【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイドー紅黒の翼ー

アイセル

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第十章 Pedal to the Metal

祭禍―④―

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――なんだ、あれは?

 ロックの目の前で、ブルースの斬撃を受ける“ケンティガン”の杖が熱の帯びた鉄の様に輝いていた。

「テメェ……何で、“”にをしている?」

 ロックの翼剣越しの問いに、“ケンティガン”の眼は揺るがない。

 闘志に満ちた眼は、その輝きに淀みもない。

「私こそ、お前に問おう……何故、?」

 突然と、ロックに問い返した。

 その答として“”を着た“命熱波アナーシュト・ベハ”使いの背が、ロックの頭をよぎる。

 ロックはそれを口に出さず、

「疑問に疑問を――」

にしての問いだ」

 疑問で回答する“ケンティガン”へのロックの反論は、彼の本質を突いた言葉の前に否定される。

 無意識の内に“ケンティガン”の攻撃を受ける強度が下がったのか、銀の籠手ガントレット:“ライジング・フォース”の力で、ロックの翼剣を押し返した。

 “ケンティガン”の右腕が輝き、ロックの喉を捉える。

 ――これは!?

 ロックの眼の前が一瞬、紅黒色に覆われる。

「ロック!?」

 背後のブルースが二振りのショーテル型“命導巧ウェイル・ベオ”で押さえつけようとする。

 “ケンティガン”の左手の杖の雷撃で、苔色の外套コートの戦士を弾き飛ばした。

 ――俺の……ナノマシンが、――!?

 紅黒色の衝動が、感覚にロックは襲われた。

 “ケンティガン”の銀色の五指が、ロックの首を覆う。

「貴様こそ……“……それが、“”と“

 力強い言葉と、銀色の冷たさが、ロックの皮膚を伝おうとする。

 蒼白い刃の一振りが、ロックに迫る銀色の誘惑を断ち切った。

……? 言わないで!!」

 サキが片刃型“命導巧ウェイル・ベオ”を右手に、ロックと“ケンティガン”の間を割る。

 ケンティガンに映る少女の黒真珠の瞳が、磨き切った刀剣を思わせる鋭さを放っていた。

犠牲になったロックの――!!」

「……それこそ、同じようなことを、とは……とは考えないのか?」

 “ケンティガン”の瞋怒に刻まれた口からの言葉に、サキの黒真珠の双眸が見開く。

 また、“ケンティガン”の眼に映るロック。

 自分の目に映る“ケンティガン”の背後に映る苔色の外套コートの戦士の顔が曇る。

「あーあ……“になると……“ケンティガン”?」

 ポンチョを纏う細面の“コロンバ”が、銀鏡の球の“命導巧ウェイル・ベオ”:“ピンボール・ウィザード”で“パトリキウス”の大鉄鎚を受ける。

 右掌で突き出し、ポンチョを舞わせて後退した。

「“ケンティガン”」

は禁止されていない」

 “”の容れ物としての“鍛冶 美幸”の制止を訴える口調に、どこ吹く風という“ケンティガン”。

「少なくとも、“ブライトン・ロック”社のに腹を据えかねているだけだ」

 サキに向け、銀椀の一撃を放つ“ケンティガン”に、ロックは動いた。

 逆手に構えた“翼剣”:“ブラック・クイーン”による籠状護拳バスケットヒルトの剣戟を、右の銀椀の男に見舞う。

 右鉤拳撃フックの軌道にそって、“穢れなき藍眼スール・ヒンプリィ”による水が翼剣の刃を覆った。

 ロックの斬撃を悠然と受ける“ケンティガン”の背後を、ブルースのショーテル型“命導巧ウェイル・ベオ”:ヘヴンズ・ドライヴの二刀流が捉える。

 右の銀椀に受けたロックの斬撃を“ケンティガン”が半身を引いて、流した。

 前のめりになると、ロックの水の鋸は空を切る。

 “ケンティガン”の引いた銀の右腕を時計回りに振った。

 “ライジング・フォース”越しの右裏拳が、ブルースの二刀斬撃を受け止める。

 否、彼はブルースの斬撃を、裏拳の勢いを止めず、振り切った。

「クソッタレ!!」

 ブルースが苔色の外套コートを翻しながら、後退する。

「“サロメ”の……“ブライトン・ロック”社だろうが、三条だろうが、……倒すまでだ」

 淀みない声で、引き下がったブルースに一瞥する“ケンティガン”。

「まあ……だぜ。飼い主冥利に尽きるな、“サロメ”?」

「他人よりも、自分の仕事をしてくれたら……褒めてあげてもいいわよ、“コロンバ”?」

 ポンチョの男が赤毛の男の攻撃を受け流す様に、象牙眼を光らせるサロメが応える。

「……そうかよ。だが、あるな」

 ロックの獰猛な笑みを映す、銀の右腕を覗かせる赤マントの男。

 彼の目線に鋭さが増すと、ロックは走り出した。

、敵同士ってことだろ!!」

 ロックは、“ケンティガン”の胴に右の直蹴りを放つ。

 力いっぱいの攻撃を予測していたのか、“ケンティガン”が後退して避けた。

 ロックの翼剣型の鍔から、半自動装填セミオートマチック式拳銃型の“命導巧ウェイル・ベオ”:“バードキャッチャー”が飛び出る。

 銃口をマントから見えた“ケンティガン”の銀の甲冑に向け、引き金を引いた。

 銃声が三発鳴る。

“ケンティガン”が左手の杖を突き出す。

 一発目の銃弾は“雷鳴の角笛アヤーク・ジャラナッフ”のナノ強化銃弾が、“ケンティガン”の杖から放たれる雷撃に妨げられた。

 残りの二発が、“ケンティガン”を追撃。

 右手の銀の籠手ガントレットを輝かせ、ロックの放った残りの銃弾に掌底を放つ。

“ケンティガン”を刻む瞋怒の皺が、さらに深くなった。

 彼の眼の前で二発の銃弾が爆発。

 ロックと“ケンティガン”の間合いを、“道作る蹄ニャッフ・ジェナブ・ラハーチ”による炭酸ガスの煙幕が包み込んだ。

「“ヴァージニア”!!」

 サキの声と共に、鶏冠の兜ガレアの“命熱波アナーシュト・ベハ”が、彼女の前に躍り出る。

 右腕の弓から、“フォトニック結晶”の矢を放った。

 疾走する三発の鏃に光が灯り、煙に覆われた“ケンティガン”の姿を浮かび上がらせる。

 刹那、煙の中で明滅する光の、閃光の槍と化して“ケンティガン”を貫いた。
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