【本編完結】私のツガイが「他の男にも抱かれろ」と言って来るので戸惑ってます(後日談投稿しました)

天狼本舗

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異世界

17. “封印の地”へ

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転移陣が解けて周りが見渡せるようになると、そこは巨大な花崗岩がいくつも転がっている山の中の、少し開けた場所だった。
空気がひんやりしていることから、標高の高いところに来たことが分かる。
その開けた土地の奥の大きな岩の前に、たくさんの人が集まっている。彼らが着ているマントから察するに、退魔師、魔術師、冒険者。普通の人っぽく見える人たちは・・・、あれが考古学者かな?

オウガに連れられて近寄ると、そこにはテロークの手前の街道で出会ったオーク系の魔術師アッシュや、ファルエストのギルドで話した退魔師エンソルの姿もあった。

彼らの横に並び、綻んだ“封印”とやらを確認する。
とにかく一番に目を引くのは、みんなが取り囲んでいる中央に空いた、真っ黒の空間。直径5メートルくらいの円形。
そこから例のゴーストが、ひゅん、ひゅんと現れては、てんでバラバラに直進し始める。それを黒の生地に赤のラインで縁取りされたマントを羽織る退魔師たちが、次々と光の円で“足止め“しては“昇華”している。“足止め“には魔術師たちも参加していて、中には女性の魔術師も何人か居る。
“昇華“されたゴーストは、黒から白のモヤにその色を変え、まるで重力から解き放たれたかのようにキラキラと輝きながら空へと昇って行く。
それは綺麗な光景ではあったけれど、何せひっきりなしに出現するので、観賞している暇も無さそうだった。

「昨日見た時より、出現の頻度が短くなってるな」

オウガが隣りでつぶやく。



この黒い円の周りに視線を走らせると、所々に割れたり倒れたりした岩がある。
とりあえず、手近なところに立っている無傷の岩を確認する。すると、穴に面する側の表面に、非常に簡単な図形的なモノが描かれていた。例えるならば、・・・割れた“くす玉“?

その次の岩は、倒壊していて図形は判別出来ない。

その次のはひときわ大きな岩で、そこには丸をいくつかの直線で区切ったような図形が、何個も、何種類も並んでいる。・・・けど。

「あ、読める」

「「読めるのか?!」」

オウガと一緒に、考古学者らしい男性が驚いたような声を上げた。

「うん・・・。なんか古文みたいな文面なんだけど・・・、簡単に訳すと・・・」


『ここは魔術師見習いの修行・練習の場所。
練習の最中に、それぞれが発動していた別々の呪文が、偶然にも混じり合い、見たこともない大きな魔術を発動してしまった。
結果、ここに穴を開けてしまった。
それを、苦心の末みんなで力を合わせて封印した。封印には、古来より伝わる童歌わらべうたを用いた』

「「童歌わらべうた?」」
「古来から伝わる童歌って、どれのことだ?」
「色々あるよな」

手の空いている面子が揃って頭を抱えている。


ゴーストを“足止め“、“昇華“している仲間たちの間をすり抜けて、続いて次の岩を見に行くと、こちらは少しの破損で済んでいて、その表面には先ほど見た“くす玉“を180度ひっくり返したような模様が描かれていた。

その次の岩は倒壊していたものの、表面の模様は読み取れて、それは半円の斜線部分が45度傾いているものだった。

そして最後の大きな岩。
こちらにはまた言葉が刻まれていて、そこには

「広範囲足止め・時渡り・範囲拘束・異界渡り・限界突破・転移陣・固定・・・」

と、何やら魔法の名前っぽいものが書かれていたけれど、そこから先は岩が崩れていて読めなかった。

「穴を開けてしまった魔術を発動したときに、見習いたちが練習していた魔法の一覧ですかねぇ」

「多分そうだろうな」

「それにしても、なんともはた迷惑なことを。呪文を重ねて空間に穴を開けてしまうなんて前代未聞じゃないか」

ため息をつく魔術師の横で、オウガが少し遠い目をしている。
うん、オウガは時と空間を超えて、異世界に居た私の魂にまで関与しちゃったもんね。
・・・って、オウガってかなりチートな魔術師ってコト??


「おーい、こっちにも何かあるから、見てくれないか?」

と反対側の大きな岩の後ろでアッシュが呼ぶので、もう一度その岩の所に戻る。古文で“封印の経緯“が書かれていた岩だ。

「ここ、ここ。岩の後ろ」

そう言って指を差した先に、まるでイタズラ書きのように、短い分が斜めに彫られている。そこにあったのは

「“かごめかごめ“?!」

見間違いようの無いで、そう書かれていた。

「かごめかごめ? ってなんだ?」

アッシュが首を傾げて聞いてくる。

「うーんと、童歌わらべうた? こんな感じの」

『かごめかごめ、籠の中の鳥は、いついつ出やる。
夜明けの晩に、鶴と亀が滑った。
後ろの正面だぁれ』

私が歌うと、オウガが手を打った。

「“魔鳥を囲め“、か?!」

「“魔鳥を囲め“?」

私が問うと、近くに居た女性魔術師が歌い出した。

『魔鳥を囲め。閉じた鳥は、いつ逃げる。
夜中の日の出に、リンゴが割れる。玉子が割れる。
後ろの正面に要注意』

それを聴いた考古学者が、「そうか!」と叫んだ。

「あちらにある(くす玉みたいな)のが“りんごが割れる”で、向こうの(半円の斜線部が45度)のが“夜中”の月、向こうのあれ(上向きのくす玉みたいなの)が“玉子が割れる”だ。向かい合ったふたつの岩が、対になってるんだ。
・・・と言うことは、あの倒壊して判別出来ないのは“日の出”だ!! 
良し! これで再封印出来るぞ!!」

「「おお~っ!」」

「「よっしゃ~~~~っ!!」」

辺りから歓声が上がる。



「ちょっと待って!」

喜ぶ面々に、慌てて声をかける。

「“後ろの正面に要注意“、は?」

みんなが、「はあ?」と言う顔で私を見る。

「あの文面が書かれた大岩の“後ろの正面“、つまり真後ろに当たるのは、あの“使われた魔法“が書かれた岩だな」

オウガが答えてくれる。

「うん。・・・私、思うんだけど、この文章を残した魔術師見習いたちは、“再封印“ではなく、いつかここを訪れる、力ある魔術師たちに、ここを閉じて欲しかったんだと思うの。だから、その時使った魔法をわざわざ書き残したんじゃないか、って」

「なるほど・・・。しかし、そんなことが出来るのか?」

退魔師エンソルが、ゴーストを“昇華“させながら魔術師たちの顔をぐるりと見渡す。

「例えば、かけた鍵魔法を解除する時みたいに、かけられた魔法を解除することは出来ないの?」

オウガにそう聞く。

「それは、出来る。ただ、判別出来ない部分の魔法が・・・。あまりに昔に発動した魔法だから、その痕跡を読み取れるかが分からない」

チートな魔術師であるオウガがそう言うなら、無理なのだろうか?
そう、思った時。

「まずは、やってみようぜ」

魔術師アッシュが、明るく声を張り上げてくれた。

「そうだ、やってみようぜ。大陸の中でも特に実力のある魔術師が、今ここにこれだけ揃ってるんだ。俺たちに出来なくて、誰に出来る?」
「そうだな、やってみよう」
「私は“範囲拘束“の解除をやってみるわ」
「じゃぁ、俺は“時渡り“の解除を」
「じゃぁ、私は」
「俺は」
「“魔力の目“で、書かれてる以外の魔法も探ってくれ~」

魔術師の面々が、「よっしゃぁ~」と明るい声を上げながらあちこちで魔法の“解除“を始めたり“魔法痕跡鑑定“を始める。


「・・・大丈夫かな? 私、余計なことを言ったんじゃ無いよね?」

ちょっと心配になってオウガの顔を見上げると、オウガは笑いながらキスしてきた。

「全然! こんなに一気に、解決への道が開けるとは思わなかった。ありがとう、リサ」



“魔力の目“で、古い魔法の痕跡を探すオウガに寄り添いながら周りを見ていると、あちこちで解除魔法の模様が立ち上がり、「出来た」「やった!解除!」と声が上がる。
その声が増えるに従って、徐々に中央の穴の大きさも縮んで行っている。上手くいきそう?

「あった。“異世界サーチ“」

そう言ってオウガが立ち止まり、解除魔法を展開し始める。
オウガが指で描く魔法の痕跡が、私の目にはキラキラとした光の粒に見えた。
そう言えばここに来る時に使ったオウガの転移陣も、ふわりと浮かんで見えた。周りのみんなが使ってる魔法の模様も、光として視えている。

・・・もしかして、私の魔力保有量が増えたから、色々視えるようになった、とか?
と、ちょっと期待してオウガの身体の中を視てみたけど、ツガイ同士に視えるという“魂の光“はまだ視えなかった。残念。


次にオウガが“異世界からの召喚“魔法を見つけ、それを解除し終えた時、穴の方から「完全に閉じたぞー! みんなー! お疲れーっ!」と叫ぶエンソルの声が響いた。


振り返ると、大勢の面子が穴のあった場所を囲んでいる。
私たちも近寄って確かめると、そこはもう、崩れた岩の転がるただの地面へと姿を変えていた。

「やったな!」
「さすが俺たちだな!」
「すっげー達成かーん!!」

ハイタッチして喜ぶ人々を見て、私も嬉しくなる。私自身は、何もしなかったけど。


とその時、近くでドサリと音がした。
驚いて目をやると、華奢な魔術師の女の子が、血の気を失くした顔を歪めながら倒れていた。

「ローザ!!」

近くに居た女性魔術師が、慌ててローザと呼ばれた女の子に駆け寄る。

「まずい! 魔力が暴走して、循環が乱れまくってる。このままじゃ、いずれ魔力爆発を起こしちゃうっ!!」

魔力爆発?! それって、ファンタジーなんかでよく聞く、あの魔法爆発?!

「誰か! 調整師! 魔力調整師は居るか!?」

「オ、オウガ!?」

何故か呆然としているオウガの腕を、バシバシと叩く。
すると、ふっと表情が戻ったオウガが、慌てて叫んだ。

「オレが! 調整出来る!」








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