3 / 20
③
しおりを挟むぐうぐう。すやすや。すぴー。
目が覚めた。おしっこしたいかも。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
うーん。まだ話してるの?流石に長いね。私が寝てる間にイチャイチャすれば良いじゃない。別に居ても構わないなら、起きてても邪魔はしないけど。
でもやはり煩いから、イチャつくのは他の部屋で欲しいかも。
「おい!因みにそいつ、昨日生まれたばかりだからな。後信じられんだろうが、双子の片割れの人間だぞ。」
「変な誤解をしてごめんなさい。確かに人間離れしてるわね。でも本当に人間なの?この図太さは悪魔並みよ。」
「ああ。下手したら性格は中級悪魔並だろ。しかも属性も魔力もかなり有る。片割れは癒しの魔法のみ。魔力もさほど無い。しかも割れたままで、修復が全く始まっとらん。悪魔の呪いは能力も半々の筈だが、修正された魂の部分に多分何かがあるんだろうな。コイツは修復が異様に早すぎだ。まあそれでも彼方も人間の中では凄い方だ。聖女に祭り上げられそうだな。あれで聖女。ならコレは何だ?」
煩いわね!寝てると思って私の悪口言ってるの?性格は中級悪魔って酷い。しかもコレ扱い。私は人間よ!何をふざけた事を言ってるの?
「人外レベルね。つまり規格外。」
「ああ。だが鍛えれば悪魔並だ。逆を言えば天使並だと言う事だ。しかし天使は人間など、塵数多としか考えていない。」
「そうね。こんな人外の赤子でも、体は人間ですもの。天界には入れぬでしょう。なら此所で育てるしか無いわよね。」
私は人外なのですか?そこは既に決定なのですね?どうみても人外の方々に人外認定とは…。何だか物悲しくて、何処かへ逃避したくなります。
でもこの身では何処にも…。
「ではレイジュ。コイツを頼んだ!」
猫パンチ!猫パンチ!猫パーンチ!
「アブブブブゥー!バブ!バブ!バブ!(人を人外認定しといて人任せにするな!)」
・・・・・。
「俺と離れたく無いのか?大丈夫だ。近くには居るからな。お前は俺専用の玩具だ。色々楽しませてくれ。早速だが、無毒化したスライムとじゃれて見るか?なに戦えとは言わん。嫌がるお前が見たいだけだ。」
違うわ!2人仲良くしろと言ってるの!しかもスライム?このクズ!クズ悪魔!ん?でも悪魔は皆こんな感じなの?命有っての物種なのかしら?
「有難う。優しいのね。私だけに任せるなと怒ってくれてるのかしら?でも大丈夫。私でも良いなら面倒見るわ。コクヨウよりはマシよ?コクヨウは料理が全く出来ないからね。」
「俺達は別に食う必要は無いんだ。作る必要性はない。」
「でもこの子には離乳食が必要になる。ミルクだけではダメなのよ?」
悪魔に任されたら、スライムとか食べさせられそう。ひもじくてもそれだけはイヤ!
「アブブ!アブーバブブゥ。(是非とも!お姉さんでお願いします。)」
私を真ん中に置き2人が話をしているる。私は悪魔と女性の掌の上にそれぞれ猫パンチを置く。にっこり微笑み、精一杯のお礼を言う。
「アブブウ、アブブ、バブブブバブゥバブー。(コクヨウ、レイジュ、仮のパパママ宜しくね。)」
猫パンチで繋いだ3人の掌が発光する。光は徐々に収まり収縮した。
「やだこれどうして?」
「おい!この規格外の人外が!やはり貴様は人間じゃねえ!悪魔に契約しやがった!しかも同時に2人も!更にコイツの名を知らんから、俺らの方が下僕だ。ふざけんな!」
そんなどうして?下僕だ何て怒るのは当然だ。本当にどうしよう。
悪魔の恐ろしい視線が突き刺さる。
ごめんなさい。ごめんなさい…。本当にそんなつもりじゃ…。助けて貰って嬉かったのに。食べないでくれて、殺さないでくれて嬉かったのに。2人が優しくしてくれたら、パパママみたいで楽しいかなって。だから調子に乗っちゃったの。私は玩具なのにね。本当にごめんなさい。お願いだからぶたないで。痛いのはもう嫌だよ。
それに私名前無いから…。
前の名前も思い出せないし、今生では生まれて直ぐ捨てられたから名前無いの…。どうしたらその契約を取り消せるのかも解らない。ねぇ?私はどうすれば良いの?私が死ねば契約も消滅するの?
死ぬのは嫌だ…。ひもじくて寒くて悲しくて…。
でも助けてくれた人達に迷惑はかけられない。ならする事は1つだよね。
怒って怒鳴り散らし、私を叩こうとする悪魔を宥める女性。仲良くして欲しかったな。2人からこっそり離れる。女性がぶち抜いた扉から廊下に出る。永遠と続く廊下を転がる。転がる私を不審げに眺める、兵士やメイドさん達。
前方には階段。ギュッと目を瞑り更に加速をつける。今生の私の体はまだ小さい。直ぐにでも壊れて、安らかになれるだろう。赤子の体に感謝だね。階段から吹っ飛び宙に舞う体。暫くすると、鈍い痛みが体を襲う。2度、3度とバウンドする私の体。痛い!痛い!お願い早く終わって。
!?!?!?
思い出した。
そう私は多分死んだんだ。
でもやはり名前は思い出せない。
母と父は喧嘩してばかりだった。ある日突然父は居なくなった。その日から家は貧乏になった。兄は後1年だから大学をやめたくないと言う。卒業すれば就職に有利だ。家族を楽にするからと…。妹は小学生で、母は内職をしていた。
そうだ。あの日私は、帰宅途中に兄と会った。急遽必要になったからと、兄にお給料を渡す様に言われ渡した。帰宅後それを母に伝えたけど、どうしても信じて貰えなかった。嘘つきは家を出てけと追い出された。何で信じてくれないの?兄が戻れば解るのに!ひもじくて寒くて悲しくて…。
その晩、公園の遊具の中で寝た。起きたら赤子になってて祠に捨てられた。結局私はどちらの生でも、要らない子だったんだね。これってもしかして、良く言う異世界転生だったのかな?
転生は当たりハズレが大きいって、クラスメイトが話してた。今生の双子の妹は聖女。ヒロインなんだね。捨てられたモブの私は今生でも…。
死ぬんだから関係無いや。
気付くと泣いてた。滝の様に涙が流れてくる。何時の間にか着せられてた白い肌着の様な服は、自分の血と涙で赤く染まっている。前世でお父さんが居なくなった時も、今世で捨てられた時も、こんなに涙は出なかった。
私は必死に口を開き、伝わらぬだろう最後の言葉を紡ぐ。
「出来れば神さま。次はせめて自然死させて下さい。もう死にたくないです。苦しいのは嫌です。今生も、せめて名前位は付けて欲しかった。名前が有れば、もう少しは生きられたかも…。コクヨウ様。レイジュ様。パパママ何て、浅ましい事を考えてごめんなさい。呼び捨てにしてごめんなさい。たかが人間が調子にのって、本当にごめ…ん…なさ……い…。」
何事かと私のまわりに、兵士らしき者達が集まってくる。誰かが私の背中を触ってる?でももうダメみたい。体温が急降下する。寒いな。あの時と同じだ…。視界が暗転する。
「貴方様が何故我が城へ!?」
「ヒッ!貴方様は!」
「・・・。貴様らを捻り潰したいわ!されどこれは約束を違えた私のせいだな。…。何だ?煩い!貴様らは喋るな!輝子の下僕は大人しくしとれ!」
・・・・・。
もうこの体は駄目だな。内臓まで滅茶苦茶だ。この体で生かすには私の眷族にするしかない。しかしそれには代償が必要だ。輝子にこれ以上の代償は…。
やはりこれしかないな。まあ待つのも一興。下僕らの育児も楽しそうだ。
仕方あるまい。ニヤリ。
「「アブソルート様?」」
*****
「遅くなってすまん。」
誰かの声が聞こえる?でも良く聞き取れない。貴方は誰?
私の意識は暗闇にのまれてゆく。
「1度お前に全てを返そう。」
誰?何を返してくれるの?
「追加の代償はお前の涙だ。これから先、お前は私の腕の中でしか泣けなくなる。人前で涙を出せぬ事を覚悟しろよ。」
そう。何故忘れていたのだろう。私の名前は輝子。欠けていたパズルのピースの様に、次々と頭の中に過去の記憶が埋まって行く。
「お前はこれからシャインだ。人間の輝子には戻れない。眷族化した体には休息が必要だ。涙を思い出し再度全てを思い出すまで眠れ。それが眷族となる代償になる。起きた後に正式な伴侶として永き命を繋ぐ代償は…。まあ赤子に話す事でも有るまい。大人になるまで内緒だ。だから早く育て。」
私の涙は…。
何時の間にか涙は止まっていた。
*****
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました
藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。
逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、
“立て直す”以外の選択肢を持たなかった。
領地経営、改革、そして予想外の縁。
没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。
※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる