【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイドー紅黒の翼ー

アイセル

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第九章 Feed The Machine

真実―㉗―

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 ロックの繰り出した右腕の“籠状護拳バスケットヒルト”と、三条 千賀子の間に滑り込む。

 桃色のパンツスーツを纏う、三条の周囲を銀鏡の破片が囲んでいた。

 彼女の頭上に現れたもう一つの破片を見ると、両眼の間から生えた一角羊の頭蓋。

 ロックは、彼女の周囲を囲む銀鏡の破片が胴、両手に両脚だということに気づいた。

 三条と対峙しつつ、ロックは視線を感じた。

 三条の隣にいた、サロメの化身である鍛冶 美幸。

“政市会”の代表である尾咲 一郎と、“政声隊”の発起人でもある山土師 靖が、先ほどのロックの破壊に充てられたのか、顔が引きつっている。

“政市会”を裏から操る“大和保存会”の菅原 辰雄と、広島県のフィクサーの胴田貫 剛介と言う老人が、そんなロックと対峙する護憲派弁護士の戦いを見守っていた。

 前者は、ロックの動作に感嘆し、後者は彼の恐ろしさに年老いた腰が更に引けている。

「“ラピス”」

 三条の言葉と共に、ロックに突風が吹く。

 ロックは右に避けると、何かが彼の赤い外套コートを過った。

 目を凝らすと、欠片の正体は、ロックが先ほど破壊した“ウィッカー・マン”の頭部。

 更に、ロックは右足を蹴って後退する。

 丸い銀鏡の塊が、ロックの立っていた場所で、爆散した。

「“ウィッカー・マン”の胴体!?」

 ロックが吐き捨てると、“ウィッカー・マン”の欠片の流弾を三条が目の前で浮遊させる。

「“念動力サイコキネシス”……だが、力不足だな」

 ロックは“駆け抜ける疾風ギェーム・ルー”の超加速で、三条の正面から攻撃を仕掛ける。

 翼剣の斬撃をロックの出す超高速移動に乗せ、欠片を全て破壊した。

「だから、……“アルボー”」

 宣言した三条の頭に、ロックは翼剣型“命導巧ウェイル・ベオ”:“ブラック・クイーン”を順手に、ロックは“迷える者の怒髪ブイル・アブァラ”の墳進ジェット火炎の刃を振り下ろす。

 三条の左側から、銀鏡色の刺突がロックの炎を纏う翼剣に向かう。

 三条の前髪を燃やすか燃やさないかの距離で、銀鏡の触手の槍がロックの斬撃を受けた。

 ロックは翼剣で触手の動きを止めつつ、左拳撃を三条の顔面に放つ。

「……上手くいくと思いますか?」

 ロックの攻撃は、三条の前で止まる。

 衝撃に動じない三条の両腕が、銀鏡色に染まった。

「……動きますよ?」

 ロックの前から、三条が消える。

 目で追う前に、ロックは右の翼剣の“籠状護拳バスケットヒルト”を前に、両腕を突き出した。

 両腕に衝撃が走り、ロックの身体が後退あとずさる。

 三条の銀の籠手からの右直拳撃ストレートが、ロックの両腕の盾を大きく揺らした。

「テメェ……接近戦を!?」

「“フェルム”」

 三条がロックの問いを拒絶する様に一言を放つ。

 ロックはを感じた。

 刹那、彼は身体中の発条バネを全稼働させて、三条から距離を離す。

 ロックの顎を食らいつかんと、飛翔する銀の影。

 その正体が、三条を囲っていた右具足越しの蹴りだと知った。

 三条の跳躍と共に放った、宙返りの蹴りサマーソルトキックにロックは間合いを取る。

 翼剣の長さと成人男性一人分の空白を確認し、ロックは跳躍。

 大きく振りかぶった斬撃――“頂砕く一振りクルーン・セーイディフ”による分子配列で強化した一撃――を、宙返りから地表に降り立った三条に放つ。

 彼女の両膝が、体重と重力加速度で微かに屈伸。

 ロックの攻撃に対する構えが出来ていなかった。

「“青銅アエネウス”」

 三条の両眼に、ロックが跳躍して放った唐竹割が映る。

 彼の背後で宙に浮かぶ、主なき青緑の剣が二振り。

 それらが紫電を帯び、ロックの背後に、二つの雷が放たれた。

「これは……相当、

 ロックに雷鳴は届かず、聞こえる。

 三条の目に映るのは、ロックの背中合わせに立つ苔色の外套コートの男。

「あら、ブルース=バルト?」

「ロック、そいつの攻撃……!!」

 三条を無視したブルースの一言に、ロックは咄嗟に左脚を蹴る。

「ああ……前と戦った時よりも、!!」

 ロックは翼剣から半自動装填セミオートマチック式拳銃型“命導巧ウェイル・ベオ”:“イニュエンド”を突き出し、三条に発砲。

 牽制の為に放った“雷鳴の角笛アヤーク・ジャラナッフ”のナノ銃弾が三発、桃色のパンツスーツの女戦士の顔面に向かう。

「“アルジェンタム”」

 三条の言葉が空間を震わせると、銀影が彼女の前に立つ。

 ロックの銃弾をすべて受け、崩れた。

 ――何だ、これは!?

 ロックの中で、

 ロックと三条の間で、銀の影が生える。

 影は人型となり、ロックに立ちはだかった。

 数は三体。

 いずれの表面にも、ロックから紅い外套コートよりもの陽炎が立っていた。

 ――が出ている!?

 ロックは違和感の正体を探り、それにたどり着いた。

 彼から見て右側――三条の左肩の上—―に浮かぶ白い少女――“レン”。

 微かに彼女の双眸に映る“銀の兵士”が動き出した。

 ロックは、三条からの“銀の兵士”に翼剣を逆手に“イニュエンド”を柄に入れる。

 “籠状護拳バスケットヒルト”越しの右拳撃を放ち、三条の刺客に応戦。

 左へ半身を捻り出した一撃が、一体目の銀の兵士を頭から崩す。

 二体目が右拳を振りかぶり、ロックの左頬を狙った。

 ロックは左腕を運び、右“籠状護拳バスケットヒルト”の内に重ねる。

 左足を蹴って、両腕からの突進。

 二体目と後ろから来る三体目も巻き添えにして、ロックの全身の衝突熱力エネルギーで弾き飛ばした。

 だが、銀の刺客の背後に、姿

「“アウルム”」

 三条の声に呼応して、のをロックは感じ取る。

 ――これは……“ナノマシン”!?

 ロックの身体は、光に包まれる。

 光が強くなり、

 ――この鼓動は!?

 目の前が、紅黒く染まっていく。

「ロック!!」

「兄さん!!」

 振り返ると、サミュエルと龍之助が背後にいた。

 彼らの前に立つ三条のがロックを映す。

 三条の後頭部目掛けて、サミュエルの金色の大鎌の一振りと、龍之助と蒼い矛槍の刺突が放たれた。

 金色と蒼色の閃光が弾けると、ロックは後ろに蹴って移動する。

「あらあら……いいところでしたのに……」

 三条がロック、龍之助とサミュエルから離れた場所で、溜息を吐いた。

「意図的に”を……三条、何が狙い!?」

 薄桃色の少女シャロンが、ロックの背と腹に両手を当てながら、三条を睨む。

「……それは、では?」

 三条の視線に、ロックは無言を貫く。

 しかし、額から流れる汗と苦悶の表情が、彼女の眼に映った。

 ――あの、強くなっている……それに――!!

 ロックの突入した洞窟の深部――ブルースの言う“祭壇”と呼ばれる場所。

 機械洞窟の広場が、“生温かさを覚えた。

「ロック=ハイロウズ……さっきから、顔色が悪いですね……」

 三条の感情の抑揚のない顔に、陰影が宿る。

 彼女の能面の様な顔の影が、愉悦の笑顔を描いていた。

 その眼が、ロックの獰猛な戦意の表情を映す。

が、

「三条……お前、何が目的だ!?」

 ブルースが両手のショーテル型“命導巧ウェイル・ベオ”:“ヘヴンズ・ドライヴ”を突き出す。

 両手の曲剣にある鍔の銃口の右手は、“政市会”と“政声隊”の代表を向いていた。

 左手の剣の鍔が“大和保存会”の好々爺と、鷲鼻のフィクサーと扁桃形の眼の鍛冶を捉える。

 、ブルースの威圧に顔を強張らせていた。

「……薄々気付いているのでは、ブルース=バルト?」

 三条の視線の先にいるブルースへ、サミュエルと龍之助が合わせる。

「だったら、と行こうか!!」

 動じないブルースの眼の中の三条の鏡像が炎に覆われる。

 橙色のパーカーと同じく輝く輝く、“爆轟咆破ルガ・アン・スプレガイ”による火炎榴弾が一平から三条に放たれた。

 三条が、両腕に覆われた銀鏡の籠手を交差させ、一平の“疑似物理現象”の攻撃をかき消す。

「一つ言うなら……、ロック=ハイロウズと河上 サキさん必要ないですね……“アルボー”」

 三条の足元から放たれた銀鏡色の触手が、解き放たれる。

 触手の数は、四本。

 ブルース、サミュエル、龍之助とシャロンに向けられた。

 触手が槍になった時、ロックは走り出す。

 逆手にした翼剣を、三条に斬り上げた。

「アウル――!?」

 先ほどの“ナノマシン”を操る攻撃だろうか。

 ロックは力を籠めるが、三条の言葉が紡がれることはなかった。

 ロックの斬撃を三条が両腕で受ける。

 彼女は、

「動かないで」

 サキの凛とした声が、三条の後ろから響いた。

 黒真珠の双眼が、三条の後頭部を捉える。

 桃色のパンツスーツを纏う女の背中には、サキの“命導巧ウェイル・ベオ”:“フェイス”の切っ先が突き付けられていた。
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