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しおりを挟むヒラヒラと赤い花びらが舞う。私に覆い被さる勇者と目が合う。勇者は慌てて私から飛び退き、思い切りベッドから転がり落ちた。
うわー。ごめん。頭から落下したよ。血も出てる。ほい回復ーっと。
勇者に向けて回復魔法を飛ばす。
入り口の王子様は、何故か口をポカンと開けたまま。
「混ざるんですか?なんなら同じくベッドから蹴り落として差し上げますが?」
慌てて頭と手を降る王子。マジでゲスじゃ無くて良かった。では結界ーと。部屋に結界を張る。扉には幻惑の魔法をかける。これで中では、相手の思惑通りの行為が行われている様に聞こえる。さて中では早々に作戦会議だ。
「お2人共に、今の状況は理解出来てますか?」
勇者は聖女に謝りたいと呼び出され、部屋で待たされてたら此処に居た。王子は聖女と勇者の仲介にと呼び出された。しかし聖女曰く、勇者が私と別室から出てこない。約束の時間なのに!と、ヒステリーが煩いので見に来たそうだ。
「王子?見に来たと言いますが、この部屋はまさかお城なのですか?」
聞いてびっくり。私は隣国に居た筈。王子曰く、宰相は転移の魔道具を持って居ると言う。多分宰相が何者かに指示し、私を連れて来たのだろうとの事。
「つまり宰相が黒幕なの?」
「そうです。」
「私達に何をさせたかったかは解るけど、王子を時間差で寄越した訳は解る?」
「簡単です。私に勇者と貴女を不義密通で手打ちにさせるつもりだったのでしょう。私がお2人を殺めても、最悪不敬罪で押しきれますから。」
「宰相の言ってた女2人のってのは、聖女と宰相の娘かしら?」
2人が肯定する。どちらもアブソルートに以前から惚れ込んで居た。パーティーでの件で、早々に聖女と勇者が婚約破棄となった。聖女は魔法使いと再婚約。宰相の娘は勇者との婚約をと、王は周囲にちらつかせていた。
「私は宰相の娘と婚約するつもりは有りません。これは王に伝えました。魔王討伐の結果次第で考えると言われましたが…。」
「剣士は乗り気の様だな。聖女も魅了を封じられてから、取り巻きが皆去った。魔法使いだけは本気だった様だ。しかし聖女は勇者が良い。貴族確約だからな。しかし唯一の取り巻きと言うか味方を、流石に邪険には出来ぬのだろう。まだ正式に断ってはいない。」
魅了を解いて、残ったのはたった1人きり?それはまた凄いな。
「因みに聖女は、最初私と婚約したいと王に懇願した。しかし王は却下した。あの聖女では流石に王族には無理だと。私は魅了にかかってしまい、聖女の言いなり。皆に迷惑をかけた。本当にお恥ずかしい限りだ。」
「反省される事が出来たんです。これからが大切です。皆様の信頼を取り戻して下さいね。」
さて。ここで私と勇者が殺されてあげる訳にはいかない。宰相は3人で楽しもうと構わないと言った。つまりその場合は何を企んでたのか?
うーん。やはり私の排除かしら?流石に2人と関係したら、アブソルートの前には出られないだろうと考えた?ついでに王子が、私と勇者を手打ちにすれば一石二鳥以上。勇者は完璧な巻き添えね。
「私達3人に既成事実が出来た場合、宰相にはどんなメリットが有るの?私をアブソルートと別れされたいのは解るけど、お2人は?何か宰相に利になる事が有るのかしら?」
聖女は貴族の地位を望んでいる。その為には、聖女はやはり勇者と結婚したい。それが1番世間体も良い。王子は私の結婚相手に据える。王子と私が結婚するとなれば、身分的にアブソルートは逆らえない。
そして私と別れたアブソルートに宰相の娘を宛がう。聖女は貴族の地位さえあれば、結婚相手は誰でも構わないという。しかしイケメンに限る。つまり勇者は国の上層部にとって、聖女を宥める都合の良い生贄みたいなものだ。
はあ?それって正気?アブソルートにバレたら国が無くなるわよ。悪魔としてでなく、人間としてでも不味いわよ。お義母様達も居るんだから!
「それは王様が言ってるの?なら直ぐにでも私は、アブソルートの所に戻る。そのまま国を落とそうかしら?お義母様達も最近つまらなそうだし、喜んで攻めこんでくれそうね。」
「いや!待て!それは洒落にならん。王では無いっ!否!我が父上では無い!宰相が勝手にほざいているのだ。あやつも有能で有ったが、娘を溺愛し過ぎた。」
己が娘を溺愛する様に、他者にも溺愛する者が居ると、考える頭は既に無い訳ね。なら仕方無い。それにそろそろ不味いかな?
「取り敢えず既成事実を作られてしまった事にしましょう。全て宰相の言いなりにする事。勿論振りよ。後はまた連絡するわ。あ!因みにお2人共に、聖女との既成事実は有ったのですか?」
・・・・・。
・・・・・。
沈黙は暗黙の了解ね。
「そうですか。宰相の娘は解ります?」
「彼女もかなりの奔放さだ。仮面舞踏会等では、毎回違うお相手を連れ込んでる。だが私は相手にはしとらん。勇者は…。1度連れ込まれたであろう。」
・・・・・。
あらあら。勇者は黒ね。真っ赤になって可愛いわね。
私はベッドのシーツを引っ張り乱れさせ、服と下着を脱ぎ捨てベッドへ戻る。慌て出す2人をスルーし、部屋の隅に声をかける。
「アブソルート?全て聞いてたんでしょ?いい加減に出てきなさいな。」
部屋の隅にアブソルートの姿が突如出現する。かなり不機嫌の様だ。
「レジェンドさん達はどう?」
「母は回復した。レジェンドと奥方は魔力譲渡の真っ最中だ。既に魔力も行き渡り、奥方も完全体だ。しかし反動が出たな。ありゃ下手したら、魔王討伐の出発に間に合わんぞ。病み上がりだろうに。」
「アブソルートが言えた事じゃ無いじゃ無い。トラウマも無く愛し合えたなら良かったわ。所で続きをして良い?振りだから怒らないでね?」
・・・・・。
「幻覚で誤魔化せ。」
「でもそれじゃ説得力が無いわ。」
・・・・・。
「幻覚は私が濃厚なのを見せてやる。宰相と娘と聖女が、そろそろ突撃しようと話しとる。仕方無い。お前らも裸になりベッドへ上がり、シャインの左右に転がれ。あくまでも幻覚だ。体感は有るが本当にしてないぞ!幻覚だからな!私とシャインがモデルだ。顔をすげ替えただけだ!絶対にシャインに本気になるな!解ったな。」
廊下を歩く複数の足音が聞こえてきた。2人が慌ててベッドにのる。アブソルートってば威圧かけすぎ。2人共に、震えて萎えちゃってるじゃない。
「ではシャイン後でな。今晩は覚えてろよ。どんなに懇願しても離さないし、最後まで許さんからな。」
・・・・・。
怖すぎる…。
宰相め。100倍返しだ!
アブソルートが指をパチンと鳴らす。意識が無くなる。体が勝手に熱くなる。アブソルートが隣にいる。
私はアブソルートに抱き付いた。
*****
あームカつく!何よあの聖女のどや顔!宰相の娘も初めて見たけど、同様にどや顔よ!確かに美人だけど、あの顔みたら興醒めよ!
幻覚は凄かった。流石に気合いの入れすぎよ。アブソルートのバカたれ。そんなに自分の強さを見せ付けたい訳?王子と勇者は、何故か私を尊敬の目で見ていた。あの幻覚で悶え耐える私が凄かったそうだ。もう恥ずかし過ぎて仕方無いわ。
兎も角、私達の作戦は成功した。宰相も娘も聖女も、私達の既成事実を掴んだと大喜びだった。案の定宰相は、私にはアブソルートとの離婚を突き付けて来た。王子は私と婚約したいと、既成事実を告げ王へ宣言する。その際宰相の娘を、アブソルートの後添えにと口添えする事。アブソルートは私の不貞を知り悲しむ。そこを宰相の娘が慰めるそうだ。聖女も同じくね。
勇者には形式上の聖女との結婚。聖女は結婚後も、他の男性とは別れる気はないそうだ。自分は不貞を続けるのに、不貞で脅し相手を頷かせる。しかも冤罪。本当に強かな女2人だね。王子や公爵との結婚は、王の許可が下りぬと理解してる。それを理解する頭は有るのに、何故他ではお花畑なの?成程。既に1度、王子とは駄目だと言われたからね。勇者と聖女なら世間体も良いし、庶民にも納得されるサクセスストーリーだ。苦労し魔王を倒し、世界に平和を取り戻した勇者と聖女。2人はめでたく結ばれ、王からは褒美として爵位を戴いた。テンプレね。
しかし宰相もバカだな。そこで何故娘を押し込む?余程自信が有るんだろうね。邪険にされてるのに。
「何よその目!アブソルート様は、本当は私と結婚する筈だったの!私を美しいと毎回囁き、素敵なダンスを踊って下さったの。貴女が居なければ!」
「そうよ!アブソルート様は、誰にでもお優しいの。私だけに特別に微笑むの。夫婦になれないのは残念わ。でも私との時間を邪魔しないなら、愛妾扱いでも我慢するわよ。」
バカな女2人がほくそ笑む。
「これで以上だ。我国のみの貴族で開催する、2日後の魔王討伐壮行会にて結果を発表して貰う。勿論私の意見を通せ。貴様らの醜聞をばらされたくなければな。」
宰相もほくそ笑んだ。
宰相が水晶を手に持ち呪文を唱えた。気付くと私達は各自の自宅に戻って居た。
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