花は闇に誓いを捧ぐ

希音

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第二章 溢れる光は自由と化す

自由のための宣言

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次の日がやってきた。

朝の光がカーテン越しに差し込むころ、机の上に一通の封書が置かれているのに気づいた。

――差出人:ルシアン・モルドレッド。

見覚えのある印章。

けれど、それを見た瞬間、胸の奥にひやりとしたものが走る。

「……今さら、何のつもり?」

震える指で封を切る。

中には、丁寧すぎる筆跡で書かれた短い手紙が入っていた。

『リディア。君が僕のそばを離れても、
僕の心はまだ君を所有している。
もう一度話がしたい。君の屋敷の外には、
僕の使いをやる。拒むことは許さない。
             ルシアン』

「……っ」

手紙を握りしめる。紙がぐしゃりと音を立てた。

胸の奥がざらつくように痛む。

――まだ終わっていなかった。

「……ミリア。準備をして。王都へ行くわ」

「王都へ、ですか? まさか……」

「ええ。陛下にお会いするの。 正式に戦闘部隊への所属を願い出たいの」

自分を守るためにも、そして、誰にも支配されないためにも。

* * *

昼過ぎ。王城の白壁が陽光に輝く。

緊張で喉が渇いた。

これから国王陛下に謁見し、志願を告げるのだ。

深呼吸をして、一歩を踏み出す。

その瞬間、背後から低い声がした。

「――久しぶりだな、リディア」

振り返れば、黒の軍服に身を包んだ青年。

冷たい灰色の瞳がまっすぐこちらを見据えている。

「……レオン」

「俺も一緒に行く。公爵には婚約の了承をもらった。娘を守るためなら、とな。国王陛下にも報告をしないとだろう」

「私、尻軽だと思われませんか?」

「俺が国王陛下に申し出るから、気にするな」

なにか策略でもあるのだろうか。

「じゃあ、行こうか」

白いドレスの裾を揺らしながら、玉座の前へと進む。

父とルイが後ろに控え、厳かな空気が満ちている。

「よく来たな、リディア・ヴェルネ」

低く響く国王陛下の声。

その視線はまっすぐに、私を射抜いた。

「陛下。私――国王直属の第一部隊への入隊を志願いたします」

その瞬間、周囲がざわめいた。

文官のひとりが小声で嘲るように言う。

「令嬢が……? 冗談ではないか」

「婚約破棄をした挙げ句に戦場とは……」

だが、一歩も退かなかった。

青い瞳を真っ直ぐ前に向けて、静かに答える。

「私の力はこの国のためにあります。――女であることは、理由になりません」

ざわめきが止んだ。

玉座の上で、国王がゆっくりとうなずく。

「言葉だけでは足りぬ。……見せてみよ、その力を」

静かに息を吸う。

次の瞬間、空気が張り詰める。

指先から溢れた蒼い光が渦を巻き、床に魔法陣が展開される。

風が逆巻き、光が王の足元まで届いた瞬間――すべてが止まった。

完璧な制御。暴発もない。

その力の密度に、見守っていた近衛たちが息を呑む。

沈黙の中、ひとりの男が前へ出た。

銀髪に淡い水色の瞳。

第一部隊副団長、レオン・アストレア。

「……陛下、十分です。彼女は実力を示しました」

国王は目を細め、低く笑う。

「そうか。ならば――よかろう」

「リディア・ヴェルネ。汝の入隊を許可する」

その言葉に、胸の奥が熱くなった。

もう、誰にも縛られない。

ルシアンにも、過去にも。

自由と責任を手にしたリディアは、静かに頭を下げた。

「ありがとうございます、陛下」

その背後で、レオンが一瞬だけ口元を緩める。

それが、これから始まる新たな縁の始まりだった――。
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