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【城下町編。フロックス国境でダービー開始】
◆城下町から1週間と1日目・早朝。急展開。
しおりを挟むあー清々しい朝だね。私は砦の上階の部屋を与えられたから、窓を開けると気持ちのよい風が入って来る。明日の朝は皆も同じく、清々しい空気を感じてくれるだろう。そう願いたい。私達は朝方まで寝れなかったよ。さあ今日の昼間が本番だよ。
昨晩頑張ったんだよ…。
沢山働いた後のご飯はきっと美味しいよ。
眠気は辛いけど…。
後ルード達に頑張って貰おうっと。
しかし隣国は馬鹿なんだろうか?いや、馬鹿なんだろうね。だってこんな事したらこうなるの当たり前だよ?そして私達が尻拭い。この報酬は出るのだろうか?隣国からぶんどって貰わなきゃね。
さあ。パンちゃん朝でちゅよ~。
*****
昨晩レインは隣国の砦に。ラスは魔物と鼬ごっこだと言う草原に。別れて調べに行ってくれた。そして解った事。隣国は魔物を調教して居ると言うか、都合の良い様に誘導している。数ヵ月前隣国の国境砦の近くに、大型のダンジョンが発見された。これを他国には内緒にし、自国のみで中を調べていた。ダンジョンは当たれば凄いお宝になる。お宝の独り占めを目論んだ訳。しかし外れれば単なる魔物の巣窟だ。魔物はダンジョンの下層で繁殖し、ダンジョンが機能して居れば外には出ない。機能してると言うのは、冒険者が潜り検索をしていると言う事。ダンジョンは人が入る事により、中での食物連鎖が発生する。言い方は悪いが、中に入る冒険者達も食物連鎖の一員なのだ。狩る側しかり。狩られる側しかり。しかし冒険者が全く入らねば、増えた魔物が外に溢れだしてしまう。また逆に餓えた魔物が出てきてしまう。どちらの可能性も有り得る。
早々にこのダンジョンは外れだと見切りを付けた隣国は、ダンジョンを深部を埋め封鎖した。その為低層の魔物だけが溢れ、ダンジョンから出てきてしまう。しかしこれは予想済み。その溢れた魔物を隣国の草原へ追い立てる。しかしこの草原には餌になる動物が居ない。昼間は兵士が居る為捕獲しようとしているが、夕方になると兵士も居なくなり皆ダンジョンに戻って行く。そこで餌をまく。
罪人や病気で死に逝く人々を…。
怯え逃げ惑うだけの人の味を覚えた魔物は、より狂暴になる。ダンジョンの中では魔物は狩られる側だ。無闇に人間を襲ったりはしない。しかし与えられる餌は自分に害を与えない。魔物は恐怖を忘れてしまう。この狂暴になった魔物を一定数増やし事を起こす。草原を戦場にする。戦いの場に魔物を放つつもりだそうだ。下手したら自国の兵士も犠牲になるのも構わずにだ。
*****
私只今、隣国の砦に居ます。はい。勿論不法侵入です。取り敢えず砦を落とします。無血開城ならぬ、無血砦の予定です。先ずは砦の天辺から強目に睡眠の魔法を風に乗せ巡回させま~す。空気に混ぜ込みながら1階まで。1階でバウンドしたら、天辺まで再度引き寄せながら拡散させる。汚れた心も風通し良くするが良い。私達は砦を下りながら、眠った兵士や人々を監禁用の部屋に瞬間移動させる。これはラスが丁度良い鉄格子つきの小屋を見付けてくれた。送られた人々は、今頃冷や汗をかいてるだろう。魔物の居るダンジョンの直ぐそば。餌にする人々を閉じ込めて置いた小屋だ。生憎中に人は居なかった。多分既に亡くなっているのだろう…。
偉そうな人々は丁度会議中だった。何と明日の朝には事を起こすつもりだった。間に合って良かったよ。眠らせたお偉方は、何故か草原に接した隣国側に有った巨大な鉄格子の檻に転送する。何に使うつもりだったのかは大体解るけど、超胸くそ悪すぎ!自分達が明日恐怖を味わいなさい!
会議の書類や重要文書類。皆で手分けして各部屋も捜索し集める。かなりの量になってしまったので、一旦砦に戻り居合わせた文官さんに手渡す。
《夜間起きてる人も居るのよね?これらを纏めて置いてくれる?お礼に差し入れするわ。宜しくね。》
この文官さんがルードに知らせるかは解らない。ルードが信頼され尊敬される指揮官なら伝わるだろう。私から伝えてとは言わない。のんびり寝てるのならそれまでよ。お偉いさんってのは、そんな物らしいしね。私は文官さんの仕事部屋へ行き、仲間の分も差し入れをし砦に戻った。
お好み焼きとお握り喜んでくれたよ。疲れた頭には甘いものだね。シスルの国で沢山菓子折りを貰ったの。お菓子もどうぞ。勿論、ブラウニーとキャラメルもね。リラックスのミントティーは淹れ方を見せながら淹れてあげる。お代わりも沢山有るから、2杯目は自分達て淹れてね。お肉は全てが終わってからね!若い文官さん達は大喜びだ。頑張って纏めてくれるそう。ありがとー。
*****
さーてと。ここからが本番です。タルバが先に説得に行ってくれてるんだけどどうかなぁ。タルバは任せろと言ったけどこればかりは心の問題だからね。でもどんな姿になってるか解らないから覚悟して来いって。何だか心配だよ。
地下へ続く階段を、灯りの灯る方をめがけ降りて行く。捕虜や密偵などを拘束して置く地下牢の様だ。ヒヤリと冷たい空気が肌を刺す。突き当たりまで進むと人型のタルバが居た。
〈駄目じゃな。我の言う事は嘘だ!の一点張りだ。長く閉じ込められ半分正気では無いのかもしれん。魔力線は既に切れとる。主が死んどるのも理解しとる筈だが認めん。ただ護りきれなかったのを認めたくないのだろうな。〉
《そう。体の方はどうなの?》
〈無理やり主で無い人間の魔力を注がれとるから、我の様に魔力が無くなりチビにはなっとらん。しかし波長があわず拒否反応で姿がかなりゆがんどる。既に人型は取れず聖獣姿だが、獣の形さえ保てて無い。とても我と同じカーバンクルには見えん。〉
あの子もカーバンクルなの?
《取り敢えずその子に会うわ。心を開いてくれなくても、保護しなくてはどうしようも無いわ。》
私はついてこようとするタルバを手で制し、鉄格子の中で手足を拘束され横たわる、黒い塊に近寄る。私に気付くと、目の光で辛うじて頭と解る部分を動かし威嚇する。魔法で拘束の鎖をそっと外す。互いにジッと見詰め合う。目の焦点があっていない。夢と現実の狭間を行き来してるのだろうか?治療してあげたい。でもこの子が私の魔力を拒否するならば、私の治療も害にしかならない。私は目の焦点が有った時を見計らい、根気よく声をかける。
《あのね?現実を受け止めるのはゆっくりで良いわ。でも貴方が消滅してしまったら、主だった人も悲しむ。出会ってしまった私達も悲しむし、助けられなかった事を後悔するの。貴方も後悔したんでしょ?なら尚更主の気持ちを知らなくちゃ。今レインとラスがお城まで調べに行ってくれてる。貴方は体を回復しましょう。》
そっと体を抱える様に腕を回す。ビクリと身動ぎをした聖獣は、急にもがきだし私の腕に噛み付いた。噛み付いてしまった事に驚いたのか、体がビクリと震えた。しかし強張ってしまったのか外れない様だ。頭をフルフル揺らし力なくもがいている。
《大丈夫。痛くないわ。そのままで大丈夫。気にしないで眠りなさい。》
私に噛み付いたままの聖獣を抱き締め、タルバと共に国境の砦の部屋に転移した。
〈リョウ、廊下に誰かおる。覚えはあるか?〉
《特に無いわね。レインとラスでは?》
〈違う。人間だ。まさかリョウに夜這いか?強者がおるな?害意は無い様だが怒っとるな。〉
《何故怒りながら夜這いするのよ!しかも然り気無く貶め無いで!タルバ出てきてよ。》
部屋の扉の前にルードが居た…。
らしい…。
*****
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