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しおりを挟むー「これ、全然返せないね」
目覚めるとまたもひたいに氷のうを乗せられ、かたわらから覗きこむサラの顔があった。
「どうしてすぐにケンカばっかりするの?」
「……あいつがお前以上に情緒不安定だからだ」
「ここを出るころには顔が変形してるかもよ」
「あいつのムショ行きが先だろ」
フウ、とため息が頬にあたる。
「どうして天音にちょっかいかけたがるの?」
「ちょっかい?何を言う、どっからどー見てもケシかけたのはあいつだったろう?」
「ううん、君だよ。わざと怒らせることばっかりして」
「はんっ、これだけボコボコにされて俺のせいだってんなら、世話ァねえやな」
「天音に関わらないでって言ったよね?」
「関わっちゃいない」
「関わったよ。余計なことして怒らせた」
「怒ったのはあいつが……」
「いいわけしないで」
「……」
「約束破ったね?」
「や、……破ってない」
サラがいつにも増して不機嫌そうな顔でじっと見つめると、振り向いて電動ノコギリに手を伸ばそうとした。そしてハルヒコは「ストップ!!ストーーップ!!」と即座に起き上がって羽交い締めにした。
「か、関わっちゃったかもしれないが仲良くはしてないだろお?怒らないでくれよぉハニーー」
「でもちょっかいかけたくなったんでしょ?だからわざわざ天音のいる時間にお風呂に行こうって言ったんだ」
「違う!断じて違うぞ!」
「それで、僕をダシにしてまで天音の気を引こうとした」
「違っっがあーーう!!わかったサラちゃん、風呂の時間を見計らったことだけは認めよう!だがそれは奴に俺たちの仲良しなところを見せつけてやりたかっただけの、ほんのチョビっっっっとしたイタズラ心でやっただけなんだ!奴の気を引こうなんてカケラも思っちゃいないよお!!」
「……ほんとに?」
「ほんと!!」
「じゃあもうやらない?」
「やらない!!」
「……それならいいよ」
「ありがとおハニーー!」
羽交い締めの状態からこちらを向かせて抱きしめる。しかしサラは人形のように力なく抱かれながら、低く尖った声でささやいた。
「でも次約束破ったら殺すから」
ハルヒコの動きがぴたりと止まる。
「……で、電ノコも飛ばして?」
「電ノコのあとに殺す」
「どーやって?」
「そのまんま電ノコで」
「そのまんま……?」
「うん」
「こ、殺すなんて物騒だなあ、星崎天音とおんなじじゃないかあ。野蛮な発想はダメだぞう?」
「天音の話しないでくれる?」
「ごめんなさい」
「何か君の顔見てたらイライラしてきた。もう電気消して」
「……はい」
「僕が寝るまで起きててね。ゲームしててもいいから」
「……はあい」
暗闇の中いつものように腕枕をして、サラを胸に抱いて眠りにつく。巻きつく細い腕は太く頑丈な縄で、絡む足は鉄の足枷のようだった。なにかすごく間違っているような気がするのに、それが何なのかわからない。だがとにかくこのときのハルヒコは、なぜだか猛烈に池田が恋しかった。早く朝になってくれと祈りながらまどろみ、浅い眠りの中で見た池田とキャッチボールをする夢は、泣きたくなるほど幸せなものだった。
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