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【よん・Ⅳ】
乙女ゲーム・第二王子様が!転生者編②
しおりを挟むもう……なんでああ子供っぽいの?第二王子様は外面だけは良いのよ。婚約者時代も、エスコートなどは完璧だったの。痩せっぽちでチビの私は、夜会なんか出たくはなかった。でも将来ミラクルマスターとして働くには、貴族社会に顔を売る必要があったの。ミラクルマスターは国から各種優遇を受けている。もちろんそれがないと己の身に危険があるから。だから当然といえば当然の権利なんだけど、なにも知らない人から見たら面白くないわけよ。
さらには後ろ楯もないお取り潰しになった家の娘が、第二王子様の婚約者だからね。でもこの婚約も必要だった。闇組織の残党が私を探していたから。だから王家に一時的に取り込まれたの。第二王子様はそれらをキチンと聞いていて、期間限定の婚約者を納得したはず。現在は無理矢理な婚約を、王家では許可しない。今の王が仕出かしたことが問題となり、当人同士の意見がかなり加味されるようになったのよ。
だからこそ不思議なの。最初は悪いくらい気を使ってくれて、なにかと私を助けてくれた。歩行訓練を手伝ってくれたり、多勢を怖がる私のためにと、二人きりでのお茶会を開いてくれたりもしたの。もちろん全てがリハビリのためよ。お互いにそう納得していたわ。好意だって微塵も感じなかった。なのにいきなり変わったのよ。婚約期間も後一年切った辺りかしら?
その日は私がお城の廊下で、侍女たちに囲まれて凄まれていたの。お城勤めの侍女は皆貴族のお嬢様だったりするから、変にプライドが高いのよ。今なら私も言い返せるけど、当時の私は誰かの影に隠れているタイプだったから、苛めのターゲットには最高だったのでしょう。小突かれてすっ飛び、壁に打ち付けられる寸前に、誰かに庇われた。第二王子様が、私を抱き止めて壁からクッションになってくれたの。おかげで私はなんともなかったんだけど、第二王子様は頭から血を流して気絶してしまった。狼狽える私に散り散りに逃走する侍女たち。誰か呼ばないと!と必死で立ち上がる私の腕を、第二王子様がいきなり掴んだの!良かった!目を覚ましてくれたの?ウルウルしながら第二王子様を見たら……
『お前はこれから食って太るのか? 急に太るとブタになるぞ。しかし……随分貧相な小娘だな……本当に育つのか? まっ平らだぞコレ?』
……私の手を引き寄せ抱き抱えて、身体中を撫で回しながら突然コレよ?頭がイカれてしまったのかと心配したわよ。しかしお医者様はどこにも異常はないというのよ……
それからはすっかり今の性格になってしまったの……私の前限定だけど。しかし意地悪率が高すぎなのよ!紳士的な王子様がいきなりガキ大将にジョブチェンジよ。王家に保護されたばかりでまだまだ体力も気力もなかった私に、無理矢理ダンスを何曲も踊らせるわ、あちらこちらと連れ回しヘロヘロにするわ……。
さらには疲れて私が高熱を出して寝込んでいると、ずぶ濡れの大きな葉っぱやカエルを額に乗せていくのよ!看病してくれるつもりなら、お医者様にキチンと聞きなさいよ!
ハンカチならまだしも……まぁ濡れた葉っぱも多目にみるわ……しかし今だからみれるの!当時はバカにされているのかと憤慨したわよ。さらには生きたカエルをよ!しかもあのカエル! 前後の足を固定されてるの! しかもお腹が額にくっついて離れないものだから、頭も痛いのにブンブン振り落としたわよ! でもまた寝てると乗せられてるし!口の方に向かって落ちてきた時には、さすがの私も悲鳴を上げたわ。王子様が白馬にのって、私を助けに来てくれた。なんて夢を見ていた私の純情を返して!この似非王子ーー!
「もういたずら小僧としか思えないわよ! 第二王子様のバカタレーー」
「それは酷いな。なら大人としての魅力と誠意を見せなくちゃね」
ちょっと!なんで戻ってきたの?
「余計に嫌です!これからは私の係りは女性にして下さい。他の仲間のお世話係は、皆同姓じゃない! 意地悪王子は嫌! 絶対に嫌だから! 」
「フローラ……私が真面目に大人しく対応している内に諦めようね。残念だけどそれだけは無理だよ。他のことなら何でも叶えてあげる。なんなら今晩から泊まりにくるよ。一人は寂しいし怖いよね?昔みたいに添い寝してあげる」
確かに!私が部屋でビクビクしていると、第二王子様がやってきて、絵本を読んで一緒に寝てくれたわ! でも!
「お兄ちゃんありがとう! って抱きついて来て、私が抱えると頬ずりしながら寝ったじゃない……」
確かに!でも第二王子様より……
「ごめん。第一王子様の読み聞かせの方が上手だったし、胸板も厚くて気持ち良かったわ……」
「なっ……兄貴も潜り込んでたのか? 」
ううん。私は首を横にふる。
「ほっ。だよなー。さすがに読み聞かせだけだよな。心配したわ! 」
「…………」
「その沈黙は何だよ!まさか? 」
「 第一王子様だけとはないわ。第五王子様と三人では良く寝たわよ。第五王子様は雷が怖くてよく潜り込んで来ていたの。寝たころに第一王子様が探しに来るのよ。私が第五王子様を宥めながら抱っこして寝ていると、第一王子様が前に来て弟の頭撫でながらそのままね。なぜか朝になるといつも、私は第五王子様を抱えたまま、一緒に第一王子様に抱えられて寝ていたけれど……」
「なんでだよー。フローラの当時の婚約者は私だったんだよ? その婚約者の添い寝は避けられるのに、他の奴らは良いのかよ! しかもいつの間にか婚約は解消されちゃってるしー。フローラのケチンボー。愛してるのにーー」
かなり話し方が砕けて来たわ。真面目な喋り方の第二王子様とは、本音が分かりにくくて喋りにくいんです。
「婚約は私を保護するためにと、三年間の約束だったのよね? ミラクルマスターになって解消されたわ。いつのまにかって……解消の手続きの時は、一緒に教会へいったじゃない。それに添い寝は夜中にモゾモゾ動くんだもの。寝相の悪い子とは嫌です」
「そっそれは…………察してくれ。それに悪い子はないだろう。私の方が年上だし、以前はお兄ちゃんと呼んでくれたじゃないか」
……モゾモゾを察していいの?
「第二王子様は貧相でまっ平らな小娘にモゾモゾしていたの? ならロリコンじゃない。王子はボンキュッボンな女性が好きなんでしょ? いつも聞いていたから、知っているわよ」
「あっ当たり前だ! 私はロリコンではない! ついついあのボンキュッボンを思いだし……って違う! ついつい憎まれ口を……それに緊張して……」
(いや違うんだ!あれは……フローラだから……)
「なーんだ。やはりそうなんじゃない。ならやはり子供だったのよ。夜中に緊張しておしっこに行きたがるなんて、悪い子呼びで十分です」
「あー……もういいよ。私がすべて悪かったんだ。しかしあの自称ヒロインのように、自滅はしたくはないからな……フローラ私はって……おぃ……」
一発決めようとしているのに……その顔は無いだろうが……
「にゃによぅ……モゴモゴ……なんで自称……(もぐもぐ)ゴクン。ひょい(パクっ)ウマー。ヒロインが……うぅ……」
「その頬袋の中身を食べてから話せ。それから来週夜会がある。ミラクルマスターは全員出席だ。お前の成長を知らせる為でもあるから、必ず出席すること」
えー。めんどくさーい。
「ちなみにパートナー同伴だ。フローラの相手は私がつとめる」
えーなんでー。
「拒否権はないの?」
「ない! 決定だからな。逃げるなよ。明日からドレスの採寸にダンスレッスンだ。時間がないから忙しいぞ。ちなみにその猫も連れていって構わない。キチンと待ても出きる優秀なモフ白魔猫らしいからな」
モフ白ちゃんも連れて行けるなら……
「ミラクルマスターは全て自己紹介をする。その際に必ず一緒に紹介しろ。でないとただの猫として、会場から放り出されるからな」
「はーい。了解です。モフ白ちゃんにも、私とお揃いのケープとか作ろうかな? なら追い出されないよね?」
「それは良いな。なら私が明日の仕立て屋に頼もう。ついでだから作って貰えばよい。皆でお揃いだな」
皆で?モフ白ちゃんと私だよ?
「では決定だ。会場入りからエスコートする。パートナーは任せたぞ」
「……はい。了解です……」
あら?ドタバタドタバタと、廊下を走る音が響いてきます。第二王子様が舌打ちをしましたよ?いったい誰でしょう。廊下を走ってはダメですよ。
「フローラ! 夜会のパートナーになってよ! あー兄上! そのイチゴのタルトも! もしかしてフローラってば買収されちゃったの?」
買収って……決してイチゴのタルトを食べたからではありません!拒否権なしだと言われたからです!
「諦めろ。お前には既に相手がいるだろう。ドタキャンは可愛そうだぞ。しかし戻ってきて正解だったな。フローラが落ち着いた頃に戻ったら、お前に先を越されていたわ」
「……酷い……兄上の卑怯もの……わざと従妹を呼んだくせに……僕はあんなクソガキはのエスコートなんてイヤだーー!」
王子様たちの従妹姫ってもしかしてあの……第五王子様ご苦労様です。
「わーん。フローラまで可愛そうな子を見る目で僕をみてるよー。みんなのバカーー!」
バタン!とドアを蹴りあげて、嵐のように第五王子様は走り抜けてゆきました。第五王子様ごめんなさい。
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