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【よん・Ⅳ】
乙女ゲーム・第二王子様が!転生者編③
しおりを挟む鏡の前の自分を見る。ジッと見る。はぁ……やはり慣れないわー。いきなり体が成長したから、慣らすための訓練はしたの。だって今までの気分で出歩いていると、妙な所で躓いたりぶつけたり、下手したら角を曲がりきれなかったりするのよ。視線の高さから歩く歩幅まで代われば、確かに仕方の無いことなんだけど……肩こりだけは予想もしていなかった。
ドレスの胸もとを飾る、チュールレースを引っ張って覗いてみる。…………凄いわー。確かに成長して『ボンッ』にはなったけど、今日のコレは更にその上を……
「フローラ様。いかがでしょうか? 我々の最高技術を施させていただきました! まだあどけなさを残しながらも滲み出るお色気。お可愛らしいお顔をいかしながらも、思わずむしゃぶりつきたくなるような蠱惑的な唇。抱きしめたら折れそうな腰のくびれに、ついつい顔を埋めたくなるような胸もと! 素晴らしい素材に! 磨かなくとも光る素材! しかしながら磨けばさらに光り輝く極上品に!! 久々に私どもも燃えました! ご衣装も! お化粧も! すべて完璧でございます!!」
こ……蠱惑的に埋めたくなるって…… 極上品って……やはり商品的な……
「むしゃぶりつかれても嫌だ……でもこんなにしめたら苦しいし、こんなにもよせて上げなくても良くない?」
コルセットキツいし……折角のパーティー料理が入らなくなりそう。胸も上げすぎ!しかもこれじゃ、ダンスの時に見えちゃうじゃない。いくらチュールで覆っていても、スケスケでは意味がないわよ!
「良くなくありません! 本日は大切なお披露目です。確かに磨かなくとも選り取りみどりではあります。しかし美の見せ惜しみはいけません! それにフローラ様は普通のお嬢様たち程には、しめたり寄せ上げたりはしておりませんよ。胸は見映え良くするために寄せただけ。腰も骨盤を矯正する補正下着のみです」
「そうです! 他の方々はもっと大変なんですよ! お腹のお肉を潰して巻いて、さらに紐を数人がかりでしめるのです。胸は背中のお肉まで集めて寄せ上げます。不足は布地を詰めるんですから! あれでは絶対に食事なんて出来ませんよ!侍女が私たちのように二人だけなんてあり得ないのです。…………様なんて五人ががりで締め作った括れにダメ出しをされ、さらに倍の侍女を増やし更に締めたんです……」
…………確かに胸がスカスカは恥ずかしいかも。括れも無くては、ドレスは似合わないわね。今まで私も布を巻いたり詰めたりしていたし……でもあれは借りもののドレスだったからでは?仕立てて貰った唯一のドレスは、ペタンコも上手く隠すデザインだったのに……
「お疑いですか? ならば今から更に美しく磨きあげましょう! 王子には料理を食べられる程度にしてやってくれと言われましたが……隣室に……」
「「「お任せ下さいませ!私たちは我慢していたのです! お仕度をしたくてウズウズしております!」」」
突如続き部屋のドアが開き、五人の侍女さんたちが流れ込んで来ました。
「え……なんで……?」
お風呂とマッサージの際の手入れをしてくれた侍女さんたちが、なぜまだお隣の部屋に?
「フローラ様には今回七名ついています。ですが王子のお言葉で、あちらの五名は待機になりました。では折角ですので、ウエストをあと五センチ光りほど絞りましょう。胸の下もスッキリしますから、ブラもワンサイズ上げましょう」
いーやー!侍女さんたちが、わらわらと集まってくるー。ぐえぇー。ウエスト苦しいー。うわぁ……そのブラは流石にでかくないですか?ウエストを絞って括れた分に、垂れないように下から寄せあげるの?寄せるだけではなく上げるも増えるから、ボリュームアップしたようにバストメイクが出きると……奥深いのね?って!止めてー。苦しいってばー!
補正下着は確かに助かります。急の成長で腰や関節に負担がかかっているそうだから……肩こりが酷いと言ったら、何だか背中がひきつるような胸当てを用意されたの。姿勢も良くなるし肩こりにも効くらしい。確かに楽にはなりました。
「で……このドレスの趣味は……」
「あ! それはもちろんパートナ……「マイハニーお待たせー」ーの……いらしたようです……」
第二王子様が出たよ……
「おー。やはり似合ってるね。胸もとと背中は大胆だけど、カラーで若さを引き立たせ、レースとパールで可憐さを醸し出す。大人になりきる前のフローラ。可愛すぎる! さあ私のこの胸に飛び込んでこい!」
「………………」
「フローラがしらけてるにゃん!」
「そんなー。マイハニーはつれなすぎる。こんなに愛しているのにー」
「愛の言葉が軽すぎるにゃん! それではフローラには届かないにゃん」
「それは失礼致しました。それでは後程ゆっくりと、私の愛を伝えましょう。ではフローラお手を。会場では既に皆様がお待ちかねですよ」
さ……寒い……どうしよう。鳥肌が収まらない……
「フローラ! 私を抱っこするにゃ!」
モフ白ちゃんが私の膝に飛び乗った。
「ヒートにゃあぁぁーん!」
モフ白ちゃんから白いモヤのようなものが立ち上る。それが暖かな空気となり、私の周囲を包み込む。
「暖かい……」
「どうにゃん? 収まったにゃ?」
あ……鳥肌が収まってる。モフ白ちゃんありがとう。ギュっと抱き締める。
「フローラ寒かったの? 空調効いてるのに?」
「王子の台詞が臭いにゃん! だから寒イボが収まらなかったにゃ!」
「……ひ……酷いにゃん……」
王子様がモフ白ちゃんの真似をしても可愛くありません!
*****
煌めくシャンデリア。豪華な装いをした紳士淑女の集うパーティー。しかし豪華絢爛と言うだけではないの。季節の変わり目に開催される、このミラクルマスターの集いは普通のパーティーとは全く意味が違うのです。
成長するまでは私には全く関係なかったから、壁の花してモリモリ食べてたんだけど……
「フローラ? 緊張しなくて大丈夫。変な心配もいらないよ。そのための私だからね。だからフローラも少しは私に優しくしてよ。魔猫が……」
「くっつき過ぎにゃん!」
第二王子様が私の腰を引き寄せすり寄ってくるから、寄せ合う肩にモフ白ちゃんが乗ってくれたの。嫌なら少しは離れてください。密着しすぎです。
私たちは上座に座る王様とお妃様にご挨拶をし、促されるまま席へと着席します。席順はミラクルマスターのランクにより違うの。簡単に言えば魔力量と技術の違いね。ミラクルマスターとしての仕事は、主を失った彷徨うインベントリを開くこと。たとえ開けるマスが一つでも、ミラクルマスターは名乗れます。しかしその開くマスの数や主との念話 。そして主の具現化などのオプションがつくことで、ミラクルマスターの価値やランクが上がるのです。
地位は、ダイヤ・ルビー・クリスタル。そして見習いのリングたち。力の発現を認められ一年の訓練期間終了で、ミラクルマスターとしてのノーマルリングを与えられます。このリングはミスリルで作られており、王家の紋章をアレンジしたミラクルマスターの印が刻まれています。これは魔道具でもあり、指示役となる王子たちとの通信や仕事をする際のサポートもしてくれます。
そしてさらには功績などにより、三段階の宝石の名が与えられます。それがダイヤ・ルビー・クリスタルなの。与えられた名の宝石が、ミスリルリングの中央に嵌め込まれます。この指輪はミラクルマスターの身分を保証し、王家の庇護下にあることを示すもの。宝石を嵌め込まれることにより一人前と認められ、長期出張する仕事も認められます。我々にとっての、もしものときの印ろう代わり。
この指輪自体が魔道具なので、もちろんサイズは自動調整の上に持主識別機能付き。腕を切り落とされても、指輪は持ち主の元に戻ります。死んだら王様の所ね。一気に体が成長した私でも、サイズを気にする必要もありません。しかしこの宝石は大きいよねー。このサイズを発掘するのも大変だろうな。魔石なら簡単なのに、わざわざ宝石にする意味って……まあ良いや。タダだしね。
それからもう一つ。この地位には宝石ランクにより男女は問わず、一代限りの貴族位が付いてきます。ダイヤで伯爵位、ルビーで子爵位、クリスタルで男爵位となります。世襲では無いため、子供に爵位は譲れません。王宮貴族ってやつよ。治める領地を持たずに、つとめる王宮から給料を貰う。但し退職まで勤めあげた場合と、殉職した場合は、一つ下の爵位を子に残すことが出来ます。また大手柄を挙げれば、世襲貴族にもなれます。
しかしミラクルマスターの能力は遺伝とは全く関係ないのです。次代に爵位を繋げても、余り意味がありません。でも殆どの仲間は結婚しちゃうんだよね。特に女性の場合は結婚するのが義務みたいになってる。それが今からのパーティーなの。
ミラクルマスターの女性は体内保持する魔力量が多い。または効率よく働かせることができる。これらは子孫に遺伝しやすいの。そしてミラクルマスターを派遣するための機関には、貴族たちが沢山の寄付をし運営を支えている。国中を網羅するには、王家だけでは無理らしい。それは確かに解るし、私たちはその恩恵を受けている。だからといって、結婚を強制されたくはない。一応任意となっているけど、仕事が多忙で行き遅れやすいミラクルマスターの女性にとって、貴族との婚姻は魅力的。王家の後ろ楯もあるから、ろくでもない政略結婚や無理やりもない。望まれると女性も喜んで結婚しちゃうから、仕事がしたいものによってはキツいの。
あーあ。正直出たくないのにー。
まあ。そのための虫除けなんだけど……そのための盾が……彼では……
私の場合は特に複雑なのよ。
少しは私の気持ちも考えて欲しいわ!王子のオタンコナス!!
*****
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