13番目の神様

きついマン

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四章

死地

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 「ぜあああ!!」

 俺は気絶した2人を優しく置き、気合とともに奴の元へ跳ぶ、ベルゼは動いていない。

 この時、ベルゼも少しアレクを認め、警戒していた。勇者の子孫もまだまだ未熟だった。神の奴らが送りつけて来た救世主も、私には及んでいない。魔術師だろう奴は動けすらしない。他のゴミどもと一緒に思っていた。

 だが、アレクが思わぬ力を見せた時、ベルゼは卑下から警戒にかわった。

 この為、油断をしなかった強者ベルゼは、おそらくまだ未熟である者の攻撃にあたることはなかった…ハズ、だった。

 全力でふり抜かれたアレクの拳は、ベルゼの頬をえぐった。

 ベルゼは完全に捌ききったはずだった。全力で迎え撃った。

 それをアレクは超えてきた。

「頬に…傷…?」

 それ故、ベルゼは驚愕していた。油断は確かにしていなかった。

「貴様、何をした?」

「さあな、俺も分からねえが、力が湧いてくる。」

「その急成長もか…もともと生かして帰らせる気は無かったが、なおさら生かしてはおけんな。」

 2人を守りたいと思ったら力が湧いてきた。

『神化モード:アレク・サンダー勇気ある者
 
 頭に声が響いてきた。どうやらスキルが変わったようだ。

『これにより、神化の段階を一つ上げる。20%の力を解放。派生スキル:勇気を取得。』

 続けて響いてきた。
 …スキル:勇気、あいつに立ち向かう勇気が湧いてくるのも、このスキルのおかげだろうか…

「行くぜ、悪魔。」

「かかってこい、三下。」

 言い終わると同時にベルゼは姿を消した。俺は先ほどと同様に気を張る。脳内に鮮明な映像が流れてくる、セリスの光魔法で見ていた時よりも明らかになるフロア、ベルゼはかなりのスピードで腕を振り上げ俺に向かって来ている。

「引き裂く!!」

 目の前にベルゼが現れ、鋭い爪を突き立て、腕を振り下ろして来た。俺は少し身を後ろに下げギリギリで躱した。かなりのスピードで間一髪のところだ。

「くっ!」

 その躱した体勢を低くして足払いをかける、ベルゼはそれに気づき少しジャンプした。

「かかったな!」

 体が浮いたところに拳を突き上げるが、ボディにあたる寸前で受け止められた。

「何!?」
 
「甘いですね、そんな浅知恵じゃ…」

 突き上げた勢いをそのまま、掴まれた拳を引っ張られぶん投げられ、壁に思い切り衝突した。

「ッ!!」

「やられませんね。」

「こっちのセリフだ!」
 
 衝突した壁を蹴り、ベルゼへの距離を詰める。ベルゼが猛スピードの俺に対して蹴りを入れた瞬間に体を捻り躱して横へ着地。

「なにっ…!」

 ベルゼが体勢を整える前に横腹に蹴りをいれる。
 蹴りを受けたベルゼが吹っ飛ぶ、俺は地面を蹴り追い討ちをかけにいく。

「がはっ…!くそっ!!どこへいった!!」

 ベルゼは空中で静止した。おそらく魔法の一種だろう。ベルゼは俺を見失っている。ここしかない。

「うおらっ!!」

 空中浮遊しているベルゼの頭に右拳を振り下ろす。奴の頭を完璧に捉え、垂直に叩き落とす。

「ガハッ…また加速した…?」

「これで終わりだ!!」

 そのまま落ちる勢いを使い、奴に蹴りを放つ。
 



ー寒気。

 叩きつけられた状態のままのベルゼから圧倒的な力を感じた。

「あまり調子にのるのは、感心しない。」

「私が、暴食の大罪を背負っている意味がわかってないようですね。」

「私は結界も何もかも喰らってしまうんですよ。そう、何もかも。」

 これは近づいてはいけない。そう本能で感じていたが、この体勢はもう変えられない。

悪食イーター

 ベルゼがそう唱えた瞬間、俺の蹴り足は。何もない空間に食われたのだ。

「ガァァァァァア!!」

 俺は痛みで、そのまま地面に落ちた。

「足が…足…がぁぁぁ!!!」

「悪運の強い男ですね。食べ残してしまいました。」

 あ、これは流石に死んだ。勝ちようがない。
 俺はまた死を覚悟していた。おそらく今の俺では、絶対に勝てない…ましてや、足が一本ないなんて、勝てるわけない。

「調子にのるからこうなるんですよ!!!」

 やられる!!

 そう思った瞬間ベルゼは俺にトドメを刺す前にピタリと止まった。

 そしてガタガタと震え始めた。

「あぁぁぁあぁあ、申し訳ございません。申し訳ございません。頭に血が上っておりました。の許可なく大罪を使用した事についての罰は受けますので、どうかお許しください…あぁぁぁあぁあ…」

 ブツブツ言いながら、洞窟の出口へ歩いていく…助かったのか?

「逃すわけ…ないじゃない!!」

 いつのまにか気を取り戻していたアリサが、ベルゼに斬りかかる。
 かなりまずい!アリサじゃ、一瞬でやられてしまう!!

「アリサ!やめろ!!!」

「はああっ!!」

 止めたが、もう遅かった。振り下ろした剣は鋭くベルゼに向かい…そして、腕を切り落とした。

「ひいいっぃ!!申し訳ございませんルシファー様!!申し訳ございません!!」

 何があいつの身に起こってるんだ?!腕を切り落とされても一心不乱に出口に向かっている。

「絶対に逃がさ「アリサ!!とまれ!!お前じゃ無理だ!!」」

「無理でも!!ここで逃しちゃレイムブルグが!!」

「多分大丈夫だ、そいつはすぐに魔王の元へ帰るさ…それに、レイムブルグをわざわざ襲わせていたわけではないはずだからな…」

 完全にベルゼは見えなくなった。助かったみたいだ…

「どういう事…?」

「話は後だ…それより助けてくれ…動けないんだ…」

「!!アレクあなた、足が…!!」

 近づいてきたアリサが、俺の姿を見てとんできた。

 

 その後、セリスが気を取り戻し俺の足を治した。彼女いわく「完全には治すことはできないですぅ…」らしかったのだが、俺の足は完璧に治ってしまった。問題なく歩ける。おそらく神化の影響だろう。

「気がついたらアレクが死にかけてるんですもの…私気が動転しちゃって…」

「私もまた気絶するかと思いました…」

 二人のそんな間の抜けた声を聞けるのも、今回死地と呼べる場所を潜り抜けることができたからだ。

 二人の声を聞いていると安心してくる。

 そして俺は気絶した。
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