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第二章 Ambush
混迷―②―
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堀川は、転校生――ロック=ハイロウズ――と向かい合う集団――“政治に声を張り上げ隊”――“政声隊”を認める。
しかも、ロック=ハイロウズを校門の前で塞ぐ形で。
無関係の学生を入れつつ、ロック=ハイロウズだけは通さない。
“政声隊”はどちらかというと、男女と大人の姿が目につくが、自分と歳の近い年齢の者が多かった。
そんな集団の先頭に立つのは、堀川と同年代の女子だった。
長髪を二つ結びにし、女子用のブレザーの制服を着ている。
秋津 澄香。
“S.P.E.A.R.”の代表で、確かIX組の隣のVIII組の女子だった。
受視機や新聞、電脳世界での露出が多く、彼女が学校にいることが実はあまりない。
ロック=ハイロウズの転入したクラスIX組の河上サキとは、別の意味で多忙な学生だった。
河上サキが戦士としての凛々しさがあるのだとしたら、秋津にあるのは活動家としての雄弁さが伺える。
両者の間に会話の無い膠着が続くが、国広は二者の間に温度差を感じ取った。
脅威、嘲りと同時に、何か崇拝に似た眼差し。
それが、“政声隊”で囲む形で、ロック=ハイロウズに注がれていた。
ただ、堀川は彼らの間にある温度差以外の異様な何かを感じ取る。
「どうした?」
胴田貫から話しかけられるが、堀川は曖昧に濁す。
――見えてないのかな……?
堀川は自分たち――“政治をまともにしたい市民の会”――“政市会”を見渡す。
周囲は一人の高校生の男子が、同年代の女子が大の大人たちを率いているという歪さに目がいっているのだろう。
しかし、堀川の目に留まったのはそれではない。
赤、白、青緑。
三色のもやの様なものが、“政声隊”を包んでいる。
堀川の懸念をよそに、
「ロック=ハイロウズさん……いえ、“紅き外套の守護者”ですね」
先頭に立つ秋津が声を上げた。
彼女は向かい風に立つのか、二つ結びの髪がなびく。
「……人違いです」
堀川は大人数の前で怯まず、否定する金髪の男子高校生に目を剝いた。
ロック=ハイロウズと対峙する秋津もその回答を想定していなかったのか、風になびく二つ結びの髪が大きく揺れる。
「“バンクーバー・コネクション”を暴いたモノの一人で、UNTOLDに太刀打ちできる凄い方……あなたは、この世界に理不尽と不平等が溢れていることは知っていますね?」
秋津は調子を整えつつ話を続けるが、
「何が言いたい?」
ロックが一言と共に睨み、秋津が怯んだ。
「……この国と世界の平和のために、私たちと一緒に戦ってください……十代が声を……」
ロックの睨みに秋津が声を絞り出す。
彼の視線は、秋津の心の内を見抜くどころか射ぬく鋭さだ。
――これは、かなり異例だ……。
活動家が集団で――外国人とはいえ――高校生に押しかけている。
しかし、だからと言って、ロック=ハイロウズも怯まない。
両者の奇妙な膠着は、校内の生徒たちの注目を集め始めた。
部活の朝練の手を止めた野球部、サッカー部に陸上部。
教室にいた生徒たちの視線も校門前のやり取りに釘付けとなる。
なにより、異様な雰囲気に教師陣も出てき始めた。
秋津はロックの動じない姿勢にしどろもどろしていると、彼女の背後から背の高い男がロックの前に立つ。
コーンロウという長髪を編み込んだサル顔の男だ。
年齢は20代の初めくらいだろうか。
背はロックよりも高く、筋肉隆々ではないが引き締まっている。
「“力の使い方”を考えろってことだ。平和の為に」
「平和だと……。平和ってなんだ?」
ロック=ハイロウズの問いに、秋津とコーンロウの青年は面食らう。
そう言われた、“政声隊”の面々も想定外の問いかけに一瞬、凍り付く。
やがて、“政声隊”の中でどよめきが生まれ始める。
背の高い男はそれを戸惑いと受け止め、どこか上から目線でそれを断ち切るように
「安全に過ごせる。今死ぬことを考える必要はない……戦争が無いし、巻き込まれない」
「なら今は“平和”だな。ウプサラ紛争データプログラムによると、世界人口70億人に対し
て2016年は組織的暴力による死者数は10万人と2014年の13万人から減少している」
ロックが諳んじるようにして話し、コーンロウが瞬きを走らせる。
「ただし、その中で主流ともいえるのは国家間紛争の87,000人だがそれを差し引いても、発生は52件から49件減少している……ただ、戦争状態で最低1,000人が死んでいるが、日本とは何の関係もないし、俺に持ち出すのはお門違いだろ?」
堀川は、数値的なデータを持ち出すロック=ハイロウズの知性に感銘を覚えた。
確かに、電脳左翼の言っていることは、“世界で起きていること”を“自分たちのこと”と受け止めている。
だが、細かい差異を無視しているので、他から見れば“争点が曖昧”だ。
そもそも、堀川は考える。
――ロック=ハイロウズがどこをどうしたら、彼らと手を組むように思えるのだろうか?
「その中にお前の友人が入るかもしれないが、どう考える?」
コーンロウの男が、当事者意識を持たせるために、身近な友人で例えようとしている。
――聞き入れないから、身近な人を例えに出すのってモラハラではないだろうか?
「無用だ……お前らの言う“脅威”で死ぬことは無い」
ロックはため息をついて、
「同時にテメェらの様に下世話でもなければ距離間が測れないバカじゃない」
ロック=ハイロウズの一言にコーンロウが恥をかく形になり、金髪の青年に食って掛かろうとする。
ロック=ハイロウズの顔には、恐れはない。
しかし、堀川は彼の顔に、どこか憂い色と悲しみが内在している様に見える。
だが、二人”政声隊”から男が出てきて、コーンロウの男を羽交い絞めで止めた。
その際に少し揉み合いとなり、男たちの首筋が露出する。
彼らは、縄の網目の様な模様をした首輪を掛けていた。
ケルト民族のトルクという装飾具に似ていることを堀川は思い出す。
堀川はコーンロウと彼をロックから引き離そうとする二人の青年以外の、“政声隊”やS.P.E.A.R.のメンバーも首輪を付けているのが見えた。
しかし、
――秋津だけ……していない?
”政声隊”とS.P.E.A.R.でも、何故か、後者のリーダーの秋津 澄香だけ首輪が無い。
堀川は違和感を抱きつつ、話を続けるロック=ハイロウズに注目した。
「中世欧州では、人口10万人につき、毎年約20~40人が殺害されていた。だが、現代、暴力沙汰で死ぬのは僅か9人で、主にソマリアやコロンビアの様な発展途上国で起きている。中央集権体制と言えるヨーロッパでは、人口10万人に当たり一人だ。日本で平和を謳歌しているなら、心配は無用」
ロックは鋭い目つきで、電脳左翼たちに、
「もし、世界平和を訴えたいなら安全保障理事会入りしている国の領事館や大使館の前で、サングラスとリュック抱えてうろついてろ。そうしたら、現状の問題をSNSよりも確実に訴えられて、承認欲求だけじゃなく救世主願望も満たせて殉教者の道まっしぐらだぜ?」
金髪と碧眼の青年の眼光に、“政治に声を張り上げ隊”とS.P.E.A.Rのメンバーが鼻白む。
「あんた、今の政府に殺されるんだぞ!?」
しびれを切らしたのか、40代の坊主頭の男が訴えると、
「何処のブラジルやインドの軍隊の話だ。お前らのデモ自体が、何処から許可を取っている……警察、その上の政府じゃないか?」
ロックの言葉に、周囲が戸惑い始める。
坊主頭は泡を食いながら、
「お前……分かってないのか、今のリスクと危機が?」
「不安はリスクにならん。危機にも含めない。質と数量の掛け算がリスク計算、確率も加えた俺の視点から言わせれば、理屈が通じないから大人数で押し掛けるお前らの方が、危険で戦争を起こしかねないが?」
笑い声が、こちら側から聞こえてきた。
ロック=ハイロウズは、その声に反応する。
“政声隊”もロック=ハイロウズの視線の先にいる“政市会”を認めた。
「ついでに言うと、リスクについては本来主観的だ。特定の危険の受け止め方については、文化的状況による……お前らの言うのは“非自発的リスク”によるものだ。テロや戦争とか、原発とか。対して、“自発的リスク”というのはよくお分かりの通り、自動車やタバコだ。自動車関係の死者数は1000人当たり52人らしいぞ! もし、世界平和に貢献したいなら、自動車の運転を止めたり、このおっさんの喫煙量を減らすことをお勧めするぜ……さっきからヤニ臭いからな?」
坊主頭の親父は自分の怒りの矛先が挫かれ、飛び掛かろうとする。
彼はロック=ハイロウズの目と鼻の先で、”政声隊”のメンバーに抑えられる。
自分たちの恥を敵対団体に晒したことに、S.P.E.A.Rの一人が、
「俺たちは戦争状態なんだよ。不正選挙と富の格差による…」
「不正選挙という結果というなら、与野党問わず政治家やマスコミに運動家によって、争点が捩じれて伝えるからげんなりしているという世論の表れだ」
ロック=ハイロウズの声に棘が含まれ始める。
「回りまわってお前らの悪乗りとも言えるが。しかも、日本自体が中央集権。しかも政治の中枢と産業が密集する戦争インフラの産物の東京都が戦時状態というなら正しいが、広島に持ち込む理由にはならん……お前らの後ろにいる政治馬鹿に伝えろ、“平和な飼い犬さん”、よ?」
ロックが”政声隊”をこき下ろすたびに、こちらの笑い声が更に大きくなった。
ロック=ハイロウズが堀川と目が合う。
堀川は、全身から悪寒が走るのを感じた。
ロック=ハイロウズは笑っている。
しかし、それは自分たちと共有するものではない。
どこか、
『次はお前らだ!!』
という風に聞こえた。
そして、それが現実であることを堀川は知る。
初めに、ロック=ハイロウズに突っかかった“政声隊”のコーンロウの男。
ロック=ハイロウズは何を思ったのか、彼を指さす。
何を会話をしたのか、堀川からは分からない。
ロック=ハイロウズの前で彼が俯くと、一陣の風が堀川の横を過った。
女性の絹を裂く悲鳴と、蛙がつぶれたような声が隣と背後から響いた。
音の出所を見ると、自分の隣にいた若い男。
彼が、“政声隊”のコーンロウの男を抱え込む形で吹っ飛んでいた。
無論、
「優越感に浸るんじゃねぇよ!!」
ロック=ハイロウズの怒号に、堀川は何が起きたか把握する。
彼が、コーンロウの男をこちらに投げ飛ばしてきたのだ。
しかも、ロック=ハイロウズを校門の前で塞ぐ形で。
無関係の学生を入れつつ、ロック=ハイロウズだけは通さない。
“政声隊”はどちらかというと、男女と大人の姿が目につくが、自分と歳の近い年齢の者が多かった。
そんな集団の先頭に立つのは、堀川と同年代の女子だった。
長髪を二つ結びにし、女子用のブレザーの制服を着ている。
秋津 澄香。
“S.P.E.A.R.”の代表で、確かIX組の隣のVIII組の女子だった。
受視機や新聞、電脳世界での露出が多く、彼女が学校にいることが実はあまりない。
ロック=ハイロウズの転入したクラスIX組の河上サキとは、別の意味で多忙な学生だった。
河上サキが戦士としての凛々しさがあるのだとしたら、秋津にあるのは活動家としての雄弁さが伺える。
両者の間に会話の無い膠着が続くが、国広は二者の間に温度差を感じ取った。
脅威、嘲りと同時に、何か崇拝に似た眼差し。
それが、“政声隊”で囲む形で、ロック=ハイロウズに注がれていた。
ただ、堀川は彼らの間にある温度差以外の異様な何かを感じ取る。
「どうした?」
胴田貫から話しかけられるが、堀川は曖昧に濁す。
――見えてないのかな……?
堀川は自分たち――“政治をまともにしたい市民の会”――“政市会”を見渡す。
周囲は一人の高校生の男子が、同年代の女子が大の大人たちを率いているという歪さに目がいっているのだろう。
しかし、堀川の目に留まったのはそれではない。
赤、白、青緑。
三色のもやの様なものが、“政声隊”を包んでいる。
堀川の懸念をよそに、
「ロック=ハイロウズさん……いえ、“紅き外套の守護者”ですね」
先頭に立つ秋津が声を上げた。
彼女は向かい風に立つのか、二つ結びの髪がなびく。
「……人違いです」
堀川は大人数の前で怯まず、否定する金髪の男子高校生に目を剝いた。
ロック=ハイロウズと対峙する秋津もその回答を想定していなかったのか、風になびく二つ結びの髪が大きく揺れる。
「“バンクーバー・コネクション”を暴いたモノの一人で、UNTOLDに太刀打ちできる凄い方……あなたは、この世界に理不尽と不平等が溢れていることは知っていますね?」
秋津は調子を整えつつ話を続けるが、
「何が言いたい?」
ロックが一言と共に睨み、秋津が怯んだ。
「……この国と世界の平和のために、私たちと一緒に戦ってください……十代が声を……」
ロックの睨みに秋津が声を絞り出す。
彼の視線は、秋津の心の内を見抜くどころか射ぬく鋭さだ。
――これは、かなり異例だ……。
活動家が集団で――外国人とはいえ――高校生に押しかけている。
しかし、だからと言って、ロック=ハイロウズも怯まない。
両者の奇妙な膠着は、校内の生徒たちの注目を集め始めた。
部活の朝練の手を止めた野球部、サッカー部に陸上部。
教室にいた生徒たちの視線も校門前のやり取りに釘付けとなる。
なにより、異様な雰囲気に教師陣も出てき始めた。
秋津はロックの動じない姿勢にしどろもどろしていると、彼女の背後から背の高い男がロックの前に立つ。
コーンロウという長髪を編み込んだサル顔の男だ。
年齢は20代の初めくらいだろうか。
背はロックよりも高く、筋肉隆々ではないが引き締まっている。
「“力の使い方”を考えろってことだ。平和の為に」
「平和だと……。平和ってなんだ?」
ロック=ハイロウズの問いに、秋津とコーンロウの青年は面食らう。
そう言われた、“政声隊”の面々も想定外の問いかけに一瞬、凍り付く。
やがて、“政声隊”の中でどよめきが生まれ始める。
背の高い男はそれを戸惑いと受け止め、どこか上から目線でそれを断ち切るように
「安全に過ごせる。今死ぬことを考える必要はない……戦争が無いし、巻き込まれない」
「なら今は“平和”だな。ウプサラ紛争データプログラムによると、世界人口70億人に対し
て2016年は組織的暴力による死者数は10万人と2014年の13万人から減少している」
ロックが諳んじるようにして話し、コーンロウが瞬きを走らせる。
「ただし、その中で主流ともいえるのは国家間紛争の87,000人だがそれを差し引いても、発生は52件から49件減少している……ただ、戦争状態で最低1,000人が死んでいるが、日本とは何の関係もないし、俺に持ち出すのはお門違いだろ?」
堀川は、数値的なデータを持ち出すロック=ハイロウズの知性に感銘を覚えた。
確かに、電脳左翼の言っていることは、“世界で起きていること”を“自分たちのこと”と受け止めている。
だが、細かい差異を無視しているので、他から見れば“争点が曖昧”だ。
そもそも、堀川は考える。
――ロック=ハイロウズがどこをどうしたら、彼らと手を組むように思えるのだろうか?
「その中にお前の友人が入るかもしれないが、どう考える?」
コーンロウの男が、当事者意識を持たせるために、身近な友人で例えようとしている。
――聞き入れないから、身近な人を例えに出すのってモラハラではないだろうか?
「無用だ……お前らの言う“脅威”で死ぬことは無い」
ロックはため息をついて、
「同時にテメェらの様に下世話でもなければ距離間が測れないバカじゃない」
ロック=ハイロウズの一言にコーンロウが恥をかく形になり、金髪の青年に食って掛かろうとする。
ロック=ハイロウズの顔には、恐れはない。
しかし、堀川は彼の顔に、どこか憂い色と悲しみが内在している様に見える。
だが、二人”政声隊”から男が出てきて、コーンロウの男を羽交い絞めで止めた。
その際に少し揉み合いとなり、男たちの首筋が露出する。
彼らは、縄の網目の様な模様をした首輪を掛けていた。
ケルト民族のトルクという装飾具に似ていることを堀川は思い出す。
堀川はコーンロウと彼をロックから引き離そうとする二人の青年以外の、“政声隊”やS.P.E.A.R.のメンバーも首輪を付けているのが見えた。
しかし、
――秋津だけ……していない?
”政声隊”とS.P.E.A.R.でも、何故か、後者のリーダーの秋津 澄香だけ首輪が無い。
堀川は違和感を抱きつつ、話を続けるロック=ハイロウズに注目した。
「中世欧州では、人口10万人につき、毎年約20~40人が殺害されていた。だが、現代、暴力沙汰で死ぬのは僅か9人で、主にソマリアやコロンビアの様な発展途上国で起きている。中央集権体制と言えるヨーロッパでは、人口10万人に当たり一人だ。日本で平和を謳歌しているなら、心配は無用」
ロックは鋭い目つきで、電脳左翼たちに、
「もし、世界平和を訴えたいなら安全保障理事会入りしている国の領事館や大使館の前で、サングラスとリュック抱えてうろついてろ。そうしたら、現状の問題をSNSよりも確実に訴えられて、承認欲求だけじゃなく救世主願望も満たせて殉教者の道まっしぐらだぜ?」
金髪と碧眼の青年の眼光に、“政治に声を張り上げ隊”とS.P.E.A.Rのメンバーが鼻白む。
「あんた、今の政府に殺されるんだぞ!?」
しびれを切らしたのか、40代の坊主頭の男が訴えると、
「何処のブラジルやインドの軍隊の話だ。お前らのデモ自体が、何処から許可を取っている……警察、その上の政府じゃないか?」
ロックの言葉に、周囲が戸惑い始める。
坊主頭は泡を食いながら、
「お前……分かってないのか、今のリスクと危機が?」
「不安はリスクにならん。危機にも含めない。質と数量の掛け算がリスク計算、確率も加えた俺の視点から言わせれば、理屈が通じないから大人数で押し掛けるお前らの方が、危険で戦争を起こしかねないが?」
笑い声が、こちら側から聞こえてきた。
ロック=ハイロウズは、その声に反応する。
“政声隊”もロック=ハイロウズの視線の先にいる“政市会”を認めた。
「ついでに言うと、リスクについては本来主観的だ。特定の危険の受け止め方については、文化的状況による……お前らの言うのは“非自発的リスク”によるものだ。テロや戦争とか、原発とか。対して、“自発的リスク”というのはよくお分かりの通り、自動車やタバコだ。自動車関係の死者数は1000人当たり52人らしいぞ! もし、世界平和に貢献したいなら、自動車の運転を止めたり、このおっさんの喫煙量を減らすことをお勧めするぜ……さっきからヤニ臭いからな?」
坊主頭の親父は自分の怒りの矛先が挫かれ、飛び掛かろうとする。
彼はロック=ハイロウズの目と鼻の先で、”政声隊”のメンバーに抑えられる。
自分たちの恥を敵対団体に晒したことに、S.P.E.A.Rの一人が、
「俺たちは戦争状態なんだよ。不正選挙と富の格差による…」
「不正選挙という結果というなら、与野党問わず政治家やマスコミに運動家によって、争点が捩じれて伝えるからげんなりしているという世論の表れだ」
ロック=ハイロウズの声に棘が含まれ始める。
「回りまわってお前らの悪乗りとも言えるが。しかも、日本自体が中央集権。しかも政治の中枢と産業が密集する戦争インフラの産物の東京都が戦時状態というなら正しいが、広島に持ち込む理由にはならん……お前らの後ろにいる政治馬鹿に伝えろ、“平和な飼い犬さん”、よ?」
ロックが”政声隊”をこき下ろすたびに、こちらの笑い声が更に大きくなった。
ロック=ハイロウズが堀川と目が合う。
堀川は、全身から悪寒が走るのを感じた。
ロック=ハイロウズは笑っている。
しかし、それは自分たちと共有するものではない。
どこか、
『次はお前らだ!!』
という風に聞こえた。
そして、それが現実であることを堀川は知る。
初めに、ロック=ハイロウズに突っかかった“政声隊”のコーンロウの男。
ロック=ハイロウズは何を思ったのか、彼を指さす。
何を会話をしたのか、堀川からは分からない。
ロック=ハイロウズの前で彼が俯くと、一陣の風が堀川の横を過った。
女性の絹を裂く悲鳴と、蛙がつぶれたような声が隣と背後から響いた。
音の出所を見ると、自分の隣にいた若い男。
彼が、“政声隊”のコーンロウの男を抱え込む形で吹っ飛んでいた。
無論、
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