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第一章 婚約破棄は突然に。
独占欲と支配
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柔らかな日差しがステンドグラスを通して差し込み、部屋の中を淡い紅色に染めていた。
華奢なラインがよく目立つドレスを身にまとい鏡の前に立つ彼女は、リディア・ヴェルネ。
すらっと長い手足、整った顔立ち。何と言っても令嬢では珍しい茶色寄りの髪をしている。
社交界に出ると男、女関係なく人だかりができるほどである。
さらに誰もが羨む名家の令嬢。だがその瞳の奥は、どこか空虚だった。
すべて諦めたような、そんな瞳をしていた。
背後から、氷のような声が飛ぶ。
「どこへ行くんだい、リディア」
振り向かずとも分かる。この声の主、ルシアン・モルドレッド。
彼女の婚約者で、社交界でも一目置かれる名門の若き貴公子。
また圧倒されるようなルックス。
だが、リディアにとって恐怖でしかなかった。
「少し、外の空気を……」
「外? なぜだ?ものはたくさん与えてるはずだぞ。」
トン、トン、と近づいてくる足音。
ルシアンの指先が、リディアの腕を強く掴む。
その力に、微かに痛みが走った。
逃げようとすればするほど、彼の掌はさらに強く締めつける。
痛いなんて感情はもうとっくに死んでいた。
「リディアは俺の前にいればいいんだよ。幸せだろう?」
幸せ。そんなの存在するのだろうか。
「少しだけ、だから……」
「だめだと言っているんだ。どうせ他の奴らとも話すのだろう?……俺以外の誰とも話すな。笑うな。目を合わせるなんてもっての外だ」
「……それじゃ、私は――」
「いいんだよ。リディアは俺のものなんだから。俺以外の人なんて知る必要なんてないのだから」
笑みを浮かべながら、彼はまるで美しい宝石を愛でるようにリディアを抱き寄せた。
だが、その瞳の奥に宿るのは愛ではなく、狂気。
ひやりとしたものが背中を伝う。
彼の気持ちは愛ではない。支配だ。
奴隷のように、犬のように。ただ、従う。
彼は感情のない私が欲しいだけだと、最近になって気づくようになった。
ふと窓の外に視線を移す。
そこには生き生きと咲く花があった。
どこからか聞こえる子どもたちのはしゃぐ声。
いいな……
でも、今は外に出ることすら許されない。
―――ここは檻だ。
鍵のかかったドア、柵のついた窓。
唯一外へ出れるのは社交界のみ。
彼がなぜここまで監禁とも呼べる行動をするのか。
「外、行きたいな」
「分かるよな、リディア。お前は美しい。力だってある。そんなやつが外に出たらどうだ?お前は俺のことだけを見てればいいんだ。俺はリディアだけを愛してる」
愛、か。
ルシアンが言っていた力。
この世界には、魔法と能力が共存している。
魔法は理に沿って発動する、誰もが学べる体系化された力。
一方、能力は魂に宿る生まれつきの特異な力。
その中でも極まれに―――
神に選ばれたように強大な力を持つものが存在する。
人はそれを「最上級能力」と呼んだ。
リディアはその、最上級能力の持ち主である。
さらに、魔法も扱えるときた。その魔法も最上級魔法である。
故にリディアは選ばれしもの。
それをルシアンはわかっている、だからこそ愛という名目で私を閉じこめているのだ。
とはいえルシアンもそこそこの魔法が使える。
まあ魔法のことは後々分かるだろう。
光を失った目。
私は胸の中でそっと意気込んだ。
―――必ずこの檻から脱け出す。
華奢なラインがよく目立つドレスを身にまとい鏡の前に立つ彼女は、リディア・ヴェルネ。
すらっと長い手足、整った顔立ち。何と言っても令嬢では珍しい茶色寄りの髪をしている。
社交界に出ると男、女関係なく人だかりができるほどである。
さらに誰もが羨む名家の令嬢。だがその瞳の奥は、どこか空虚だった。
すべて諦めたような、そんな瞳をしていた。
背後から、氷のような声が飛ぶ。
「どこへ行くんだい、リディア」
振り向かずとも分かる。この声の主、ルシアン・モルドレッド。
彼女の婚約者で、社交界でも一目置かれる名門の若き貴公子。
また圧倒されるようなルックス。
だが、リディアにとって恐怖でしかなかった。
「少し、外の空気を……」
「外? なぜだ?ものはたくさん与えてるはずだぞ。」
トン、トン、と近づいてくる足音。
ルシアンの指先が、リディアの腕を強く掴む。
その力に、微かに痛みが走った。
逃げようとすればするほど、彼の掌はさらに強く締めつける。
痛いなんて感情はもうとっくに死んでいた。
「リディアは俺の前にいればいいんだよ。幸せだろう?」
幸せ。そんなの存在するのだろうか。
「少しだけ、だから……」
「だめだと言っているんだ。どうせ他の奴らとも話すのだろう?……俺以外の誰とも話すな。笑うな。目を合わせるなんてもっての外だ」
「……それじゃ、私は――」
「いいんだよ。リディアは俺のものなんだから。俺以外の人なんて知る必要なんてないのだから」
笑みを浮かべながら、彼はまるで美しい宝石を愛でるようにリディアを抱き寄せた。
だが、その瞳の奥に宿るのは愛ではなく、狂気。
ひやりとしたものが背中を伝う。
彼の気持ちは愛ではない。支配だ。
奴隷のように、犬のように。ただ、従う。
彼は感情のない私が欲しいだけだと、最近になって気づくようになった。
ふと窓の外に視線を移す。
そこには生き生きと咲く花があった。
どこからか聞こえる子どもたちのはしゃぐ声。
いいな……
でも、今は外に出ることすら許されない。
―――ここは檻だ。
鍵のかかったドア、柵のついた窓。
唯一外へ出れるのは社交界のみ。
彼がなぜここまで監禁とも呼べる行動をするのか。
「外、行きたいな」
「分かるよな、リディア。お前は美しい。力だってある。そんなやつが外に出たらどうだ?お前は俺のことだけを見てればいいんだ。俺はリディアだけを愛してる」
愛、か。
ルシアンが言っていた力。
この世界には、魔法と能力が共存している。
魔法は理に沿って発動する、誰もが学べる体系化された力。
一方、能力は魂に宿る生まれつきの特異な力。
その中でも極まれに―――
神に選ばれたように強大な力を持つものが存在する。
人はそれを「最上級能力」と呼んだ。
リディアはその、最上級能力の持ち主である。
さらに、魔法も扱えるときた。その魔法も最上級魔法である。
故にリディアは選ばれしもの。
それをルシアンはわかっている、だからこそ愛という名目で私を閉じこめているのだ。
とはいえルシアンもそこそこの魔法が使える。
まあ魔法のことは後々分かるだろう。
光を失った目。
私は胸の中でそっと意気込んだ。
―――必ずこの檻から脱け出す。
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