13番目の神様

きついマン

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四章

話し合い

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「ここは…村の宿?」

 目が覚めると、前に宿泊したレイムブルグの宿屋の天井が目に入った。…知ってる天井だな。

 …どうやらベルゼ・ブブと戦った後、俺は気絶してしまったようだ。

「って言うことは、ここに俺を運んでくれたのは二人か…そういえば二人はどこに?」

 二人のことも心配なのでそろそろ起きようと身体を起こした瞬間、昔見た著名な絵画のような美しい絵が目の前に広がっていた。

 俺の寝ているベッドの横に、二人が座り、寝ていた。窓から差し込む朝日が二人を美しく照らし出している。かの有名な光の魔術師を想像させる。

 「……」

 俺は息も忘れて、目前の美しい景色に見とれていた。そんな俺の気配に気づいたのか、アリサが目を覚ました。

「んん…アレク…?…!目を覚ましたの!?よかった…」

 先程、見とれていた女性に心配されるのだ。こんなにドキドキすることはない。 

「おかげさまでな、二人がここまで運んできてくれたんだよな。ありがとう。そして二人が無事でよかった。」

「お礼ならセリスに言いなさい。睡眠もとらずにアレクに治癒魔法をかけ続けていたのよ。」

「セリス…」

 そう呟き俺はまだスヤスヤと眠っているセリスを見た。余程疲れているのか、これだけ横で喋っていても起きる様子がない。

「アレク、セリスが起きたら話があるの。」

 アリサが真剣な目で話す。正直、俺も話したいことがある。これからのこと、謎が多すぎる今の現状。魔王が復活した際の影響。いろいろな話をして、今後を決めないといけない。

「俺も、あるよ。…そうだな、まだ疲れが残ってるし、もう少し休んでからだな。」

「そうね…」


……
………

 半日後、俺たちは宿の食堂で話し合っていた。

「これからどうすんだ?全くもって不本意なんだが、これから何度も襲われるんだろうなぁ…」

 俺はこれから先のことを考え、頭を抱えながら話を切り始めた。

「そうね…勇者の子孫に、勇者と同じ名前の迷い人。きっと魔王側にとっては面白くない話のはずよね…」

 俺とほぼ一緒の姿勢でこれから先を悩むアリサ、二人で重いため息をついた。

「私怖いですぅ…また動けなくなっちゃいそうで…」

 セリスも習って同じ姿勢でため息をついた。

「そこでだ、これから鍛えないか?」

「鍛える…?」

 これは今の戦闘力を見ての考えだった。今の現状を見ても、どうしたって平穏な生活をおくることができない。だったら平穏に暮らせるくらいに強くなってやろうという訳だ。
 …だいたい俺はどこまで不憫なんだ?転生する前は通り魔に殺され、転生後は神とか名乗る奴に急に世界を背負わされ、そのせいで命を狙われ始め…
 不幸すぎないか?とある小説の不幸な高校生の言葉を借りてこう言いたい。

「不幸だ…。」

 俺のつぶやきを聞いたアリサが「どうしたの?」と聞いてきた。

「い、いや、なんでもない。それより鍛える件だ。どうかな?」

「悪い話じゃないと思うわ。」

「私も賛成ですぅ。」

「決まりだな!」

 話がまとまったところで、宿の扉が開き、村長が入ってきた。

「オメェら!無事だったみてえだな!」

「なんとか、な。そういえば、村の方の被害は?」

 洞窟に向かう前に見た景色は、良いものではなかった。かなりの被害が出てなければ良いが…

「お前達のお陰で被害は最小限におさまったぜ、村の長として礼をするよ。」

 俺の二倍はある身体を曲げて、村長は礼をした。(礼の文化あったんだな。)

「いやいや!こっちも身を守るために戦ったんだ、そんな大したことしてねえよ!!顔上げてくれ!」

 「そうか」と言って巨大な村長は顔を上げながら懐から何かを取り出した。

「代わりと言っちゃあなんだが、これを持っていってくれ。」

 そう言って村長が渡してきた物は、小さな本だった。

「本?」

「ああ、この本はこの村一番の歴史ある古書だ。旅をするお前達の何らかの役にたつだろう。」

「歴史的に価値があるものじゃないのか?いいのか?」

「ああ!他でもねえ、お前達だからな!」

 そう言うと村長は本をやや強引に俺に渡した。
 
 俺は渡された本を数ページめくって目を疑った。

「これ…ほとんど白紙のページじゃないか!!」

 本の中は最初の方だけに何か書いてあり、後半は白紙だった。

「ああ、だが確かに歴史あるものだ。」

 俺にはどう価値があるかわからないが、何かの役にはたつかもしれない。好意を無駄にしたくもないし、貰っておこう。

「…ありがとな、使わせてもらうよ。」

 本を渡した村長はニカッと笑って、「後でウチこいよ!歓迎してやる!」と残して宿を出ていった。

「豪快だな、変わらず…」

 気を取り直し話を戻す。

「それで、これからのことだが、少しずつ鍛えていく方針で良いか?」

「そうね。焦ってもしょうがないわね。」

「私も役に立てるよう頑張りますぅ…」

 これで今後の方針も決まった。正直これから先、どうなることか…


 …俺の異世界生活、どうなるんだ…?




 …この時、本に変化があったのだが、それに気づくのはまだ先のことだった。
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