最強天使の俺、日本で迷子になり高校生男子に懐かれ大混乱【改訂版】

エイト∞

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最強天使、浮かれる己を恥じる

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「サミュエルさんの侍姿、すっげえカッコいい!」
「ははは。遊の岡っ引きも、さまになっているぞ?」

 十手をピシッ!と前へ振りかざす遊。着物を尻端折しりはしょりして帯で固定し、股引きを穿いたスタイルは、すばしっこい遊にぴったりだ。
 俺はといえば、腰に差した刀に触れ、ちょいと胸を張ってポーズ。上界で暮らす身として武具など手にしたことはなかったが、コスプレにハマる人間の気持ちが少し理解できたぞ。最強天使、ここでもひとつ学んだ。サンキュー、栃木!

「私、サミュエルさんとちょっとかぶっちゃった!」

 女剣士と化したしのぶちゃん。俺と同じく刀を携え、濃紺の袴姿が決まっている。だが、くノ一の衣装を着られずに涙を飲んだことだろう。
 ……なぜか、遊としのぶちゃんを延々と忍者にしたがる俺である。いつからその設定になったんだ?覚えておらぬ。我ながら適当である。

「あとは力也くんだけですね」

 蒼くんは町人だ。凛とした雰囲気に、淡い色の着物。自宅からその装いでここに訪れたかのようである。

「蒼くん、よく似合っているぞ。だが、町人でよかったのか?」
「はい。特に刀とか興味ないんで」

 武具に浮かれていた自分が恥ずかしい件。俺よりよっぽど大人な大学四年生である。

「力也せんぱあーい! 会いたかったあ!」
「ふふふ。着替えてるときに離れてただけじゃない」

 新選組に変身した力也くんは、少し照れたように打ち明けた。

「僕、かぶき者を勧めて頂いたんです。でも、恥ずかしくて」
「ははは。水色の袴姿も力也くんらしいぞ」
「全員揃いましたね、行きましょうか。……いてて」

 蒼くんが腹をさすり、つぶやく。しのぶちゃんも心配そうだ。

「蒼、だいじ?」
「イマイチ。ひどいわけじゃないんだけど」
「僕、胃薬ならあるんですが。それだと意味ないですよね?」

 薬屋のような力也くんの問いかけに、蒼くんが頷く。

「胃が痛いわけじゃないんだよね。ありがとう」
「にーちゃん! つらかったらさ、俺おんぶできるからね?」

 弟の申し出を全力で拒否する蒼くんだったが、うーむ……。これは、早急に対処したほうがいいかもしれぬ。
 だが、変身処でオーロラ色の輝きを放つわけにもいかず。シャボン玉セットが用意されいてるはずもなく。やはり、なにか食べ物に回復魔法を施すのがベストだろう。江戸ワンダフルランドでは食べ歩きも充実し、その時代の食文化を楽しめると聞いたぞ。

「蒼くん。まずは温かいものを食べないか? 痛みが和らぐかもしれぬ」
「すみません。大学生にもなって、腹壊すとか」

 気にするでない。武具に浮かれる四百二十歳がここにいる(笑顔)。

 全員で宿場町を抜けると、あの屋形船が姿を現した。船の上では、華やかな着物を纏ったレディたちが談笑している。友人、恋人、家族。みなタイムスリップを満喫中だ。
 
 江戸の町並みは遠くまで続き、賑わいもまた同様である。風情があり、活気に満ち、多くの観光客で溢れるのも納得だ。ワンダーにしてワンダフル。栃木よ、俺の称賛は止まらんぞ!

「ねえねえ、ゆばめしはどう? サミュエルさんは初日光だし、にーちゃんもそれならいいんじゃない?」

 名産だ。味わうほかない。遊の提案に賛成し、少々早い昼食をとることに。普段からブランチが定番の美浜家である。この時間であれ問題はない。むしろ、昼時となれば食事処は激混みだろう。賢明な判断だ。
 しかし、どのタイミングで回復魔法を施すか。……おや?店先に団子が売っているぞ。

「俺、ちょっとトイレ行ってきますね。すみません、何回も」
「じゃあ、ついでに私も行こうっと!」

 しのぶちゃん、蒼くんの背中を支えて移動。利き手は刀に触れたままだ。刺客に襲われたとて、彼女がいれば安泰だろう。

 ……そんなに強いんか。袴姿のしのぶちゃんをもとに、新たな設定を企てる最強天使である。



 ——続く—— 
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