上 下
59 / 89
【冒険者編。離島のダンジョン】

▲離島へ行こう2週間目突入。大団円。

しおりを挟む
 
 キラキラ満天の星空。打ち寄せる波の音のみがBGMね。星の輝きと月明かりのみが、地上の暗闇を照らしている。セリーがくれたドロップティーを飲みながら、コテージから海と空を眺めて一息つく。

 ダンジョンを攻略し、翌日皆総出で事後処理した。漸く一段落し、明日から暫くは離島でのんびり出来る。セリーは洞窟内のお部屋を片付ける為、暫く洞窟に籠るそう。タルバとモノクはセリーを手伝って居る。

 *****

 ダンジョン攻略の翌日。私とライドは王宮とギルドに連絡に行った。ギルドは私達の旅程を2週間とみてたそう。戦利品は後程ゆっくりで良い。残りを離島で楽しんでこいと、早々に追い出されてしまった。

 王宮では初めて王様と、1対1で正式に対面し話をした。捕虜になってる帝国の皇子達の処遇については、悪いようにはしないから任せてくれと言われてしまう。まあ私的には未遂ですんだし構わない。但し人魚の話は間違いで有る事。聖獣についての知識を正しく知って欲しい事。真実を伝えて欲しいとお願いした。

 ライドとクリスの母親について。前聖女について王様は、自身の愛が重すぎたと私に伝えた。かなり反省はしてるそう。この世界の男性は自分の様な傾向が強い。多目に見てやってくれと言われる。

 《多目には見ません!歩みよりは必要です!》

 〈わはははは!本当に今回の聖女は強くて逞しいな!己の好きな様にするが良い。私は聖女に未來を託す。宜しく頼む。〉

 《何で私に託すんですか!王様が働いて下さいよ!》

 〈そんなに気張るな。聖女の行動が未来を動かしとる。これはもう間違いないだろ?聖獣様達が人間に混じり、以前の様に暮らし始めてくれた。これが真実だよ。君は今までのお飾りの聖女とは違う。お飾りにしたのは我々王家だ。だからこそ誓おう。君の自由は奪わない。好きに過ごしてくれ。〉

 まあ自身の立場の確約が取れただけでも良しとしようかな。あまりつつくと蛇がでそう。国王様は結構策士みたいだからね。

 《身の保証を有り難うございます。ではそろそろ失礼致します。》

 〈ちと待て。ライドは返品せずとも良いのか?私はライドに賭けとる。返品無しなら助かる。〉

 賭け?

 〈私の予想ではシスル王子は弟分だろ?ブラン王は巻き返しは有るかもしれんが子持ちだからな。フリードは出遅れだ。クリスは論外だろ?ルードはまだ解らんか?気になる所はウィンとイード辺りだな。宮廷医師達は当て馬にもならんかったな。〉

 ちょっと!競馬じゃ無いのよ!
  
 〈知らんかったか?ギルドでトトカルチョ出とるぞ。公式な遊びだから取り締まりはない。一番人気がライドだ。少し前まで倍率が1倍を切っとった。まあ自国だからな。しかしそれにウィンとイードが追い込みを始めた。隣国からも買いが入ってる。どの国も興味津々の様だな。〉

 《・・・・・。》

 〈大丈夫だ。無理強いはさせない。親心としてライドに頑張って欲しいがな。ルードもライドに遠慮しとるが良い奴だぞ。まあ知っとるよな。〉

 《王様凄すぎ。ライドもだけど私の心を読んでるみたい。大丈夫。ライドも同じ様な事言ってた。近々ルードに会って、隣国でウィンとイードと、デートしてみたらと言われたの。キスや触れ合いの感覚の違いで、好きの違いが解るかもだって。邪魔しないって言ってくれたわ。》

 〈ほう。奴も中々度量が付いたな。〉

 《でもズルいのよ!この世界ではお付き合い前でもキスは当たり前。夜一緒の布団で寝て弄られる位も当たり前。婚前交渉もOK。まあ流石に婚前交渉は私的には無理だと思う。でもデートで同衾するなって言うのよ!自分は散々人を抱き枕にしてるし、止めろと言っても皆してるからと布団に潜り込んで来て弄るのよ!自分は理性が有るから大丈夫だとか言うけど、比べて見るなら同じ事体験しなくちゃ解らないじゃない!ライドに理性が有るなら、ウィンとイードにも有るわよ!どう見てもライドの方がエロいじゃ無い。やっぱりエロばかりなのね!》

 〈・・・・・。〉

 腹黒と天然か…。お前らお似合いだよ…。

 《王様!これどう思います?》

 〈聖女の好きにしなさい。嫌なら魔法でどうにでも出来るだろ?この世界の男はとかく思い込みが激しい。嫌ならハッキリ抵抗しないとヤられるぞ。嫌は口だけ照れてるだけ。嫌よ駄目よは好きの裏返しってな。泣いても喚いても、泣く位うれしいんだな。気持ち良いんだなとしか思わん。女性も嫌がらぬ者が多いから余計だ。まあ気を付けてくれ。〉

 《実体験ですか?あのバーチャル体験での王様が言われると、本気で洒落になりませんね。貴重なアドバイス有り難うございます。嫌なら殺す気で行きます。まあ息が有れば治療出来るでしょうし。》

 中々言いよるな…。

 聖女こえー。ライド…。検討を祈る。

 *****

 ラスとレインは帝国に色々と探りに行った。セリーの皇子は健在だった。王妃様は既に亡くなって居たが、息子に王位を譲り2人は離宮でノンビリ暮らしてたそうだ。何時かあいに行けたら良いね。

 そろそろ寝ようかな。昼は海で泳げるけど、夜は何もする事が無いのよね。ドロップティーの入った小瓶を星空の光にかざしてみる。これはダンジョンの砂漠エリアでゲットしたお花の種の加工品だ。あの種は岩塩と魔力を取り込んで居る為、殆どが塩分だ。塩の手に入り難い地方などで重宝されて居る。その中に突然変異の種が有る。甘味玉と香味玉だ。その名の通り甘い種と香りの有る種。この甘味玉とハーブを煎じると、ハーブにより色々な色と香りのお茶になる。香味玉は石鹸や香水等の香りに使える。ドロップティーの由来は、煎じると何故か雫の形になるから。どれも優しい味だ。セリーさんの手作り。このお茶はセリーさんの心なのかもしれないね。

 そのセリーさんは洞窟に籠ってる。ご飯は皆で食べたよ。でもね?何だかライドとセリーさんがコソコソしてるんだよね。別に構わないけど、何だかやな感じ。何時もはもうつきまとってる時間なのに居ないし。まあ良いや。やはり眠いかも…。
 
 〈リョウ。寝ちゃいましたか?仕方無いですね。〉

 何だかフワリと体が浮いた。もしかしてベッドに入らず寝ちゃった?誰か運んでくれてるの?

 《有り難う。懐かしいなー。お休みー。》

 〈懐かしい?〉

 何だか凄く懐かしい夢を見ていた。でももう思い出せないや。ふと目を覚ましたら、隣にライドが寝ていた。ちゃっかり抱き枕にしてるし…。グイグイと押して隙間を広げる。

 すっかり慣れてる自分が怖い…。

 ん?ここ何処?水上コテージじゃ無い?

 何故か見知らぬベッドで目を覚ました私。ここ何処よ?慌てて扉を開けると洞窟?もしかしてダンジョンなの?明るい方へ歩き出す。あ!

 視界が広けた。見上げれば満天の星空。湯気が立ち上ってるのは温泉?何故かベンチまで有る。ベンチに腰掛け空を見上げた。

 〈お気に召されましたか?リョウの大好きな温泉です。意地悪はしませんよ。ダンジョンお疲れ様。私からのサプライズです。〉

 ライド!?何時の間にか隣に座ってるし!

 《ビックリしたよ。ここはダンジョンの中なの?》

 〈いいえ。セリーの住んでた部屋に近いですね。コテージ島との間位です。長年放置されてたそうですが、整備すれは使えると言われ手直ししました。〉

 ライドがセリーと契約する最に教えられ、直ぐに掃除させられたそうだ。だからヘロヘロだったのね。

 《契約の時耳打ちされてたのも同様なのね。余りに大口開けてるからビックリしたわよ。温泉は大好きよ。有り難う。》

 〈喜んで貰えて良かったです。大口開けてましたか?散々探してた物を、セリーに言い当てられビックリしたのです。自力で探せず残念でしたがこれをリョウにプレゼントしたくて…。〉

 小さな小箱を手渡される。促されて開けると、中には空色のブローチとピアスが入って居た。

 空色の真珠?

 〈これは人魚の涙と呼ばれる真珠で作られて居ます。勿論人魚の涙では有りません。希に取れるブルー系の真珠を総称してそう呼びます。父も母に贈りました。例のブローチです。母の真珠は人魚の愛です。やはりピンク系の真珠の総称です。私とリョウの出合いの記念に貰って戴けませんか?〉

 《これって高価な品でしょ?貰って良いの?私まだキチンと返事してないよ?》

 〈私が贈りたいだけですから。付けて良いですか?〉

 あっ!私ピアス開けてないけど…。ライドの指が耳に触れると、ピアスがピタリと吸い付いた。私の下ろしたままの髪をくるくると巻き上げ、プローチをあてるとパチンとはまる。どうなってるの?

 〈魔法ですよ。持ち主を認識し、持ち主に合わせて変化します。ブローチは髪留めにも使えます。リョウを守る為に幾つか守護魔法を付加しました。リョウのお守りになります様に。〉

 《何だか申し訳ないんだけど…。》

 〈いえいえ。是非身につけて下さい。リョウの身を守る為です。牽制にもなりますからね。でももしお礼を貰えるなら…。〉

 ひょいっと持ち上げられ膝に乗せられた。ちょっと!私そんなに軽くないわよ。ビックリしちゃうじゃ無い。

 〈嫌なら抵抗して下さいね。〉

 腰に腕を回され引き寄せられる。瞼に頬に唇に、チュッ。チュッ。キスの雨が降る。

 嫌ならって…。

 ギュッと抱き締められ、服の上から熱い大きな掌が体のラインを這う。吐息と共に耳から頚筋、項を唇と舌が…。どうしよう。嫌じゃ無いけど…。

 らっライドってば!指がっ!どうしよう。

 《んっ。あ…やぁ…。ンン、あぁん。》

 どうしよう。本当にどうしよう。恥ずかしすぎて顔が上げられない。ライドの肩口に埋めながら脳内がグルグルしてる。

 やぁっ。流石にそこは!

 〈パニクってます?大丈夫ですか?残念ですがリョウの頭がキャリーオーバーしてますね。私は紳士ですから我慢しますよ。〉

 チュッ。チュッ。チュー。

 固まる私の顔中に、ライドは再度キスを降らせた。続くライドの声にビクリとする。

 〈温泉に入って下さいね。やだな。またビクついてますよ。本当に何もしません。そんなにビクビクしないで下さい。可愛すぎで続きをしたくなってしまいます。私は先に先程の部屋に戻ります。ちょっと収まりつかなくなってますし、先に寝てますよ。明日からはデートしましょう。〉

 ライドはバスタオルを私に手渡しベンチを後にした。呆然とする私。

 あれ誰?ライド?何故にいきなり紳士に?やだっ。どうしよう。ドキドキが止まんないじゃ無い。取り敢えず温泉よ!頭スッキリさせてこよう。

 *****

 朝起きた。すっぽんぽんだった。しかも同じくすっぽんぽんのライドにしっかりホールドされベッドに寝ていた。なっ何事?
 
 私ってば、温泉に入ってからの記憶が無い…。

 〈リョウ、お早うございます。体は大丈夫ですか?幾ら気持ち良くても無茶し過ぎです。流石の私も驚きました。でも役得でした。ご馳走さまです。〉

 いーやー。もしかして本当にご馳走さまされちゃたの?全く記憶に無いわよ。どうしよう…。

 〈ライド!リョウ!お早う!そろそろ起きたかしら?あらあら昨晩は仲良く出来たみたいね?そろそろコテージ島に行きましょう。皆も待ってるわよ。〉

 《・・・・・。》

 私達は着替えてコテージ島へ向かった。後でセリーに相談してみよう。特に違和感は無いし、最後まではして無いよね?ライドには聞けないよ…。

 *****
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:3,011

婚約破棄は計画的にご利用ください

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:170

【R18】冷酷傲慢王子の呪いが解けたら溺愛されました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:275

安価なものには事情がある

wiz
ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

異世界迷宮のスナイパー《転生弓士》アルファ版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:584

スキル《創成》を駆使して自由に生きます!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1,393

【好きと言えるまで】 -LIKEとLOVEの違い、分かる?-

BL / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:274

処理中です...