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【よん・Ⅳ】
乙女ゲーム・第二王子様が!転生者編⑨【画像つき】
しおりを挟む第二王子様の治療は別室で行われています。私は直ぐに我に返り、大急ぎでリングの石を変え、ベッドに横たわる第二王子様の傷口に手を翳します。同様にエースも翳してくれています。第二王子様の顔が苦痛に歪み、うめき声が漏れ冷や汗が滴り落ちます。侍女さんたちがパタパタと動き回り、清潔なタオルや喉を潤す吸いのみなどを用意してくれています。
もう……なんでこんなになるまで我慢を……
「そろそろ大丈夫でしょう。しばらく痛むでしょうが完治はさせません。後は自然治癒力に任せます。苦くて不味い生薬を、毎日たくさん服用して下さい。もちろん飲みきって下さい」
エースが医師が用意してくれた生薬を、ベッド脇のサイドテーブルの上に出します。まるでドドンと音が鳴るような量の生薬です。
「エース……本当にこれ全部なの? 」
「そうですよ。かなり深々と刺さりましたからね。すべてをスキルと魔法頼みにすると、自然治癒力が落ちます。魔法などへの抵抗力や、免疫力も低下するのです。まあ普通なら死んでますよ。クソ不味くて臭くて飲みにくい、生薬くらい我慢して下さい」
クソ不味くて臭くて飲みにくいって……確かに生薬は天然の薬草や魔物の内蔵などを原料としてるからわかるけど……でも普段エースが使う様な言葉では……
でもそうよね。致死量でなくても毒の塗られた刃物だもの。それをあんなに深々と……私の手のひらが触れたあの血溜まりの感触……
「王子……本当に良かった……無茶しないで……」
「無茶なんてしていない。フローラを守りたかっただけだから……私こそごめん。油断さえしなければ、未然に防げたのに……」
そういえばイベントがどうのと言っていたけど……
私たちが話をしていると、扉がノックされ、誰かが部屋に来たみたい。エースが相手をしてくれている。
「フローラ。これからのことは兄上たる王太子様にすべてを伝えてある。一応ザッとだけど、キングとエースにも伝えた。まさか起こるとは思わなかったから対策をしてなかったんだ。本当にごめん。でも皆が守ってくれるから……私が守れなくてすまない……」
「大丈夫ですよ。王子は心配せずに寝ていてください。フローラは被害者です。なぜ断罪される必要があるのですか? ありえませんよ」
エースが戻って来た。私と共にダンスフロアに呼ばれているそうだ。
でも断罪って……まさか兄の義妹の自称ヒロインが良く叫んでいたあの……
「自称ヒロインを覚えている? 今回はさっきの姫様が、追加ディスク版のヒロインなんだよ。そしてやはり我が国の五人の王子が攻略者。フローラは私たち五人の王子の幼馴染みで私の婚約者。そして前回と同じく悪役令嬢なんだ」
以前のあの自称ヒロインが話していたことと、同じ様な感じなのね。
「だがフローラは既に一度断罪されかかった。あのとき自称ヒロインには、私たちが誘導し両親のときの物語だったと曲解させた。しかし私の知っている物語では、あの断罪劇でフローラの家は本当にとり潰しとなり、一族は公開処刑となった。しかしあれは回避出来た! それにフローラは物語の様な性格でもないし、家族構成も環境もまったく違っていた。だから私はあの断罪をクリアすれば、フローラはもう大丈夫だとすっかり安心して……まさかオマケのバトル用のヒロインまでいるなんて……自称ヒロインがいないのに……なぜ真のヒロイン決定戦の、恋愛バトル用レースが始まるんだ……」
「良くわからないけど……つまり第二王子様には、あの自称ヒロインと同じく前世の記憶とやらがあるのね? さらにそのゲームだったかしら? そのオマケの物語のヒロインがあの姫様。王子と姫様の仲の邪魔をするのが、悪役の私なのね。でも物語の私は既に処刑されているのに、また悪役令嬢とやらなの? 生き返るの? 」
えー物語のフローラはヒロインが五人の誰を選んでも、幼馴染みの高飛車な傲慢お嬢様設定で共通の悪役なの? しかもゲームとやらはヒロインだけを変えられるオマケディスク付き。基本の五人をクリアし、四本のカギを集める。そのカギで違うヒロインをプレイ出きる。さらにはオマケのヒロイン四人をクリアすると、真のヒロイン決定戦という、恋愛バトルに参加する権利が与えられた。このゲームは本来ヒロインに成りきり、好きな攻略者を選び繰り返し一人で遊ぶもの。しかしカギを埋め込み、ヒロインまでをも選択できるオマケを付けた。
さらには五人のヒロインがオンライン上で、同時に遊べリアルな恋愛バトルが出きる場が、定期的に設けられていた。その権利獲得は、かなりの倍率だったという。
つまりはその物語のゲームとやらは、擬似体験というか夢みたいな感じなのよね?それにそこまで熱くなれるのが、私には良くわからない。まあこの世界には無いものらしいから、考えても仕方がないわね。でも物語と現実を一緒にするな!似ていると言っても、状況が全く違うじやないの!
【五人のヒロインたち】
▪男爵家の庶子で素朴なヒロイン。
(身分差シンデレラストーリー)
▪他国の姫様がヒロイン。
(初めて国外に出たパーティーで王子に一目惚れ。交易を進め王子たちの目にとまる)
▪地味っ子メガネ女子がヒロイン。
(学園で魔法研究に真摯に打ち込む姿に、王子たちが心牽かれ互いに認めあう。実はメガネを外すと美少女)
▪暗殺者がヒロイン。
(孤児のころに拾われ、暗殺者として育てられる。伯爵令嬢として学園に潜入し、王子たちにハニートラップをしかけ、逆に身も心も囚われてしまう)
▪才色兼備な男爵家の養女。(もとは高位貴族令嬢。訳ありで男爵家の養女となる。才色兼備で王子たちの目に止まる。自力でお家復興を成し遂げた)
王子様たちの数だけヒロインもいるのね。様々なヒロインの境遇で、物語を楽しみたいとの意見から、このオマケ機能が追加配信されたそう。なるほど……己が各種のヒロインになりきり、物語を進めてゆくのね。選択肢は多種多様で、終わりかたも多種多様だと。
「ふーん。色々と手が込んでいる割には、悪役令嬢は私だけなの? どうせなら悪役令嬢も変えなさいよ。手抜きじゃないの」
なんて言っても仕方ない。つまり今回は二番目の姫様がヒロイン。しかし交易なんてものはなし。まあこれは前の自称ヒロインのときも同じだからね。自力でのヒロインたちには、王子様たちとのたいした接点はなく、私においては全くなかった。
しかし無理やり断罪は始まった。自称ヒロインのときは前世の記憶があったから。無理やりにでも物語通りに進ませたかった。ならば今回は?
「今回の姫様は前世の記憶持ちなの?」
「かなり探らせたが、それはないみたいだな。単に私との婚約を断られ、他の王子たちにも邪険にされた。それで私たちとダンスを踊るフローラを攻撃したんだ。単なる逆恨みだよ」
声がした方を見ると、第一王子様がいつの間にか室内にいます。どうやら私たちが遅いからと呼びに来た様です。仕方ないですね。呼びだしには応じるしかありません。
「フローラ。こういう場合を、物語の強制力というんだ。世界が定められた方向へ、無理やり軌道を修正する。でもね。強制力はただのきっかけだと私は思う。だって未来はこれからじゃない。先が決まっているなんて可笑しいよ。それに私は前世から、悪役令嬢のフローラが大好きだったんだ。だって確かに高飛車で高慢ちきだけど、間違いはしていない。虐めだって身分的には、怒って当然のことだからね。悪役令嬢のフローラは意思が強く、何ごとにも人一倍努力していたんだ。今のフローラも同じだよ」
第二王子様……そうだよね。わたしは私だから……なにを言われても負けないよ。悪役令嬢なんかじゃないからね!
*****
会場に戻ると、すでにダンスホールは閉鎖されていました。お客様もほぼ帰宅されたそうで、第二王子様の治療は思ったよりも時間がかかったようです。会場の一部には縄がはられ、事件の現場がそのまま保存されています。ナイフを刺したままの従者も、そのままの姿で転がったまま……血溜まりの血液が固まっていないので、現場を保存するために、第四王子様の完全保存を使用しているのでしょう。
しかし……従者はなぜ死んだのでしょう。私を刺すつもりが王子様を刺してしまった。その後悔で自殺したの?あの腹部のナイフは、王子を刺したものと同一の品なの?王子を刺して抜いて自殺する様な時間があったのかしら?
「この人殺し! なぜフローラが生きていて私の従者が死ななくてはいけないの! 貴女が殺したのよ! 自殺なんて時間的に無理じゃない。なら正面にいたフローラしか犯人はいないわ! 早く捕まえてよ!!」
姫様がキッと睨み付け怒鳴り付けてくる。
……確かに位置的には私が真正面だから、刺すには都合が良いわね。でも王子が刺されたナイフを抜いて、私が従者を刺したと言うの?なら体勢的にも距離的にも無理よ。私の膝には王子の頭。足には体が乗り上げている。このままでは王子のナイフにすら手が届かず抜けないわ。それでも私が刺したと言うのなら、従者に刺さっているナイフは私が用意したというの?それに従者が第二王子様を刺したナイフはどこにいったのかしら?
第一王子様が大きな声で喋りだします。
「今から現場をリバースする。今回は我が王家の秘術の大盤振る舞いだ。もしもすべての責任がそちらの国にあったならば、こちらも相応の対応をさせていただく。なんならそちらの国王と宰相にも来て貰おうか? 招待もされずに潜り込む。さらには暗殺者に間謀まで手引きするとは! 」
「なっなにを仰るのか! いくら王太子様とはいえ、我が国の姫様に失礼であろう! 我が国は従者を殺害した女を引き渡せば文句はいわん。女一人のことで、なにを大袈裟なことを……」
「女一人のことか……ふっ貴様らは、今全面的に我が国に喧嘩を売ったんだぞ。だがその意味が理解できない、哀れな頭に少しばかりの情けをやろう。今ごろ貴様らの国では大騒ぎだろう。第三王子が捕らえた間者を連れ、そちらの王に直談判に行ったぞ」
そんなバカな!無理だ!などと騒いでいますが……ミラクルマスターの仕事や王子様たちのスキルについては、知る人ぞ知る公然の秘密だからね。国政に関わる者が知らないとは……
「今ごろそちらの王太子は失神してるんじゃないか? 虚弱な彼の万能薬の錬金レシピを、仙人のインベントリから引き出し発見したのはフローラだ。まったく知らないとは情けない……」
第一王子様の言葉が終わると同時に扉が開く。第三王子様が、真っ青な顔をした姫の国の宰相さんを抱えて現れました。思わず目があってしまう。知り合いだから手を振りそうになり我慢する。さすがに不味いわよね。宰相様……ご愁傷さまです。
「そちらの王は此度の貴様らの犯罪に対し、第二王子の臣籍降下を申し出たぞ。もちろん姫は王籍剥奪の上、修道院いきだそうだ。たが処分が甘いな……貴様らの企みはすべてお見通しだ。我が国を舐めやがって! 我が父王の軽口に乗るとはバカな奴らだ。父王の外交時のあだ名を知っているか? 舌先三寸中身無しだ!何でも『善きに計らえ』なんだ!我が国に政略結婚は必要ない! 自国の王位争いに巻き込むな! 」
第三王子様……宰相様をポイしてはいけません!
「と・に・か・く! フローラを狙うなんて許せないよね。しかもあのあのクソバカ第二王子の側妃だって。 正妃だとしてもお断りだよ。フローラを取り込めば立太子が叶うとでも? 絶対に無理無理。あのノータリンが国王になったら、国が滅びちゃうよ。だからこそ万能薬を探したんじゃない。我々も総出で協力したんだ。アンタらの動きは不審だし、あのクソバカがフローラを見初めたらしいし……まったく冗談じゃない! フローラを亡国の王妃になんて! 僕たちがするわけがないじゃない」
あれれ?いつの間にか第五王子様まで! 怪我をした第二王子様以外が全員そろっています。しかし亡国の王妃ですか?
私にはまったくイメージが出来ません。
そんなことよりも!旅に出たいです!
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