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貴方の事、好きじゃないんです

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「クレーヌ」
婚約者様が私の名前を呼ぶ。
優しい笑顔で甘い声で。

今はそんな顔をしていても、後々凄い顔で私を見るのでしょう?
だって私は悪役令嬢なのですもの。


私はクレーヌ・ディスターノ。
所謂悪役令嬢ですの。
この事を思い出したのは4歳の時。ここが前世でプレイしていた乙女ゲームの世界だと理解しましたの。
悪役令嬢は大体悲惨な最期じゃないですか?このゲームは特に悲惨で、何も関わらなくても死ぬのです。
もう、笑うしかないです。

悪役令嬢は攻略対象である第一王子の婚約者。ありきたりですよね。
そして、最期には婚約破棄されて処刑。これもありきたりですね。



あーあ、関わらなくても死ぬだなんて生まれてきた意味あるのかな。
っと思っていた時期が私にもありました。でもすぐに、気付いたのです。









私は恋愛対象が虎さんだということに!

人間を見ても全然何も感じないのに、虎さんを見ると動悸が速くなるのです。



よって、人間は好きでもないし嫌いでもない、あ、いい人だなと思うぐらいなのです。










そんな恋愛対象外の人間である第一王子に愛される気持ち悪さ!!!!
考えるだけでも吐きそうです。

だって考えてくださいよ。


例えば、貴方が特に何も感じないただの食べ物が貴女に求婚してくるのです!
恐怖しかないでしょう?
気持ち悪さ半端ない!


そんなこんなで、さっき言わせていただいた[後々凄い顔で私を見るのでしょう?]という言葉は、婚約破棄される時の憎悪に満ちた顔というわけでなく、普通にあの愛に満ちた甘々な笑顔が凄い顔なのです。
恐いです。変色してるんです。

例えば、そうですね。夕食に使おうとしたきゅうりが真っ赤に染まっている。そんな感じの恐怖。

ぞくっですよ。ぞくっ。

この前にされた時には気絶しそうになりました。いやぁぁぁぁぁ!!





と、いうことなので、隠居しまーす!
え?話が急すぎるって?
だって……だって怖いんだもん(涙声)
気持ち悪さ半端ないし、恐いんです。

もう嫌だ。


置き手紙を遺す。
<お母様、お父様。私は婚約に反対でございます。よって利益になりません。婚約は破棄し、私は素行の悪さから勘当されたと噂を流させていただきますので家には迷惑をかけません。それでは、ご機嫌よう。今までのご恩、忘れません。>




さあ、冒険よ!!!
虎さんに会うために!

まずは………………
「森ね。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《娘、どうやってこの森に入った。》

皆さん!!!今!!!目の前に!神々しい白銀の虎様が!!
ああ!!神様ありがとうございます!!
生きてて良かった!!!!!!
しゃ、写真撮りたい~~~~~!あ、でもでも恐れ多い!!
はあ、興奮してしまいます…!
日の光を浴びて輝く白銀の柔らかそうな毛、凛々しく雄々しい立ち姿、強い意志と威厳を感じる美しい瞳。
そして、今喋られたのはこの虎様?低くて落ち着く声。
はあ、幸せ。
私はこの瞬間の為に生きていたのね!!!
嗚呼、もう天に召されてしまいそう。いや、むしろここが天国…!?
ずっとこうしてたい、陰ながら見守らせていただきたい!!!

《………すめ、娘、おい、返事をしろ。》
「っは!!!!」
《もう一度聞くぞ、娘、どうやってこの森に入った。》
「あ、あの!!!」
思ったよりも声が大きくなって。
《なんだ?》
「私を!!!!貴方様のお嫁さんにしてください!!!!!!!!」





何言ってるんだ私ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
虎様がなんか呆けてるよ。もうただの変人じゃん。ああ、そんな顔も素敵!!!
っじゃなくて!

虎様に初対面で何を言ってしまったんだ!!

うぅ、もうやだぁ。涙出てきた。うぅ、ぐすっ。

《っハハハハハ!!森に侵入者が来て何を言い出すかと思えば、国にそう強要されたのか?それならば残念だっ「違います!!!貴方様は美しくて神々しくてそれでそれで、私なんて足元に及ばないぐらい素晴らしい素敵な方なのです!!!これは自分の意志です!私は!人間よりも!貴方様が魅力的に!感じます!!!」》

い、言っちゃった!
完全に愛の告白!!!
恥ずかしい…。

でも、悲しそうに笑う貴方が見たくないのです!!
伝われ!この思い!!!!!!!


《ほ、本当…………なの……か…?》
「ええ!誓います!!!!」
《ッフ、そうか。》
うにゃぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!!!!!!
わ、笑ったぁぁああああ!!!!
もう、私を殺しに来ているのですか!?
本望です!!
あ、ちょっとでも。もうムリ。

バタッ
《娘!?》












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから私は、
《娘、》
「もう!カナメって呼んでって言ってるじゃないですか!!」
《カ、カナメ。》
「何ですか?虎様の言うことならば、何でも出来ますよ!!!!」
《………その、虎様というのを止めろ。我のことも名前で呼べ。》
「あ、あううう。そ、それは……。」
《カナメ》
「っっっうう!………………シ、シルヴィード様」
《シルと呼べ。》
「っっっ!!!シル様!!!!!」
《なんだ?》
「そ、その顔は止めてください!!」
幸せすぎる!!
あの後、私は気絶したようで、虎様が看病してくださいました。
そして、その後伝えられたのが!
虎様は心が読めるということと、人間姿になれるということ。そのせいでいろいろと苦労をなさっていたようです。

いや、それよりも!心が読めるということは!私の欲望たっぷりの脳内がわかっていらっしゃったということで!

恥ずかしすぎて悶えていた時にプロポーズされたんですー!!!!!!!!





なので、晴れて私と虎様……シル様は夫婦になったのです。
「んん、なんかシル様なら、人間だとしても平気ー。」
《カナメ、煽っているんだな?》
「ふえ!?そんなことはないですって!!」

子供が出来る日も近そうです!




取り敢えず!私は今、とってもとっても幸せです!!!!!!!



 
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