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しおりを挟む「お仕置きだ」と高鷹と珠希に頭上から冷水をザバリと浴びせられ、泥だらけの天音はガタガタと震えながらうずくまって「ごべんなさい」と消え入りそうな声で謝った。「まあまあ、そんなことしなくても」と大吾郎が一応止めに入るが、もはや今回の件に関しては正しい侘びの入れ方などサッパリ分からぬので、ともかくこれで勘弁してやってくれ、と続けた。
「この短期間で何回騒ぎを起こしたら気が済むんだ?いいかげんにしろよ。もう本気で出て行ってもらうしかないぞ」
どうにか我に返った芳賀も浴場にやってきて厳しい言葉を投げかけるが、それは湯船でぐったりと沈みかけているハルヒコに向けてであった。天音にはまるで姿など見えていないかのごとく、一切ノータッチである。
「おい芳賀くん!確かにカイザーが悪いけどさすがに天音のこと甘やかしすぎだぞ!」
「ふん、どうせ今回もこの野蛮人が原因だろう。星崎くんは毒されてるだけだ。だから被害者だ」
「くうぅ……キミ親になったらぜってえモンペになるぞ」
「いいよ高鷹、無駄無駄」
「寒いよー、もうお風呂に入らせてえ」
「だまらっしゃいこのクソガキ!今日という今日は堪忍しないからね!」
「あと天音は今日から感情のトレーニングね。君には情操教育が必要です」
「うわあーん」
「ごらんなさい珠希さん、コイツこの期に及んでよゆーで泣きマネかましてるわよ」
「ぜんぜん反省してないのね」
「もういいだろーおふたりさん。テスト前なのに風邪ひくぞ」
「おい、よーすけもコイツを甘やかしすぎだぞ」
「たまにはビシッと言ってよ」
「天音がこういう性格だってのはもう分かったんだから、あとは渦川が余計なことして怒らせなきゃいいだけだ。だいたいこないだからサラと不自然にベタベタし出して、風呂でもイチャつかれたら天音じゃなくても気分わりーぞ。お前らふたりだけでもジューブンキモいってのによ」
「ああん?言ってくれるなぁクロザル野郎」
「キモいのは高鷹だけでしょ?!僕は何にもしてないもん!」
「てゆーかベタベタすんのは人の勝手だろ」
「人目につくとこでやるなっつってんだ。クソ迷惑なんだよ、副寮長のくせに風紀乱してんじゃねえ。1年とか引いてんだろ?」
「知るかそんなモン。はあーくだらねえ、もう副寮長なんてやめだ。問題ばっか起こるし。明日からお前がやれ」
「高鷹、すぐ怒らないで」
「怒ってねえよ。こいつの言い方がウザいだけだ」
「だれがそんな言い方させてんだよ」
「ああ?お前調子のんなよ、同レベルのバカのくせに」
「何だぁ?この野郎」
「やめてよ!」
「おい、いいかげん止せお前ら。くだらない言い合いなんかもうウンザリだ」
いつもおとなしい大吾郎が珍しく強い口調で訴え、3人はグッと押し黙った。
「集団生活なんだぞ、いちいちくだらないことでカリカリしてたらあっというまに破綻だ。気を使えない奴には注意するべきだが、治らないんなら無駄だから諦めろ。そうやって極力関わらないようにして、理不尽なことがあっても、ふつうよりも我慢して妥協しなけりゃやってけないんだ」
皆が静まりかえるが、大吾郎の指摘にいちばん耳を痛めたのは、冷水でずぶ濡れになっている天音である。
「俺たちはみんな兄弟みたいに暮らしているがあくまでも他人同士だ。ここに暮らすあいだは、学校で会うだけの仲のいい友達とも違う。そんな関係の奴らと四六時中一緒にいなけりゃならないってことを、もっとよく考えろ。……天音も風邪ひくから、風呂入れ」
天音は膝をかかえたままちらりと高鷹たちを見上げ、恐るおそる立ち上がると、そーっと湯に入り肩まで浸かった。あたたかさに身震いしつつ、ぐったりとするハルヒコのとなりで、険悪な空気に身をすくめながら徐々に沈んでいく。そのままトプンと頭まで潜っていき、水面にブクブクと泡を吹き出した。
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