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【よん・Ⅳ】
乙女ゲーム・第二王子様が!転生者編⑧
しおりを挟むキングのリードでダンスフロアの中心に躍り出る。まったくキングは目立ちたかりで困ってしまう。でも気遣いが出きる人だから、意外にも男女ともに誰にでも人気があるの。
「さすがのキングね。ど真ん中で私を持ち上げ、クルクルと回しちゃうなんて凄いわ。私たちってば注目の的よ。また私がお嬢様がたに恨まれちゃうじゃない」
「これくらい……私のとっさの動作に素早く反応し、回転しながらも周囲に手を振り、チラリズムで周囲を魅せてしまう。私よりフローラの方が、今日は視線を集めてるよね。しかしその踊り方は誰に教わったの? 生足はあまり見せて欲しくないな。もったいないよ」
チラリズム?あ……この服には動きやすいようにスリットが入っているから……
「足は揃えるわ。教えてくれてありがとう。以前は腰を抱えて持ち上げられてたから、足を閉じてバランスを取ってたの。今回は腰を支えられているだけだから、ジャンプと滞空に足を広げ過ぎたわ。体が成長したから、見える所は気を付けないとね」
はぁ……中々この体の成長に慣れないのよ。いきなり女性としての成長まで始まってしまったから、色々な柵や不都合も多いし……
「最近は今まで見向きもされなかった所からも釣書が増えたわ。でもね。それは結局私を子を産む道具としてしか見ていない。私の成長が遅延していた訳や、実家取り潰しの内情を知るならば、私がそんな釣書を相手にする訳がない。もし私に子が出来なかったら? 冗談じゃない! 私はそんなみえみえのバカたちと、結婚なんてしませんから! 」
「これは手厳しいね。でもそれなら安心だよ。それこそ私の愛するフローラだからね。我々ミラクルマスターには、繋げるべき柵はない。私だって公爵位なんていらないよ。そりゃ可愛い私たちの子の顔を見たい気もするけど、子は望まれ愛されて誕生するものだ。なるようにしかならないよ。君もお家再興なんて望んでいない。だから自由が一番だ」
キング……中々良いこというじゃない。
「フローラは結婚しなくても大丈夫。淋しくなったら私が抱きしめてあげるからね。いつまでもまっているから! では次はエースにバトンタッチだよ。アイツにはさすがに君を持ち上げる力はないだろうが……楽しんでおいで」
ダンスの曲の終了と共に、私の手はエースの掌に委ねられた。ナイスタイミングね。私はキングに会釈をし、エースに手を取られたままくるりと一回転。互いに顔をあわせてにっこり笑顔でご挨拶。周囲にどよめきが走る。エースの貴重な笑みをありがとうございます。曲が始まると同時に、やはりフロアの中心に踊り出る。もう……エースも目立つのが好きなのね……
エースは優しげな雰囲気なんだけど、普段はあまり笑わない人なの。だから女性には近寄りがたい人だと思われ易いけど、仕事は出きるし己にも厳しいから、男性に人気があるの。でも氷の貴公子様とか影では呼ばれていて、私だけに甘い微笑みが欲しいというお嬢様がたくさんいるわ。ちなみにキングは光の貴公子様よ。あの誰にでもニコニコ笑顔が堪らないそう。
ふーん。私は良くわからないや。
どうせね!私はチビクイーンとか影で言われてましたし!呪いで成長が止まったとか!幼女のくせに男性に色目使ってるとか!お城に留まると呪いが強まるから、巡回とは名ばかりの島流しを受けてるとか!
「幼女に色目使われる紳士なんているか! 巡回だって好きで行ってるの! 城から出せー! 私は呪いをかけられる謂れはないーー!」
エースに片手を支えられながら、クルクルと回転する。手をかえステップをかえながら、互いにクルクル回りながらフロア内を回る。
うわぁ……さっきのお姫様帰らなかったの?しかもお付きが増えてる? そうまでしてこのパーティーに出席したいの?なぜ?嫌な予感がする……姫様は下向いてるけど、先程私に言いがかりをつけた、従者らしき人がにらみつけてきてます。おーい。もう何事も起こりませんように……
「フローラ嬢? ダンスのときは、私のことだけを見て欲しいですね。貴女はもう幼女ではありませんし、呪いなんてもっての他です。もしものときは私が綺麗に排除して差し上げます。今目に入れたゴミも、直ぐに綺麗になりますよ」
き……聞こえていたの?声に出していたのかしら?
「貴女のことはお見通しです。ようやく一緒にお城勤めを楽しめると思ったのですが、この調子では直ぐにでも旅たちそうですね……まあ、丁度良い玩具が手に入りそうですが……」
すみません。やはり声に出ていたんですね。
そろそろ曲が終わりそうです。私たちはミラクルマスターの人たちの集まる場所に向かいます。ルビー階級の方々との語らいも必要です。
曲が終了したその時、会場内に悲鳴があがります。なにかあったのでしょうか?
「キャー! 誰か彼を止めて! お願い!!」
どうやらあの俯いていた姫様が悲鳴の元の様です。なぜか刃物を持ち飛び出し、私を睨み付けながら走り出す従者。他のお付きに止められながらも、必死に従者を呼び止める姫様。従者は真っ直ぐに私を目掛けて走り込んで来ます。姫様のお付きはなにをしているの?確かに姫様の安全が一番だけど、従者は姫付なのよね?下手したら国の問題になるわよ。
さすがにこれは不味いです。エースが私の前に立ち塞がり結界を張りますが、なぜか従者は結界を破り突入してきます。しかも己れの体にも結界を張っている様で、ぶち当たることに躊躇がありません。鬼気迫る顔をし迫る来る従者には、もはや私しか見えていないようです。
慌てて私はエースを突き飛ばし、自身の前に結界を張り巡らします。しかしこれでは破られてしまうでしょう。間を置かず重ねがけし、時間を稼ぎます。既にキングが従者の背後に回っています。さらには結界の重ねがけです。さすがに三枚あれば、突入の威力をかなり軽減出きるでしょう。しかし我々の結界は、本来ミラクルマスターの術を使う際に、無防備になる自身の身を守るためのもの。広範囲には使用できず、威力も大勢を守るためのものではありません。そのためミラクルマスターの皆も苦戦している様です。
「フローラ! もう少し耐えてくれ! 直ぐに兵士が突入する!」
キング!了解!私の結界頑張れー!
「フローラ嬢! 刃物の先には毒が仕込まれています。即死能力は無いようですが、致死量を喰らえば死にますし、刺し所が悪くても死にます。気を付けて下さい! 」
即死はしなくても、結局は死ぬんじゃない。まあ第二王子様がいるから、死ななきゃ大丈夫。
「フローラ! 危ない!!」
突如目前にナイフを振りおろそうとする従者の姿が見えた。まさか三枚もの結界を突破したの?違う!!わたしは慌てて自身に結界を張り直す。
「そこ! 扉前のトレイを右手に持った給仕を捕まえて! そのトレイは魔道具よ。魔力が漏れだしてる。多分それで従者か結界になにか……」
きゃあ!私はなにかに覆い被され壁際に吹っ飛ぶ。壁に背中を打ち付け、あまりの苦痛に顔が歪む。一瞬気を失っていたのか意識が朦朧とする。なんとか顔を上げるとそこには……赤く染まったナイフを振りかざすあの従者が……私は覚悟を決め敵の目を睨み付け目を閉じた。
「お願いやめて! 王子様を殺さないで! 私のお願いはフローラがいなくなることよ。なぜ第二王子様を刺したの? 命令を聞かないなんて許さないんだから! 死んじゃえ! バカー!」
理不尽な姫様の声がこだまする。
しかし痛みに襲われない。ドサリと大きな音がした。もしかして助かったの?ならばなぜ誰も声をかけてくれないの?そして……
吹っ飛んだときから私の膝に感じる重みは?そしてなぜあのナイフは赤く染まっていたの?私はどこからも血を流してはいない……
恐る恐る目を開く。目の先には己れの腹部にナイフを深々と刺し、床に転がる従者の亡骸。既に息がないのは見ただけでもわかる。
そして私の床についた右手には血溜まりが……まさか!でも誰が!?なぜ?どうして!
「第二王子様!? なぜ私を庇うんです! 私は死ななければ貴方に治して貰えるのに! スキルは己には使えないのに! バカよ! 誰か早く医者を呼んで! 魔法治癒師もよ! 」
もうなにがなんだかわからない。かなり深く刺されたのだろう。王子の真っ赤な衣装がどす黒く染まって見えるほどに、どんどんと血が吹き出している。なぜナイフを抜いてしまったの?血が止まらないわ。ねえ、どうしたら良いの?誰か早く助けて……
「フローラ……ごめん……この世界は前世の物語とはかなり違うから、このイベントは起こらないと安心してたんだ。心配かけてごめん。でも私は死な……」
「黙って。喋らなくてよいから。絶対に助けてみせるから! ふ……ふぇ……ぇん……」
壁に背を預け足を放り投げ座り込む私の腰に、腕を回し頭を半分のせたままの王子。その頭を撫でながらついつい嗚咽が……
「フローラ……お願い……泣かないで……」
「…………」
「…………」
「はいはーい。仲良きことは美しきかな? だけど今は離れてねー。王子もいつまでも痛いの我慢してるの辛くない? しかも毒付だよ。いくらフローラの涙が貴重でも根性有るよねー」
「ほらほらキングも! 若者を冷やかさないで下さい。王子も役得でしたね。フローラ嬢はそろそろ落ち着きなさい」
「本当だにゃん。間者たちは捕獲したにゃ。このトレイは破損の魔法を付加した魔道具にゃん。但し効果が弱いから、従者を媒体にしたにゃ。従者の体に纏わせていたんだにゃ」
もふ白ちゃんが雪ヒョウ姿で、トレイを持った給仕を咥えてきた。トレイは取り上げられ、第一王子様に渡された。
キングもエースもなにをのんびりしてるの?もふ白ちゃんは、そんなバッチイのをいつまでも咥えていてはいけません。ペッしなさい!
媒体?あ……なるほど……あの従者は己に結界を纏わせていたのではなく、破損の魔法を纏わせていたのね。しかしペンダント型にでもすれば良いのに。たぶん小さく出来なかったのね。……って違うー!今は王子の傷よ!お医者様は?魔法治癒師は?
「フローラ嬢……まだ気付きませんか? スキルは確かに本人には使用できません。ならフローラ嬢がリングを使用して差し上げれは宜しいのではないのですか? 」
…………あー!リングの石を変えれば良いんじゃない! 王子も早く教えてくれれば、苦しい思いをしなくてよいのに。もうバカ!と怒りたいけど、さすがにこれは私のミスよね。
第二王子様……
苦しいの我慢させてごめんなさい。
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