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②女大悪魔をファサネイト。
しおりを挟むここはどこ?私は誰?何て冗談です。突然ですが目が覚めました。しかし結局変わりませんでした。動きの悪い小さな手足。言葉にならないバブ語。極めつけは私を抱き抱えて眠る、目前にいる超美形な悪魔。勿論人外。
残念ながら…。
どうやら夢では無かった様です。
現在私は天涯つきベッドのど真ん中で寝ています。しかも目前の人外超美形悪魔が、私をしっかりと抱き抱えているのです。生まれたての赤子を抱き抱えて寝るな!そのデカい図体で潰されたらどうするんじゃ!
とにかくこれは夢では無い。ならばここは何処なの?しかも私はどうしてここにこんな姿でいるの?元の私はどうしたの?元の私?え?
元の私って誰?名前も何もかも思い出せない。なのに母子家庭で貧乏で、バイト三昧だった事を覚えてる。兄と妹も居た。でも名前も顔も思い出せない。どうして?自分自身の名前すら覚えてない。
ダメだ疲れた。この体のミニな脳みそでは理解不能だ。疲れ死ぬ…。
いや!死なない!お腹すいたの!
「バブ!アブ!バブブー!(起きろ!早く!ミルクくれー!)」
思い切り頬をペシペシしてみる。ダメだこりゃ。猫パンチだわ。そう言えば何と無く意思の疎通が叶ってるっぽいから、ちょっと雰囲気を変えてみようかな?
「アプププゥ?バブブー?(ねえ起きてぇ?ミルク頂戴?)」
「んんぅー。まだ強請るのか?今日はもう勘弁してくれ。眠いのだ。」
何を勘弁するんだ!しかも赤子に何を言う!眠気よりごはん!ミルクよミルク!連れて来たなら面倒を見よ!
「バブゥ。バブ!(ミルクくれ!)」
猫パンチを繰り返す。寝ぼけ眼の悪魔が手を降りミルクを出した。奪取しゴクゴク。
「ゲフー。バブブ!」
「ほらよっ!」
あ。催促前に飛んできた。
「バブブ!(ナイスキャッチ!)」
イッキ飲みでぷはー。お腹いっぱいは幸せだよね。
「バブブ!バブブ!アブ!(おかわり!おかわり!はよ!)」
・・・・・。
「ゲフー。アブゥ…。(眠い…。)」
ベッドに寝ている悪魔に、私は転がりながら近付く。ではではお休みなさい。ぐぅ…。
「おい待て寝るな!先におむつ変えろ!俺はションベン臭いガキとは寝たくない!ほら起きろ!」
赤子は食う寝るが仕事なのです。寝た赤子は起きません。勝手に替えて下さい。起きたいけどもうダメ。目蓋が重すぎてあがりません。赤子の体力を舐めてはいけません。
ほい。替えてね?グゥ…。
「マジかよ。赤ん坊が大の字になって股開いてるよ。寝たまま俺に変えろってか?全く妙なの拾っちまったな。」
オムツをはがし洗浄の魔法をかけ、新しいオムツに変える。やはり気持ちが悪かったのだろう。赤子の眉間に寄っていたシワが弱まり、ふにゃりと笑う。
・・・・・。
口を開かねば可愛いものを…。言葉にはなっとらんが、絶対に慇懃無礼な口を叩いてる筈だ。
ん?何だ?侵入者か?俺の城で騒ぐとは大した度胸だな。
何だアイツか。朝から元気だな。
ドガン!ドシャン!ドカドカ!
「貴様ら私の通行の邪魔をするな!どけ!私と知ってて邪魔をするのか!行く手を阻むなら、貴様ら殺すぞ!皆殺しだ!」
ドガン!バタン!
「コクヨウ!貴様ー!城に人間風情を連れ込んだそうだな!恥を知れ恥を!やはり私では不満だったのか?」
・・・・・。
!?!?!?
まさか!コクヨウが!?そんな!
しっ信じたくは無い。しかし赤子にお覆い被さるコクヨウ…。お前…。
「何だ?レイジュ?突然無礼だろう。不満はそちらでは無いのか?だが毎回お強請りには答えてる筈だが?」
・・・・・。
「突然ドアをぶち破り、乱入しベッドの中にまでとは。しかも急に黙りこくってどうしたのだ?コイツも寝たばかりだ。静かにしてやってくれ。私ももう一眠りしたい。話は後からで良いか?」
「ま、まさか…。コクヨウ?嘘だよな?嘘だと言ってくれ。でもそうなのか?だから私の胸には興味を示したのか?」
「レイジュ?何を言ってるんだ?胸等有れば良いでは無いか。別に俺は拘らんぞ。女なら誰も変わらんしな。」
・・・・・。
私を挟んで修羅場が起きている。しかしこの悪魔は酷いな。この女の人は恋人じゃ無いの?邪険にし過ぎ。
お陰で変な趣味を疑われてるよ。私も良い迷惑だよ。悪魔は気付かないのかね?しかしこの女性も何でそんな変な誤解をするのよ?
ジー…。ごめん。だからかかな?確かにペタンコだ…。
悪魔の女性って、皆ボンキュッボンだと思ってたよ。でも私を見てそんな誤解をしちゃう程、この悪魔を愛してるんだね。良し!ならば!
「ばぶ?ばぶぅ。あぶぶ?」
「ん?起きてしまったな。だから静かにしろと言ったのだ。」
悪魔の言葉で女性が俯く。このやろー。言葉の暴力だ!女性を苛めるな!私はコロコロ転がりながら、女性の膝の側に行く。腰をかけてる膝の上に乗り、女性の上半身を自身の体を使い押し倒す。上着を捲り頭を突っこみ食事を強請る。
「アブブ!アブゥ。ブブゥー!(お乳出る?飲みたい。飲ませて!)」
しがみつき胸にスリスリと頬ずりする赤子。硬直する女性。出る訳無かろうが!と、私を引き離そうとする悪魔。悪魔を恨めしそうに見ると、すかさず哺乳瓶を投げて寄越した。
「バブゥ。バブ?(これでミルク飲ませて。)」
女性に哺乳瓶を持たせてにっこり微笑む。私のお口にミルクが入ってくる。やはり自分で持つより断然美味しい。人肌の温もりも最高だね!
「ゲフー。バブー。あぶぶぅ!(おいしー。もう一杯!)」
飛んできた哺乳瓶をすかさずキャッチ。女性に手渡す。ゴクゴク完食!
私の頭上で視線を合わせる悪魔と女性。呆れた顔の悪魔と、摩可不思議な生物を眺める様な女性。しかし美人さんだね。悪魔は美形揃いなのかしら?
しかしやはり悪魔よりは、お姉さんの方が抱かれ心地が良い。お胸は残念だが、柔らかさが段違いなのだ。温かくて安心できる。この腕の中でなら、何時まででも眠れそうだ。
私は何とかお姉さんと寝ようと努力した。転がし胸の隙間にしがみつく。しかしウトウトし始めると、悪魔が私をペラリと引き離す。
「バブブ!アブーゥ。バブブブブゥー!(悪魔のケチー!今は夜じゃ無い。お姉さんを貸せ!)」
頭に悪魔の拳骨が降って来た。ちょっと!赤子虐待ですよ!加減してくださいよ!
「大袈裟に痛がるな!ガキに本気出すか!なつくのは構わんが、夜は返せよ。邪魔するなよ。」
何だ!焼きもちですね。悪魔にも意外に可愛い所が有るんですね。
「アブブ!バブゥバブブー、バブーアブゥ!(勿論了解!お姉さんの全ては、悪魔のものなのですね。)」
・・・・・。
・・・・・。
「まさか、コクヨウの言葉を理解してるの?」
「多分な。俺も聞きたい。コイツ理解してるよな?」
「信じられない…。」
「俺もだ…。」
「しかし中々面白い。暇潰しには良さそうだ。久々の玩具だな。」
玩具って何だ!
「ミイラ取りがミイラにならないでよ。私が悲しくなるわ。」
「流石にオムツ変えろと、大の字に寝る赤子に欲情はしないわ!」
なら大の字に寝なきゃ、赤子に欲情するの?悪魔のエッチ。この変態野郎。
「このガキ、また良からぬ事を考えてるだろう。俺はガキに興味は無い!これで安心したか?」
はいはい。では私は寝まーす。イチャイチャは他所でして!
お休みなさーい。
赤子は食う寝るが仕事なのです。
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