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【閑話・ゆうかの夢物語②】

*絵本~白銀と深紅の乙女~*

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 ☆白銀と真紅の乙女~絵本版~☆

 白く輝く真珠は少女の涙。
 紅い珊瑚は勇気の涙。

 月も厚い雲に隠れ光りも届かぬ樣な暗い海原。嵐にあい難破しかけた商船が、陸を目指して漂って居ました。

 段々と傾きかける船。荷物を捨て水を掻き出し、しかし尚も浸水は進みます。陸地まで大丈夫なのでしょうか?

 皆が悲しみにくれる中。2人のの少女が立ちあがりました。

 真紅の髪の少女は言いました。

『救命ボートが1台有ります。嵐の中無謀かもしれませんが、勇気を出して救助を求めに行きましょう』

 白銀の髪の少女が言いました。

『悲しむばかりではいけません。亡くなった方々を海に還して弔いましょう。陸地まで船をもたせましょう。』

 真紅の髪の少女は胸元の赤い珊瑚のネックレスを白銀の髪の少女に渡します。白銀の髪の少女は白い真珠のピアスを外し渡します。涙を流しながら抱きあいます。

『お互いに生きてまた逢いましょう。』

 朝日が昇り始めた頃、前方から船影が近づいて来ました。嵐の中真紅の髪の少女は、無事に陸地に辿り着いたのです。そして白銀の髪の少女も船を沈めずにもたせたのです。

 慈愛の白と勇気の紅。2人の涙と決断が、沢山の命を救いました。

 真紅の髪の乙女と白銀の髪の乙女。

 2人は航海を見守る乙女として。

 真珠と珊瑚のアクセサリーは、航海の無事を願うお守りとして。

 港町の人々に語り継がれたのです。

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