃から俺が現れるまで全く行動を起こさなかった悪魔側が、神の反応を探知した途端に姿を現し始めた。
 単純にルシファーの復活が活況に入ったと言うのもあるだろう。今まで裏で手を回して来た奴らにしては、俺に対する作戦があまりに杜撰な気がする。それはやはり、急いでいるからだ。

 まとめると、今悪魔側は俺の存在を脅威に感じ、アリサとクレイスを可及的速やかに回収したいというわけだ。穴をつくにはここの一点だ。憶測だがな。

 …だからその事を、これから頼ると決めた仲間に話さなければならない。

 そう悩む俺にゲインが尋ねた。

「俺たちの話はしたんだ、お前の話も聞かせてくれよ。」

「話って、何を?」

「お前のだよ。」

 村長を務めるだけあって…、さらに言えば人類最強の友だけあって、流石の観察眼だった。
 恐らく俺が何かを隠していると直感的に読み取ったようだ。

 そろそろ全て話さないといけない時のようだ。

「…全て話すよ。俺のおかれている状況を…。」

 緊迫した空気が張り詰める。そこに俺は続けてこう聞いた。

「だが一つだけ…。俺は、仲間だ。俺は皆を信頼してる。だから、全て話し終えた暁には、俺を信頼してほしい。」

 仲間を信頼すると誓った俺にとっては重要な事だった。

 その俺の問いに対する皆の答えは

「当たり前」

 だった。
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